さて、前回、1950年代の朝鮮戦争は、「影の政府」が「アチソンライン」を使ってわざと引き起こしたものだった、しかも将来の戦争の火種として取っておくために、トルーマン政権は勝てる戦いにわざと勝たなかった・・という話をした。
だから「開戦前の38度線に戻っただけ」という結末は計画通りなのだ、と。
実は、こういったことに私が気づき始めたのは今から十年前、拉致問題の打開策を創案するために独自に調査していた頃だった。
少し当時の背景を説明すると、米ブッシュ政権はフセインのイラクを侵略し打倒したものの、その後の占領統治が混乱を極めていた。他方、北朝鮮は、
- 05年2月、核保有を宣言
- 06年10月、初の核実験に成功
という具合に、国際社会に逆らって、正式な核保有国化を宣言した。
同じ頃、ブッシュ政権からネオコンがいったんパージされ、代わって国務省が外交の主導権を握った。それに伴い、大きな戦略の転換が行われた。
その直後から、アメリカは、一転して日本の拉致問題に冷淡になり、逆に北朝鮮に対しては宥和的になった。ちょうど総理になったばかりの、第一次の安倍氏がその冷や飯を食わされる格好になった事態を、ご記憶だろうか。
なぜアメリカは突然、豹変したのか? 当時、専門家は誰も解説できなかった。私もむろん分からないので、自分で調べた。今にして思えば、分からなかったのは当然だが、ただ疑いを持ったおかげで、今書いていることに気づくようになった。
後日、全文を公表するが、その十年前に書いた文書の一部を以下に掲載する。
以下、2007年に作成し、関係各機関に配布した拉致問題解決策の一部
(以下引用・傍線は今の筆者)
5・アメリカの対北政策の真の目的を考える
07年10月の6カ国協議では北朝鮮の非核化について合意をみたが、明らかに国際社会を欺ける余地を残している。すでに廃施設同然とも言われる寧辺の核3施設を無能力化し、第2段階措置として年内の“すべての核計画の完全かつ正確な申告”を北朝鮮に義務付けているが、ウラン濃縮施設と既存の核兵器の扱いについては曖昧なままだ。
実に不可解である。もともとウラン濃縮計画の発覚が94年の米朝枠組み合意崩壊の発端であるのに、現在、アメリカはその核開発疑惑の本命にはあまり触れたがらず、追及に消極的な姿勢を見せているのだ。
仮にアメリカが本心から北朝鮮のプルトニウム保有とウラン濃縮計画を容認していないとする。その場合、プルトニウムについては、原子炉から放出される特定元素という物的証拠があるので、北朝鮮としても保有それ自体をごまかすことはできない。だが、保有量は推定でしかないため、個数自体はごまかすことが可能だ。ウラン濃縮施設についても同様、黙秘を通すか、あるいはごまかし切れないと悟るやほんの一施設を差し出してみせるのではないか。なにしろ、検証不可能なのだ。「相手の申告を信じるしかない」という状況では、いくらでもごまかしが可能である。
おそらく、実際には複数のウラン濃縮施設がモグラの巣のように縦横に掘られた地下施設の各所に点在しているに違いない。
つまり、北朝鮮は、数個の核兵器とその真の開発施設を隠蔽し、事実上の核保有国であり続けたまま、非核化2段階措置を“完了”し、最終的に北朝鮮をテロ支援国リストから外したアメリカとの国交正常化を成し遂げるとも考えられるのだ。
また、ブッシュ政権にしても任期内に外交的成果を残すのが目的なので、内心では「申告して差し出したプルトニウムやウラン濃縮施設以外にも、北朝鮮はまだ何となく隠し持っていそうだ」と疑っていても、政治的に妥協してしまうに違いない。
一方で、仮にアメリカが本音の部分ではそれを容認しているとしよう。実際、追及に消極的な姿勢を見る限り、この想定のほうが真実に即しているという気がしてならない。
この場合、アメリカの意図が喧伝されている“非核化”とは別のところにあるからだと考えなければ、合理的な説明がつかない。6カ国協議自体、名目は朝鮮半島の非核化であるが、裏目的は「日本のカウンター核武装の阻止」と「天然資源の確保」であると囁かれているから、その場合、一つにはウランの確保が関係しているとみるのが妥当だろう。
