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今度の戦争はヒロシマ・ナガサキから始まる

映画「ザ・デイ・アフター」より

(当サイトとして実質、初めての記事になります。初めてで、これでよいのかと思わないでもありませんが、とりあえず回していくことを重要視します。徐々にカルチャーや雑学・雑談、はてはギャグまで混ぜていきますので、お楽しみに)

2016年3月、オバマ大統領がキューバを訪問した。長年敵対していた両国が和解に及んだということで、世界は歓迎ムード一色だ。

しかし、この平和に向けた希望をいきなり打ち砕いて申し訳ないが、この時機にアメリカがキューバの取り込みにかかった行動の真意をよく考えるべきだ。ケネディ政権下のキューバ危機の例を持ち出すまでもなく、アメリカとしては地政学的にキューバだけは敵陣営に回すわけにはいかない。よって、穿った見方をすれば、アメリカの本音は世界大戦に向けての用心とも考えられないだろうか。

つまり、アメリカとキューバの和解は、世界平和ではなく、逆に世界大戦が近づいているシグナルではないのか。実際、そう予想できる根拠もずいぶんと出揃ってしまった。以下ここ2年ほどの間に国際社会で起こった出来事を並べてみたい。



次から次へと大戦の火種が生まれたこの2年間

・14年2月、民主的に選ばれたウクライナのヤヌコビッチ政権が、西側諜報機関の支援を受けたと見られる“市民団体”による暴力革命によって崩壊させられた。それを受けて、プーチン大統領はすばやくクリミアを同国から切り離し、住民投票を行った。

・14年4月、ウクライナ東部の二州が独立を宣言。ロシアの支援を受け、ウクライナ政府との内戦に突入した。

・14年6月、最高指導者バグダディは「イスラム国」の樹立を宣言した。以後、米軍を中心とする有志連合は、シリア・イラク地域内で数千回もの空爆を実施した。

・14年7月、ウクライナ東部ドネツク州で航空機が撃墜され、約三百名もの乗客乗員が死亡した。ロシア犯人説が強まり、同国は一挙に国際社会の敵になった。

・14年8月から1バレル100ドルを超えていた原油が突如、急落し始め、半年後には半値以下の40ドルになった。最大の打撃を受けているのはロシアとイランとベネズエラだ。

・15年4月、CFR(外交問題評議会)は対中戦略の変更を訴えるレポートを出した。簡単にいえば、以前の四半世紀にわたる親中政策の180度転換である。

・15年5月、以前から南シナ海を埋め立てていた中国が軍事基地を建設していることが米国防総省によって暴露された。完成すれば3千m級の滑走路を有する一大軍事拠点となる。

・15年6月、ドイツで開催されたG7サミットが「中ロ非難共同声明」を採択した。

・15年7月、六大国とイランとの核協議が合意した。これにイスラエルが猛反発。10月、ネタニヤフ首相は国連総会で演説した際、合意への激怒を表明し、各国代表団を数十秒間にわたって無言で睨みつけた。

・15年9月、プーチン大統領の決定により、ロシア軍がシリアへの空爆を開始した。

・15年10月、アメリカは軍艦を派遣し、中国が建設する人工島軍事基地の12カイリ内での“巡視活動”を行う「航行の自由作戦」を開始した。11月には核兵器搭載可能なB52戦略爆撃機2機で人工島近くを飛行し、威嚇した。

・15年11月、ロシアの旅客機がエジプト領内で撃墜された。224人全員が死亡。ISが犯行声明を出している。

・15年11月、パリでイスラム系過激派組織による同時多発テロが発生した。死者130名、負傷者数百名に及んだ。

・16年1月、北朝鮮が地下核実験を強行。同国は水爆であると称している。

・16年2月、北朝鮮が事実上の長距離弾道ミサイルの発射実験を行った。

・16年3月、最大規模の米韓合同軍事演習が始まった。北朝鮮の処断を意図した作戦に対して、同国は猛反発し、ついに「核の先制攻撃」を警告した。攻撃対象には米韓だけでなく、日本国内の軍事基地も含まれている。

