このサイトの読者には定年の方もかなりいらっしゃいます。
というのも、なぜかグーグルは提携サイトの読者構成が分かるんですね。たとえば、当サイトの読者の4割強が女性です(なぜ女性が読みに来るのかは知らないけど)。
前回、大金を持ちながらあの世に逝ってしまった資産家を取り上げました。
あの世へは金は持っていけません。生きているうちにどんどん使うべきですね。
平成日本の“イソップ童話”――3億6千万円盗難事件
むかし、むかし、こういう事件がありました。
今となっては何新聞の記事か分かりませんし、正確なソースは検索しても出て来ないですが、この事件は私も当時読んだ記憶があるので、事実で間違いありません。
庭に埋めた“がばい貯金”ガバッと盗まれる 2009.1.29
佐賀県伊万里市で昨年10月、80歳代の会社役員男性が庭に埋めて貯蓄していた3億6000万円もの大金がなくなっていたことが28日分かった。さらに男性は昨年12月に亡くなっており、真相はかなりのミステリー。(略)
男性が金を埋めていたのは同市山代町の自宅庭。庭に穴を掘り容器に入れ、40年間かけ事業でためた金を十数年前からコツコツと埋めていた。(略)
容器ごと現金が姿を消していた。現金はすべて1万円札。
重さにすると約36キロの大金。男性は「家の中だと火事でなくなる可能性もある」などと捜査関係者に話していたといい、土中は安全と判断したようだ。
男性は大金を盗まれてから約2カ月後に死亡していますが、普通に考えて、犯人がこの時点で男性を殺す必然性はないわけで、他殺ではないと推測されます。
大方、失意のあまり、普通に(?)お亡くなりになったのでしょう。
私の記憶では、たしかこの件には「老後の蓄え」という意味もあったはず。
それにしても寓話めいた事件ですね。イソップ物語で「ミツバチとキツネ」というタイトルであっても不思議ではないストーリーです。
はっきり言うと、こういう事件は警察も熱心に捜査しないんですね。事件は次から次へと起きるので、当局も時間配分が必要。被害者も死んじゃったし、関係者を中心に調べてみて、誰かが大金を手にした形跡がなければ、あとはお蔵入りでしょう。
犯人にしてみれば、しばらくおとなしくしていればいい。
実は、ご老体の中には、上の例を笑えない人が多い。
というのも、日本の老人は平均で3千万円以上もの金を残して亡くなっていく。
どれだけ大量の資金が退蔵されているかということです。マネーは経済の血液ですから、できるだけ流さなければなりません。人体の一部で血が滞っているようなものです。
日本で一番お金を持っている層がこれでは困ります。
ナンセンスな問いですが、果たして、大金をただ埋蔵していた老人と、そのカネで豪遊する盗人の、どちらが社会にとって有益な存在か、迷う部分もあります。
そこで私からシニア世代に差し掛かった人々に二点ほどご進言。
第一に、お金をどんどん使う行為は、経済への貢献になるということ。
あなたが100万円を使えば、それは誰かにとっての100万円の収入になります。
つまり、大いに消費を楽しむということは、個人の愉しみであるばかりでなく、ひとつの社会貢献にもなるということです。
これまで「節約・貯蓄」こそ美徳と刷り込まれ、個人的な快楽のために消費する行為に対して、ためらいや罪悪感のようなものを感じるというのなら、「モノやサービスを売る誰かにお金をプレゼントする」つもりで消費してはどうでしょうか。
あなたが使った分は、キッチリと誰かが受け取るわけですから。
それがまた、世代間格差のいくばくかの解消にも貢献することでしょう。
とくに不景気の時にどしどし消費することは、みんなから喜ばれるでしょう。
自分にとってよく、社会にとってもよい・・・よいこと尽くめです。
今後は一種の社会貢献と思って、積極的に消費をしてみたらどうでしょうか?
第二に、人は「今一番やりたいこと」からどんどん先にやるべし。
人間のありがちな過ちは「おいしいところは、後でとっておこう」と算段することです。ましてや定年を迎えた人が一瞬たりとも考えることではありません。
野鳥を見てください。果物のなる木にとまると、一番熟した実の、一番おいしそうなところから、真っ先に突いていきます。
クマも鮭を獲るなり、腹からかぶりつきます。腹だけ食って、あとは捨てます。
つまり、動物は、エサが豊富なシーズンだと、おいしいところだけ摘まんで、あとは食い散らかす真似を平気でやります。
自然は、実はそれが自然な行為であり、正しいことを教えてくれます。
資金と時間があることは、定年者の特権ではありませんか。
「おいしいところを食い散らかさずして何か定年か」という気概で、今一番旅行したいところや、今一番食べたいものなどを、リストアップされてはいかがでしょうか。
それでも迷う人は、とりあえず、自分が生まれた国の、北から南でも、その逆でもいいから、順番に見て回ってはいかがでしょうか。
私の知っている人の中には、とりあえず東海道を歩いてみたとか、とりあえず海岸線を辿ってみたとかで、それがそのまま趣味になってしまった人もいました。
四国八十八ヶ所巡礼のお遍路さんも、やり始めると、最後までやり遂げたくなるという、パズルプレイヤーの心理をうまく突いて(?)います。
だから、老人はやりたいことをやる。それが見つからなければ、とりあえず面白うそうと思ったことは、どんどんやってみる。欲しいものはどんどん買ってみる。「飽きたら、すぐやめる・すぐ捨てる」という食い散らかし行為でも全然オーケー。
動物だってそう。子供だってそう。老人も素に還るべし。
どうせあの世には金は持っていけません。ご老体が「まだまだがんばるぞ」とばかり、従来どおり働いて節約・貯蓄を続けられると、かえって迷惑。
ひとつ社会貢献だと思って、どんどん遊んで、楽しんで、消費しましょう。