これに関しては戦前から日本帝国が調査し、ソ連の原爆開発の材料にもなった経緯があり、埋蔵量は400万tとも推定されている。そもそもブッシュ政権が当初から「悪の枢軸」との対決姿勢を明らかにした理由は、ピークオイルを見越したエネルギー資源の確保戦略とドル防衛戦略があり、「民主化云々」はその真意を糊塗するためだった疑いがある。
そうすると、ネオコンと国務省の対北政策は正反対に見えて、その実、目的は最初からまったく同じであり、単にその手段――つまり強硬策と穏健策――をめぐって対立が生じていただけとも考えられる。要は、独裁政権を打倒してウラン資源を手に入れるか、それとも取り込むことで資源へのアクセスを容易にするか、という違いである。
そしてその資源争奪上のライバルが中国であることを考えると、アメリカの不可解な行動の理由がいっそう鮮明になってくる。アメリカは昨今の中朝関係悪化につけこみ、かつて対ソ戦略として毛沢東の中国と国交樹立したように、今度は対中戦略として北朝鮮と国交樹立しようとしているのではないか。はっきり言えば、アメリカが北朝鮮を「対中国における駒」に仕立て上げるつもりではないか。いわば“逆キューバ危機作戦”である。こう考えると、アメリカの“甘い”態度にも十分な説明がつくだろう。
つまり、アメリカの対北政策の本音は次のようなものではないか。
第一に、将来のエネルギー源としてのウラン資源を確保すること。第二に、国交正常化を機に中朝を分断し、できれば対中国の尖兵に仕立て上げること。そして第三に、アメリカの安全保障にとってのみ有効な“非核化”措置を行うこと。
第三の意味するところは「核不拡散」である。要はイスラム諸国やテロリストに核物質とその技術を譲り渡さなければよいということであり、逆に言えばそれ以外――核爆弾と中距離弾道ミサイルの保有――は大目に見るということだ。
(以上引用終わり)
2007年当時の対北宥和政策の隠された動機
2005年、米財務省は、北朝鮮が各国金融機関と取引できないようにするために、マカオの「バンコ・デルタ・アジア」を制裁した。米当局による実効性のある対北制裁といえば、これが最後ではなかったかと記憶している。そして、言ったように、(おそらく)2006年のブッシュ政権内において、大きな戦略の転換があった。
2007年当時になると、アメリカは口先では「北朝鮮の核開発を容認しない」と言いながら、実際の行動では何ら実効性のある対策を取らなかった。というか、北朝鮮に影で核開発を続けられる隙を与えた。つまり、事実上「黙認」したのだ。
この行動を不可解に思った当時の私は、乏しい知恵を絞って推測した。上の文末にもあるような、誤った「三つの理由」を想像するのが精一杯だった。
今の私は、前々回の記事に記したように、次のように真相を推測している。
おそらく、対イラク戦争後の方針転換、つまり具体的には2006年からだと思うが、その頃から「あるレベルの核開発までは許す」という考えに基づいて、北朝鮮の核・ミサイル開発は、わざと黙認状態に置かれてきたのだ。
「あるレベル」というのは、「なんとか隣の国に命中させる程度の技術水準」であり、それ以上は許さない。「それ以上」というのが、米本土向け弾道ミサイルやSLBMの完成、核兵器・核技術の拡散などを指す。最初から、そのレベルに届いたら、又は届く直前に、トドメを刺す予定なのだ。つまり、それが今である。誰が大統領かは関係がない。
そう、これが真相だと私は考えている(*太字は今の筆者)。
よって、「朝鮮半島の分断状態は第二次朝鮮戦争の火種として取っておかれたもの」という仮説と合わせると、驚くべき、そして恐ろしい計画が浮かび上がってくる。
「将来、朝鮮半島で再開する戦争は、核戦争にしよう。北朝鮮に核兵器を使わせよう。ただし、被害は周辺諸国に限定しよう」
今から十年ほど前、「影の政府」がこんな決定を下した、ということなのだ。
とっくに第三次世界大戦を見据えて動いている米と中ロ
では、当時、なぜブッシュ政権は戦略の大転換をしたのか。
