テレビが駆逐される時代はまだ先で、ネットとの「二強時代」が続くワケ

オピニオン・提言系




菅新総理の記者会見の質疑応答において、「ニコニコ動画です」という記者の自己紹介があった。違和感を覚えたが(笑)、比較的若い世代はまだしも意味が分かるが、じいさん・ばあさん世代は、「ニコニコ動画」なるものが何なのか分からない人が多かったはず。

そもそもネット世代は、ネット動画のニュースのほうが当たり前であって、必ずテレビの前に座ってからニュースを見るという常識は、とっくの昔にすたれている。

ただし、インターネットの普及が始まって20数年、その間、「テレビは衰退する」ということが繰り返し言われてきが、実際には通常の地上波は生き残っている。

「テレビと違い、ネットのほうが、見たい時に、見たい番組が見れるから、いずれネットがテレビを駆逐する」という論理がずっと言われてきたが、実際には、それはネットのアドバンテージの一つにすぎず、全体として比較してみた場合、必ずしもネットがテレビに優越しているとは言い難かったのが現実だった。



素人がプロ級の映像を撮って編集できる時代

たとえば、画質。ほんの数年前まで、ユーチューブの動画の画質は、酷いものが多かった。やはり映像主体である以上、画質の低さは致命的なデメリットである。

しかし、数年前から動画の画質が急速に上がり、今ではハイビジョンが主流で、4K映像も見れるようになってきた。これには個人用機材の価格性能面の向上と、プラットホーム側の設備容量向上の、二つの要因が貢献している。

今では、小さなアクションカメラで、4K映像や360度映像の撮影が可能になっている。高精細のうえ、自動ブレ抑制の性能も高い。私もそういうカメラを持って、ハイビジョンでいろいろな光景を外撮りし始めているが、結果として、数年前までプロのカメラマンでしか不可能だった映像が、今では素人でも撮れるようになっている。

だから、今、ユーチューブを見ると、観光名所や町中を、まったくブレのない、高精細な映像で撮って流している人たちが急増しているが、あれは実際には、小さなアクションカメラとアームだけで撮っている。それで、ひと昔前に「カメラマン」と呼ばれる職業の人が肩に大きなカメラを担ぐことで撮れた映像と同じものが撮れてしまう。

繰り返すが、タバコ箱以下の大きさのビデオカメラで、ブレのないプロ級の4K映像が、1時間くらいの尺で、素人でも撮れてしまうのである。

そして重要なのは編集システム。やはり、昔は巨大で高価な編集機材が不可欠だったが、今ではデスクトップPCに動画編集ソフトを入れるだけで、かなり高度な編集が可能。映像から人物だけを抜いて別の背景に重ね合わせるクロマキー合成も、昔はハリウッドの特殊撮影技術だったが、今ではパソコン上のソフトで誰でもすぐにできる。

よって、結論から言うと、今やテレビ番組レベルのものは、誰でも作ることができる。職業的な「プロカメラマン」や「プロ映像編集者」がいなくとも、本当に素人でもできる。自慢でもなんでもなく、私でも作ることができる。

ある意味、ワープロの辿った道筋と同じだ。今では信じられないが、90年代まで、ワープロは「専門技術」であり、高給がもらえる資格職ですらあった。それが今ではPCとオフィスソフトがあれば誰でもできるし、専門どころかネット時代の必須スキルになっている。やや遅れて、映像撮影と編集技術のほうも一般コモディティ化してきた。

だから、雄大な自然風景の、ドローンを使った4K映像などを見て、昔は「さすがはNHK様」と感心したものだが、今ではこのレベルのものは誰でも撮れるのだ。

その成果が、数年ほど前から、ようやくユーチューブにも表れ始めている。

画質・編集・内容とも、いかにも素人くさい映像がどんどん減って、その三点においてプロレベルの作品がどんどん上がるようになってきている。

私の見るところ、それは、ほんの3、4年前から起こり始めた変化である。

ネットメディアは伸びていくが、しばらくはテレビとの「二強時代」のワケ

このように、かつては放送局レベルだった映像作品が、動画サイトにアップされるようになってきた。またアップによって広告費などを得る仕組みも固まってきた。

そしてお金が入り始めると、企画とコンテンツ力向上にエネルギーを注ぎこめるようになってくる。それが競争を促し、さらに動画のレベルを上げていく。

動画サイトのほうでは、そういう好循環が世界的に始まっている。

対して、同質の映像作品を世に送り出すのに、従来のテレビ局側は、巨大な設備を維持し、莫大なコストを投入しなければならない。

よって、基本的には、ネット動画がテレビを「食っていく」流れに変わりはない。

しかし、映像にはテレビ局としてのスケールメリットを生かせる分野がある。

たとえば、ニュース報道、ワイドショー、現代ドラマ、時代劇など、基本的に「多人数」を動員しなければ制作が難しいものは、しばらくは従来メディアの優位が続く。

また、映像ソフト視聴者には、極端に受動的な層がいるのも確かだ。例えば、自分の意志で何かを選びたいわけではなく、退屈しのぎのために、ディスプレイからただ一方的に何らかの番組が流れてくることを期待している人々である。この点、スイッチオンにした瞬間、ボタン一つで10近くのチャンネルを選べるテレビは、依然として優位だ。

だから「ネットのほうが、見たい時に、見たい番組が見れるから、いずれテレビを駆逐する」と言われて久しいが、まだまだその域には遠く、おそらく今差し掛かっているのは、むしろネットとテレビの並存時代であり二強時代である。

もちろん、受信料を強制徴収できるNHK以外は、今後もますます苦戦を強いられ、広告料の減少が続くだろう。しかし、テレビ局は電波の特権を得ており、また依然としてテレビ局にしか制作が難しい種類の番組もあるため、巨像はまだまだ倒れることはない。

 

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