・16年3月、ベルギーでイスラム系テロリストによる同時多発テロが発生した。

今度の戦争は核戦争になる可能性が高いのでは

どうだろうか。こうして時系列で整理してみると、わずか2年ほどの間に、国と国、民族と民族、宗教と宗教の争いの火種が世界中のあちこちにばら撒かれたことがよく分かる。

とりわけ、ウクライナ・中東・南シナ海・朝鮮半島の四箇所は一触即発の状況だ。「第三次世界大戦の発火点が四箇所にある」とも言えよう。

しかも、中東地域においては、火種が複数存在している。日本では陰謀論系の言論空間以外ではあまり馴染みがないが、「IS問題」と「イスラエル対イラン問題」のほかに、実は「第三神殿建設問題」もある。エルサレム旧市街の「神殿の丘」に、古代のユダヤ教神殿を再建する計画が準備中なのだ。もっとも危険な導火線の一つである。

しかも、これは現ネタニヤフ政権に参加する極右政党「ユダヤ人の家」の党是でもある。このプロジェクトは19世紀半ばからイスラエル建国に奔走したシオニズム勢力と関わりが深い。彼らは信じられないほど強引なことを平気でやって来た。

だから、同地のイスラム教の聖地「岩のドーム」を本気で破壊しかねないし、そうなったら即、中東大戦争の勃発となる。

このように、警報に例えれば、世界はイエローゾーンへと突入している。何かの衝突をきっかけにして、本当に大戦へと突き進みかねない危険な状況だ。

しかも、今度の大戦は核兵器が普通に使われる可能性がある。つまり、先の大戦はヒロシマ・ナガサキで終わったが、今度はヒロシマ・ナガサキから始まるということだ。

そうすると、今度の戦争は、それまでの5千年間に繰り返されてきた過去のそれとはまったく次元を異にする、凄まじく凄惨なものとなる可能性が高い。

当然、日本が勇んで戦争に参加することなど論外だと思う。

戦争をしない、させない、巻き込まれない、を改めて「国是」にしたい。

これは薄甘い平和主義からでなく、もっともリアルな生存の観点から大真面目に言っている。

ただ、人間は体験していないことをリアルな恐怖として実感することが難しい生き物でもあるのも確かだ。そこで唯一の被爆国(厳密には原爆体験国)として、自身の過去を思い出すことで、少しでも近未来の惨劇に対する想像力を喚起すべきではないだろうか。

戦争の記憶が風化しつつあるが、“戦前”の今こそ、広島平和記念資料館の展示を見、被爆者の方々の体験談を聞き、中沢啓治氏の『はだしのゲン』を読み返すべき時だ。

そう言う私自身もそれらによって昔受けた衝撃を、再び感じるべき時機が来たと痛感している。と言うと、「おまえはサヨクか!」と突っ込む人もいるようだが、戦争のリアルを感じる手段や努力にイデオロギーは関係ない。

むろん、個人間でトラブルがあるように、集団と集団、国と国との間でトラブルが生じること自体はやむをえない。そのために「外交」という知恵がある。だから、外交上で主張すべきことは遠慮なく言ったらいいと思う。

冷静に考えて、現在、日中・日ロ・日朝間に存在するトラブルは、仮に外交交渉がうまくいかなかったとしても、果たして戦争するほどのものだろうか。私にはとてもそうは思えない。しかも、中国・ロシア・北朝鮮が核ミサイル保有国でもある現実も忘れるべきではない。

彼らの傍若無人な振る舞いを指して、何か懲罰する感覚で「撃て」などと言うのは、どうかしている。アメリカ(の一般市民ではなく一部政治家と軍産複合体)は戦争したがっているのもしれないが、日本が軽々しくその尻馬に乗ることは愚かな自殺行為でしかないということを肝に銘じるべきだ。

Takaaki Yamada: