前回の続き。
前も言ったように、フッ化水素禁輸の話は去年から出ていたので、死活問題となるサムソンやSKハイニックスなどは、その時から対策を検討していたはず。
つまり、今回の「3品目輸出規制」は、相手にあまりに時間的猶予をやり過ぎた。
彼らは曲りなりにも激烈な市場競争を勝ち抜いてきた有能者たちだ。
日本企業以外からの調達と自主開発という対策
と思っていた矢先、山東省にある中国化学メーカーの「浜化集団」が韓国の半導体メーカーからフッ化水素を受注したと、中国のニュースサイトが報じた。
見ての通り、巨大な化学生産設備を持つ企業である。
この浜化(ひんか)集団の株が値上がりしているという。
サムスン電子、日本製に替わる「フッ化水素」テストに着手…日本も緊張
2019年7月17日 8時58分 中央日報
サムスン電子が日本の半導体材料の輸出規制強化に対応するために代替製のテストに着手したと伝えられた。日本経済新聞はサムスン関係者の言葉を引用して「サムスンが半導体工場で新しい材料を試す際に使用するラインに、日本以外のメーカーのフッ化水素を投入し試験を始めた」と17日、報じた。あわせて同紙は「中国や台湾、韓国のメーカーの製品とみられる」とし「韓国の半導体業界の日本離れにつながる可能性もある」と付け加えた。韓日間の政治的葛藤によって触発された日本の対抗措置が日本産業界にもブーメランとして返ってくるおそれがあるという懸念がにじんだ分析だ。(後略)
どうやら、超高純度フッ化水素を生産しているのは日本企業だけというが、すでに準レベルのものは中国などの化学メーカーなどでも生産していたらしい。
韓国側は今後益々「非ホワイト国間貿易」へと活路を求めていくだろう。
しかも、案の定、その「中国の威」を背景に、文大統領は「日本経済に大きな被害が及ぶことを警告する」などと発言した。習近平から「一人メシ」を食わされても文句の一つも言わないのに、日本が相手だと「警告するぞ」と威嚇する・・・いつものパターンだ。
また、今回の措置は、中国に漁夫の利をせしめさせる可能性があることもはっきりした。中国の新興BtoBメーカーにとっては突如、韓国の巨大市場が開けた格好だ。
浜化(ひんか)集団のフッ化水素が、半導体製造用のエッチングガスとしてどこまで代替適格性があるのか追加の情報待ちだが、少なくとも「今までおれたちの頭を押さえていた日本企業のシェアを奪える」とヤル気満々であることくらいは想像がつく。
さらに言うなら、韓国にも素材メーカーが無いわけでもなく、韓国のBtoBメーカーもまた過去に高純度フッ化水素などの製造に挑戦したことはあったようだ。
つまり、日本が輸禁したからといって、韓国が何も一から開発する必要はない。
在庫、規制回避の輸入、中国企業からの調達などで、韓国はますます時間的猶予を捻出することができる。その間、一定の技術力をもつ既存の韓国メーカーに対して、官民が集中的に資本を注げば、意外と短期間で日本企業に追いつく可能性があるかもしれない。
なにしろ、韓国得意の「人材引き抜き」も侮れない。
と言っても、なにも昔のように現職者を週末接待する必要はないし、第一、今では日本企業側も警戒していて、自社の社員の管理も強化しているだろう。
しかし、ステラケミファや森田化学などの退職技術者なら何十人といるはずだ。
さすがに会社を辞めた人間まで拘束することは難しい。
在日ネットワークもあることだし、彼らはこういう日本人の必要人材を実にうまく見つけ出すことに長けている。1億円の報酬を提示すれば、転ぶ人も出てくるだろう。
だから、「日本の素材メーカーが長年にわたって研究開発してきたものだから、中韓企業がそう簡単に追いつけるはずがない」などと、相手を見くびってはいけない。
私たちが相手にしているのはもはや「挙国一致韓国」なのだ
前回は「獅子は兎を捕らえるにも全力を尽くす」という例えを、やや冗談めかして使ってしまったが、私は「そうしないと逆に日本がヤバイ」と言いたいのだ。
だから、相手の対策が追いつかないくらい、制裁は次々と繰り出さなければならない。
「幸い」といってよいのか、韓国側がその口実を自ら提供しつつある。
たとえば、“元徴用工”トンデモ判決をめぐって、日本政府は日韓請求権協定に基づく仲裁委員会設置を求めていたが、韓国側はその回答期限について、両国間の約束事にもかかわらず「日本が恣意的に定めたものだから守る必要がない」という意味のことを言い、結局は期限内に応じなかった。これなどは格好の追加制裁理由になりえる。
だから、安倍政権も、もう「経済制裁ではない」とか、「徴用工問題とは一線を画す」とか、そんな弁解がましいことは一切口にするのは止めて(かえって疑いを招くだけだ)、堂々と「これまでの度重なる侮日行為に対して断固報復する」と宣言すればいい。
だいたい、韓国のほうは、今回の日本の措置を指して、与野党官民メディア市民一体となって、経済侵略だの、経済戦犯国だの、経済戦争だのと指弾し始めている。
つまり、相手はすでに「対日戦争」のつもりでいるのだ。
かつての日独伊を見れば分かるように、国民国家成立からだいたい70年が過ぎた頃にナショナリズムが絶頂に達しているが、韓国が今、このバイオリズムにある。
だから韓国のほうは戦争のつもりで今後、あらゆる対日報復措置を繰り出してくるだろう。もともと平時でも「日本への嫌がらせをさせたら世界一」という国柄である。
私たちはすでに「対日外交経済戦争」で「挙国一致」となった韓国を相手にしているのだ。
対する日本は、ただでさえ親韓マゾだらけで、対韓国で意志統一さえも困難だ。
この現実またハンデを直視せずして、相手をナメて、ぬるい制裁のパンチばかり繰り出していたら、中長期的には日本側も大怪我をしない保証はない。
だから私は少し前に記したことを、また書いておきたい。
日本は好むと好まざるとに関わらず、もうルビコン川を渡ってしまったのである。
相手の首を取らないと、こっちが取られると思うくらいの危機感でちょうどいい。