(前回の続き)
そもそも、国内の感染状況について、根本的に間違えている可能性もある。
周知の通り、日本は、入国制限前まで、世界で一番、中国人観光客が溢れかえっていた国でした。しかも、東京五輪開催と観光需要を心配して、欧米よりも入国制限を遅らせた。感染源が中国だとすると、日本が世界第二位の感染拡大国でもフシギではない。
現在、感染者数は1万人を突破しましたが、これは検査数が増えた(笑)ということの反映による数値です。日本国民の現実の感染率は、本当は不明でしょう。
今、世間では、タレントやら、スポーツ選手やら、マスコミ人やら、著名な人たちも続々と感染していて、あまりにありふれた印象なので、誰もが「日本はとっくに感染拡大しているんじゃないのか」と、内心でうすうす疑念に思い始めています。
そりゃそうでしょう。これだけ「ゆるゆる」の対応をしてきたわけですから。
4月7日、東京など7都道府県で「緊急事態宣言」が出されましたが、欧米みたいな「外出したら罰金」みたいな強制力もなく、ただの外出自粛要請でした。
かく言う私も、大宮や浦和に用事があったので行かざるをえませんでしたが、電車内も街もいつもの半分強かなという印象で、夕方、大宮駅構内などはごった返していました。
そういえば、私もコーヒー屋でマスクを脱いで話し込んでいたような・・・。
これで感染が拡大しなかったら、そっちのほうが奇跡です。
つまり、これは重要なことですが、
「日本は厳格な外出制限と国民統制によって感染拡大をなんとか抑え込み、その結果として辛うじて死者が222名に留まっている」のではなくて、
「感染拡大を事実上放置(という表現が悪ければ適当に対策)してきて、それでもなお死者が222名に留まっている」というのが、どうやら真実ではないでしょうか。
もちろん、累積死者数は増えていくわけですが、欧米並みになるとはとても思えません。
首都圏民の2割以上がすでに新型コロナに感染していてもおかしくない!
これはアゴラの永江一石氏による4月13日の情報で知ったことですが、
医療統計の専門家・五十嵐東大准教授が下のようなレポートをしています。
ドイツ、2月のカーニバルで集団感染が起きた町 (Heinsberg郡)で、1,000人の住民を対象に抗体検査を実施した疫学調査の中間報告が出ました。(略)
14%がIgG (感染後1週間程度でできる抗体)を持っていて、PCRで確認ずみの患者 (2%)とあわせると、全体の感染率は15%。ここから計算すると致命率は0.37%で、公表データの2.0%の5分の1程度。住民全体に対する死亡率は0.06% (1700人に1人)。
こういう情報こそ、社会的影響力や信用力の大きい著名人や専門家、NHKニュースやワイドショーなどが大々的に取り上げるべき内容ではないだろうか。
ハインスベルクというと、ドイツの西の端、オランダに接する街です。
そこの住民を調査したら、すでに15%が感染していた、というのです。
しかも、大半が無自覚でなんともないという。
日本よりも死者が多く、厳格な対策を取っている1週間前のドイツ西部でこれだったら、今現在の日本、とりわけ首都圏だと、感染率20%でも驚くに値しない。
なにしろ、あの満員電車と、みんな外出自粛してねー、というゆるゆるの対策(笑)。
いや、その渦中の一員だった私自身も、すでに感染者でも不思議ではない。
大規模な抗体検査により「真に正しい対策」が浮き彫りになるはず
実態を明らかにするのが、たとえば数千人といった規模の抗体検査です。
どこでどうやるのか詳細は不明ですが、4月下旬内に実施らしい。
仮に首都圏がハインスベルク水準の感染率だとするなら、6、7割が感染することで自然収束するという例の「集団免疫」まで、あと一息と思われます。
つまり、一番感染が広がっている首都圏だと、通常運転やゆるゆる自粛をしていれば、真っ先に「集団免疫」状態へと向かっていくと思われます。
かえって、何もしないほうが、4月下旬にもピークを迎えて、あとは問題が収束していく一方ではないか(今となっては「だったのではないか」)とも考えられる。
