中東大戦→新中東秩序、そしてレヴァントの覇者「大イスラエル」が誕生する

テロ・紛争・戦争・崩壊
出典:mondoweiss.net




いよいよ、これまでの記事の結論部分に入ります。くどいようですが、過去のシリーズを改めて列挙します。以下を踏まえた上で、「これから起きるであろう出来事」について、私なりの推測を述べるのが当記事の趣旨です。

  1. 衝撃の仮説――シリア内戦の真の目的は何か?
  2. 残酷なシリア焦土化の背景――ISを操る米・サウジと宗派内戦を煽るシオニスト
  3. 石油の支配権をめぐる戦いと欧米エリートが中東に攻撃的な本当の理由
  4. なぜ欧米・ユダヤとイランは激突不可避なのか? その構造を明らかにする!

それでは上の4記事の続きです。

正直いって、今の段階では仮説の域を出ないですが、具体的には、シオニストがトランプ政権を操って何をやろうとしているのか、それが対イラン戦とどう関わってくるのか、という点を暴いていきます。彼らの計画の全容が分かると思います。



アメリカがイランを憎むもう一つの理由

と、その前に、前回の記事で言い忘れたことがありました。

それはアメリカがイランを「殺る」理由ですが、「イラク占領統治を妨害したこと」も挙げられます。昔の記事で触れていたのに、自分で失念していました。

ウェスリー・クラーク将軍は「影の政府」の存在を言外に伝えていた
「ウェスリー・クラーク元アメリカ陸軍大将 General Wesley Clarkが語る中東問題の真相」の衝撃 ウェスリー・クラーク将軍といえば、2007年3月の次のインタビューで一躍有名になりました。(以下翻訳版) クラーク氏は1997か

(略)周知の通り、イラクの占領統治が泥沼化して米世論の風向きが変わります。実は、背後で暗躍したのがイランの「イスラム革命防衛隊」でした。イランにしてみれば、国の東(アフガン)と西(イラク)に米軍が進駐してきて、しかもブッシュ大統領とその取り巻きが「イランは悪の枢軸だから殺る! 次はイランだ!」などと公言しているわけですから、当たり前の話ですよね。(略)

だから、イスラム革命防衛隊を使い、国家の総力を挙げて米軍のイラク占領統治を妨害したわけです。当然の自衛策です。あの占領下イラクの異常なテロの頻発と国内の分裂・抵抗・混乱は、これが大きな原因だったんですね。

いずれにしても、革命防衛隊の大活躍?により、テロでの米兵の死者が急増して、米世論も厭戦気分へと変わります。それで「影の政府」はいったんブッシュ政権からネオコンをパージして、国務省・CIA主導の次策へと舵を切り替えました。

それが「アラブの春」the Arab springだったんですね。つまり、軍事力で倒すか、それとも政変・革命・内戦で倒すか、という違いなだけです。

当時、イランは、シーア派だけでなく、スンニ派や旧バース党さえ支援して、イラクの米軍を泥沼に引きずり込みました。イランにしてみれば当たり間の自衛策なわけですが、このことで米の支配層は物凄くイランを逆恨みしています。

で、「イランに落とし前をつけてやる!」というわけです。もうキチガイですね。

まあ、前記事では、あくまで「国家」の目線から、米欧・ユダヤ・サウジのそれぞれに、イランと戦う動機があることを説明しましたが、「影の政府=超国家」の目線でも同じことです。「われわれに服従しないイランは世界支配にとって邪魔」ということです。

シオニストはイランだけでなく「他の二カ国」もまとめて処分するつもり

さて、本題に入りますが、まずは重要な「伏線」から述べましょう。上の「ウェスリー・クラーク将軍は「影の政府」の存在を言外に伝えていた」で述べましたが、2001年の「9・11」直後の「中東7カ国打倒計画」では、「イラク、シリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、最後にイラン」が対象でした。しかし、イランの妨害で戦争による打倒が頓挫し、「影の政府」は次策の「アラブの春」工作に切り替えました。前回言ったように、これは欧米支配層とシオニストの「利害の一致」に拠るものです。

その結果、2017年現在、まだ西側による侵略や内戦扇動の対象になっていないのはレバノンとイランだけです。いわば、この二カ国を「撃ち漏らした」状態です。

実は、ここにシリアの内戦が関わってきます。答えは「シーア派繋がり」です。

まず、イランについては言うまでもありません。アサド政権を支援するため、直接的に革命防衛隊をシリアの内戦に派兵しています。

次にレバノンですが、同国の巨大組織ヒズボラ(シーア派)がやはりアサド政権と盟友関係にあり、非公式にシリア内戦に兵士を派遣しています。

1982年に結成されたヒズボラは、もともとイランの革命防衛隊から訓練を受けた民兵組織(西側では過激派組織ともいう)でしたが、現在ではヒズボラなくしてレバノンが動かないほどの巨大な政治軍事組織へと成長しました。つまり、レバノンは今や準ヒズボラ国家と言えなくもない。そして、ヒズボラはずっとイランとシリアから支援を受けてきたので、イスラエルから見ると、両国の出先機関みたいなものです。