これも、今では謎でも何でもない。私のサイトを見てきた人には、すでに自明のことかと思うが、新しく来た人のために、次の記事が参考になると言いたい。
いわゆる教科書的な近代史は、「影の政府」のリライトが入っている。だが、ロシア革命以降の「本当の歴史」を押さえておくと、今の国際情勢も分かりやすくなる。
要は、冷戦終結後、「影の政府」は米一極支配体制を固めようとした。
ところが、2000年に大統領に就任したプーチンが反撃を始めたことにより、計画が狂い始める。また、イランの策動で中東戦略も難航し始めた。そこへ中国の深慮遠謀も加わわる。2005年、中ロは事実上の反米同盟を結成した。
以来、世界は「新冷戦」へと突入した。この現実に柔軟に対応するために、2005年から6年にかけて、「影の政府」側もまた軌道修正を強いられたのである。
この時期にブッシュ政権からいったんネオコンがパージされたのも、その一環だったのだ。むろん、対北朝鮮政策の方針転換もその一つである。
おそらく、この頃から「影の政府」は「中ロを完全に従えるためには、最終的には戦争もやむなし」と決断したと思われる。
だいたい、中ロを支配できなければ、彼らの「新世界秩序 NWO」を実現するための方法は、ほとんど世界大戦以外残されていないのだ。
だから、路線変更以来、アメリカは核戦力の高性能・小型化と、ミサイルディフェンス網の整備・高度化に尽力してきた。現在、戦略核兵器は「最終兵器」のため、アメリカは「使える核兵器」として、戦術核・小型核の開発配備を進めているのだ。
当然、中ロ側も最終的には世界大戦を覚悟している。だから、中ロ首脳が東欧のMD配備や在韓米軍のTHAAD配備に断固反対の姿勢を取っているのだ。理由はもちろん「自分たちが西側と戦争した際に不利になるから」である。
このように、とっくに両者とも将来の大戦を視野に入れている。こういった世界の「流れ」や「全体の動き」を押さえておかないと、今現在起こっていることの本質も分からないと思う。ところが、日本では、国際政治学者や専門家を自他共に認める人たちが、こういう根本的なことは何も知らない。彼らは瑣末なデータ的・インフォメーション的なことには詳しい。しかし、それは“インテリジェンス”ではないと思うが・・。
影の政府が朝鮮半島周辺での限定核戦争を望む理由
では、なぜ2005~6年頃の「影の政府」は、「将来、朝鮮半島周辺に限定された核戦争をやりたい」と考えたのだろうか。あるいは、なぜ「北朝鮮に核兵器を使わせよう」と考えたのであろうか。大事なことは、彼らには彼らなりの視点があるのであって、無理にわれわれ一般人の常識を当てはめないことだ。以下は私の推測である。
第一に、現代における核戦争の様相と核攻撃の被害とはどのようなものなのか、物理的・社会的な影響はどうなのか、事前にテストしておきたい。つまり、極東の局地戦は、彼らの予定している本番の前のシミュレーションというわけだ。
第二に、反西側国家に先に核兵器を使わせることによって、将来における自分たちの核兵器使用を正当化できる。大戦後の「核のタブー」を破る国として、一般に「中ロ側」と見なされている北朝鮮は、もってこいだ。
第三に、“本番”の世界大戦前に日本を完全にNATO陣営に組み込むため。おそらく、ミサイル攻撃を受けた日本は以後、右傾化し、憲法を改正し、軍事国家を目指す。核攻撃を受けたとなればなおさらだ。ただし、ここが微妙なところだが、「影の政府」的にはそれは「西側の頼もしい同盟国」を意味するのであって、戦前の軍国主義や国家神道の復活は絶対に許されない。なぜなら、それは歴史上、彼らが経験した最悪の反欧米主義だからである。だから下手に戦前を賛美すると、「西側に忠実でない」と逆に危険視されよう。
第四に、アメリカ人を戦時下心理へと誘導するため。中ロの同類国の核兵器で、米軍人が殺された・・これでアメリカ国民は攻撃モードへと移行する。また、北朝鮮の事実上の同盟国であるイランに対して、その憎しみの矛先を向かわせることができる。