日本では地域ごとにかなりの感染のバラつきがあるため、まず都市圏でコロナ問題が収束して、地方は時間差で順次収束していくイメージでしょうか。
よって、あくまで日本(又はBCGワクチンの有効国)に限れば、実は「戦略的放置」こそが新型コロナ問題の「本質的解決策」だった可能性がある。
すると、早期にPCR検査を実施しまくって、感染者を社会的に隔離した韓国の事例は、賞賛する人が多いが、必ずしも正解ではないことになる。
なぜなら、感染拡大の阻止には成功したが、問題の本質的解決には失敗した事例とも考えられるからです。仮に中世なら、非感染者の国民は、この先安泰でいられる。
しかし、今の時代にずっと国を閉ざし、感染を阻止し続けることが可能だろうか。
結局、ウイルスを一掃しても、しばらくして、どこかのルートからそれが再侵入してくるわけです。しかも、繰り返し。
つまり、韓国式の対策は問題の先送りとも言える。
致死性ウイルスなら隔離優先もやむを得ないが、新型コロナレベルの場合は逆に過剰対策となるのではないだろうか。
だから、結局、BCGワクチンの有効諸国では、集団免疫を一刻も早く獲得したもの勝ちということが言えます。
そのためには「戦略的放置」が正解ではないでしょうか。
これは「無策」とは違い、個別の問題にはそのつど柔軟に対応するということです。
いずれにしても、仮に日本の都市部で大規模な抗体検査が行われることがあり、それによって市民の1割や2割、あるいは3割といった人々が既感染している実態が白日の下に晒されれば、対策は一転「集団免疫の獲得」へと切り替えるべきです。
つまり、近年のインフルエンザ対策レベルに引き下げてもよい。
BCGワクチン有効説の統計と合わせて、これはゲームチェンジを促す「キラー統計」になりえると思います。現実こそが真理と考える人にはそれが分かるでしょう。
しかし、ゴキブリ一匹を退治するために家に火をつける真似をしてしまった為政者・専門家・著名人たちが、果たして自分の間違いを認めるかどうか・・・。
付記:スウェーデンの集団免疫が近いらしい
この記事を書いている時、ちょうどこんなニュースが報じられました。
「スウェーデン、ロックダウンせず新型コロナ対策成功か 疫学者が主張「5月中にも集団免疫獲得」2020年4月20日
(前略)スウェーデン公衆衛生局の疫学者アンダース・テグネル氏が「集団免疫を持ち始めた」との考えを示したことを19日(日本時間20日)、米紙「デイリー・ニュース」が報じた。
「スウェーデンが集団免疫が近いとし、封鎖しない対応後に新型コロナウイルス対策の成功を主張」との見出しで掲載された記事では、テグネル氏が「我々のモデラーによると、ストックホルムで多くの人々が免疫を持ち始め、それが感染拡大に影響を与え始めます。我々のモデルは5月中を示しています」との考えを明かしたことを伝えている。
スウェーデンではロックダウンすることなく、新型コロナウイルスの感染拡大防止に努めている。しかし、現時点でスウェーデンでは新型コロナウイルスの感染者数は1万4385人となっており、そのうち、1540人が亡くなっている。しかし、テグネル氏は「全体的な戦略の失敗ではありません。介護施設に住む高齢者を守ることに失敗したからです」と自身の考え方を明かしている。(後略)
これをどう見るかですが、
スウェーデンの人口はちょうど日本の10%ですから、人口比で考えれば、スウェーデンの1540人死亡は、日本にとっての1万5千人の死者に相当する。
逆にいえば、日本の死者の割合は、スウェーデンにとって「22人死亡」程度の話で、初期ならともかく3ヶ月経ってそれですから、「いったい日本人は何を騒いでいるのか」と呆れられることでしょう。いずれにせよ学ぶべきはスウェーデンの戦略ですね。
私はインフルエンザ水準の1万人程度の死者を容認してでも全体のために集団免疫戦略を決断するのが、政治の真のリーダーシップだと思います。