つまり、イラン、アサド政権のシリア、ヒズボラのレバノンは、事実上の「シーア派同盟」です。しかも、互いに軍事的に繋がり、助け合っています。

つまり、イスラエルとしては、イランと開戦すれば、同盟関係にあるシリアやレバノンとも堂々と戦うことができるわけです。

あるいは、イランと開戦した時点で、シーア派のほうが先にイスラエルを攻撃するかもしれません。たぶん、全シーア派にとって「聖戦」みたいなものでしょう。

かくして、シオニストはイラン・レバノン・シリアを一挙に打倒するつもりです。その「中東大戦」に勝利することが大イスラエル実現の要になるわけです。

シリア内戦、ISの台頭、トランプ政権誕生、対イラン戦争、大イスラエル構想・・すべては一本の線で繋がっていた!

しかしながら、昔から言われていることですが、イスラエルがイランと戦争する場合、大きな困難が存在しています。

上の地図をご覧のように、第一に他国を挟んでいます。第二に、イランは一応準大国です。人口は約9千万、世界最古の国の一つ、強力な軍事力を持ちます。

しかし、それをシオニスト目線で見た時、「大きな絵≒意図・計画」が見えてきました。それは次のようなものです。

第一に、シリアを内戦に引きずり込むことの意味はなんでしょうか。

これには一石二鳥の理由があります。イスラエルがイランと開戦した場合、同じシーア派のシリアも参戦するでしょう。つまり、同盟国シリアを先んず打倒する、又は内戦で動けないようにする、という意味があるわけです。イスラエルにしてみれば、これで両方の国を一度に相手にしなくてすむわけです。

しかも、このシリーズの最初の記事で述べたように、内戦によって住民が難民化するので、「レヴァントのアラブ人減らし」の効果もあります。これは「戦後」の「第二の建国=大イスラエル設立」に関わってきます。つまり、対イラン戦に勝利した暁には、シリアの領土を大幅に分捕るつもりなのです。

第二に、反政府軍として「IS」をでっち上げ、残虐行為をやらせることの意味はなんでしょうか。

これもシリアを焦土化して「アラブ人を減らす」効果があります。実際、ISに対して恐怖に駆られた人々が大量に難民化しました。むろん、内戦を深刻化させることによって、シリアの国力を消耗させることができます。

しかも、イスラム教徒同士を戦わせるだけではありません。ISが欧米人も殺害することで、「国際社会の脅威」という位置づけになり、内戦の本質もボケます。欧米が動きやすい「人道問題」になります。それを口実にして、欧米にも空爆させるわけです。事実、オバマ政権はISの討伐と称して数千回の空爆をやりました。

さらに、対イラン戦にも関係します。ISは2013年の発足当初「イラクとレヴァントのイスラム国」(ISIL:Islamic State of Iraq and the Levant)と名乗っていました。彼らの占領地はシリアだけでなく、イラクの北部にもまたがっています。

2016年3月時点における、シリアとイラクの領土のうち、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」が支配下に置く地域を示した図。(c)AFP

ISの暴れまわっている地は、そのまま対イラン戦の際、米・イスラエル軍の侵攻ルートにもなります。イランへの橋頭堡をも兼ねて無政府状態にしたのかもしれません。いずれにしても、イスラエルからイランへの道がほとんど開けた状態です。

第三に、トランプ大統領の誕生の意味は何でしょうか。

むろん米国民が見た意味――たとえば米国第一主義など――はありますが、それと平行してシオニストから見た意味というのも、ちゃんとあります。おそらく、当ブログは日本の誰よりもいち早く指摘しましたが、彼は事実上のシオニストで、反イランの偏見の持ち主です。だから大統領に当選した直後、私は「中東大戦になる」と直感して記事にしました。言ったように、イランは準大国です。イスラエルにとっても戦勝は容易ではない。だから、先んず潜在同盟敵国のシリアを内戦に引きずりこみました。同じ理由で、自陣には最強の同盟国を得えたいはずです。それが「トランプのアメリカ」というわけです。

第四、トランプ大統領の中東政策の意味は何でしょうか。

彼の掲げる方針は二つ、「ISの殲滅」と「反イラン」です。これはシオニストにとって奇跡といえるほど都合のいい方針です。もちろん「偶然」ではありません。「影の政府」的にいえば、自分たちでISを設立しておいて、今度は彼らの存在を開戦口実として、米の軍事介入を正当化するつもりです。「殲滅」ともなると、空爆だけでなく、最終的には陸軍部隊の投入も必要です。だから、最初からこれを見越して、中東での実戦経験の豊富なジェームズ・マティス将軍が国防長官に選ばれたのでしょう。

第五、イスラエルは対イラン戦をどのように進めるでしょうか。

上記の一~四は、いわば対イラン戦の「仕込み」です。おそらく、米軍が大規模に中東に足を踏み入れた後か、もしくはその少し前か、というタイミングで、ネタニヤフ政権は開戦に踏み切るでしょう。他の記事で言いましたが、この少し前、米国内でイスラム過激派による大規模なテロが起きるはずです。できれば「犯人はシーア派だった」という“証拠”が出ればいい。イスラム過激派組織には多数のモサド工作員が浸透しているので、この手の工作は容易い。イスラエルは最強の同盟国を得られます。

イスラエルの国力・兵站能力からして、イランとの戦争が長引くことは危険ですが、アメリカが後ろ盾になれば別です。イランを敗戦まで追い込めるでしょう。

その際、言ったように、ISの旧支配地区が、イラン本土侵攻に向けた橋頭堡・進軍ルートになります。つまり、ISの設立には、「アラブ人減らし」だけでなく、元からそれを確保する狙いもあったのかもしれません。IS掃討名目でそこに米陸軍が進駐していれば、それがそのまま磐石の補給ルートに変貌します。

よって、イランは、この北の「貫通ルート」と、南側のペルシア湾・アラビア海から挟撃される形になるので、非常に不利な戦いを強いられる形になるでしょう。

ちなみにですが、その際、サウジがスンニ派各国を抑える役割分担なのかもしれません。「せっかくシーア派が弱体化するのだから眺めていよう」と説得するわけです。

第六、イスラエルの真の戦争目的は何でしょうか。

当然、安全保障上の最大の脅威を除去することにあります。しかし、それ以上に「大イスラエルの設立」という目的があります。

本来、シリアで内戦を引き起こし、その地のアラブ人を減らし、焦土化を進めたくらいでは、今の時代、他国を乗っ取ることはできません。イスラエルのほうが国際社会から侵略者と見なされて、経済制裁されるだけです。ところが、そういった古い秩序・フレームをぶっ壊すのが「戦争」です。血を流した戦勝国は「戦後秩序」と称してまったく新しいフレームを作ることができます。17世紀の三十年戦争、19世紀のナポレオン戦争、20世紀の第一次・第二次世界大戦・・・すべてそうでした。

いわば「新中東秩序:The New Middle East Orderと言えます。

だから、シオニスト的には戦争が必要なのです。単に内戦でシリアをボロボロにするだけでは駄目で、その上、国家間の戦争をして打ち負かさないと、戦後に新領土を獲得することはできません。生存圏の拡大・・そのための「戦争」なのです。

いずれにしても、イランとの戦争になれば、イスラエルは堂々とシリア領内に攻め込めます。旧IS支配地区を通ってそのままイラン領へと進撃できます。そして、米軍を同盟として使いながら、イラン・レバノン・シリア同盟を一挙に打倒する。その「戦後秩序」として「大イスラエル」を実現する・・そういう計画だと思われます。

そして第三次世界大戦の導火線へ

さらに言えば、驚くべきことですが、どうやらこの「大イスラエル」構想ですら、二段構えの計画になっているフシがあります。

イランのバックにはロシアが控えています。私は「対イラン戦の前には、必ずウクライナ紛争を再燃させて、ロシアの関心と国力をそこに反らせるだろう」と、以前に予想しました。シオニスト的には、そう努力しますが、ロシアがその危機を克服する可能性も十分にある。そして最悪の場合、ロシア・イラン連合軍が米・イスラエル軍を跳ね返して、逆にシリア領内から怒涛のごとくイスラエル国内に攻め込む可能性もある。

ところが、まさに驚くべきことですが、シオニスト的にはそちらの結果でも構わないわけです。なぜなら、それはまさに「エゼキエル書」に記されている通りの展開だからです。その時、イスラエルの神が姿を現し、敵の軍勢を滅ぼすことになっています。

むしろ、「影の政府」的には、中東戦争が米ロによる世界大戦に拡大してくれたほうが、大いに結構なわけです。彼らは最初から次の世界大戦の「戦後秩序」として「世界政府」および「地球国家」を樹立する予定でいます。

つまり、第一次大戦のあとに国際連盟、第二次大戦のあとに国際連合、そして第三次大戦のあとに世界政府、というわけです。しかも、「アラブ人減らし」ならぬ「地球人口減らし」の目的も兼ねていて、生き残った全市民は完全に管理下に置くつもりです。

まあ、今はそこまで先走る必要はなくとも、以上で、期近のシオニストの狙いくらいは、なんとか喝破できたのではないかと思っています。

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