第五に、イスラエル的にも対イラン戦の大義名分が立つ。「ほら見ろ、イランの同盟国の北朝鮮が大量破壊兵器を使ったぞ!」というわけだ。「イランはイスラエルを抹殺すると言っている! 傍観していたらわが民族も韓国人みたいに虐殺される!」というロジックならば、イランと開戦する上で内外を説得しやすい。しかも、先に「イランの同盟国」が核兵器タブーを破ったことで、イスラエル軍の核兵器使用にも道が開かれる。
第六に、「影の政府」が将来予定している「世界政府樹立計画」にとって都合がよい。なぜなら、そのための切り札が、「このような悲惨な戦争を永久に無くすには、もはや国家そのものを廃止するしかない」という理想の全世界への喧伝だからだ。彼らとしては、「大衆自らが国家の永久的廃止と世界政府樹立を望む」のが上策なのである。逆に言うと、戦争が悲惨なほど都合がいい、ということになる。そして、世界大戦を悲惨なものにするためには、その前哨戦たる局地戦の段階でリミットを外す必要がある。
第七、これは穿ちすぎかもしれないが、彼ら的には日韓のようなアジアの近代国家に打撃を与えることや、有色人種の数を減らすことは、大いに望むところのはずだ。
以上のような“メリット”があれば、影の政府的には、北朝鮮に核兵器を使わせ、大勢の市民を虐殺させることについて、何ら思い止まる理由はない。
ラッセル国務次官補が漏らした言葉、そして戦後の日本への請求書
つまり、最初に「いずれ中ロとの世界大戦もありえる」という想定があった。当然ながら、その時には戦争遂行上、自分たち欧米に有利な、又都合のいい状況が欲しい。それを作り出すためには、その”前哨戦”を引き起こして、北朝鮮が核兵器を使えばいい、と考えたのだ。それがメインの理由としてあって、その他諸々のサブの理由がくっついている形だ。
そして、このような思惑に基づいて、これまで北朝鮮は「なんとか隣の国に核ミサイルを命中させるレベル」までは核開発を許されてきた。だが、今や「米本土」という「それ以上」のレベルに届こうとしている。当然、最初の予定通り、北朝鮮はトドメを刺されることになる。そして、そのことは、米国も隠していない。
実は、最近のジャーナリスト野口裕之氏の記事に興味深い記述があった。
http://www.sankei.com/premium/news/170306/prm1703060005-n9.html
(前略)米国務省のダニエル・ラッセル東アジア・太平洋担当国務次官補は2016年10月、米メディアの安全保障担当記者たちとの朝食会で、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の「運命」について語り出した。
「彼(正恩氏)は核攻撃を遂行する強化された能力を有することができようが、核攻撃能力を持った途端、死ぬことになる」
言ったように、金正恩は最初から「もっと悪いやつら」に消される運命なのだ。
この「核攻撃能力」とは、もちろん米国を攻撃する能力のことだ。なぜなら、日本や韓国を核攻撃する能力なら、とっくに北は持っている。
その途端、「死ぬことになる」という言葉が、国務省の高官レベルから出て来たということは、前々から決定済みだったということだ。なぜなら、一高官の彼にはそういうことを決定したり、勝手にメディアに口走ったりする権限はないからだ。しかも、発言した時期はまだオバマ政権時であり、次の大統領も決まっていない頃だ。
このダニエル・ラッセルは、1994年の最初の朝鮮半島危機の頃にはすでに韓国の米大使館に赴任していた人物だ。だから「裏事情」を承知している可能性が高い。
というわけで、「影の政府」は、次の第二次朝鮮戦争で、北朝鮮に核兵器を使わせるつもりだ。追い込まれた北が最後に自殺的な核攻撃に踏み切ることを期待して、近々戦争を始めるだろう。米国はそれを承知の上で北を殺るが、日本にはその肝心な部分は伏せている。それどころか、事情を内々に知るらしいティラーソンも、逆に「わが国が犠牲になってでも日本を100%守る」という、恩着せがましい態度を示すだけだ。なぜなら「実験代」のかなりを、当の「実験台」に負担させるつもりだからである。
何も知らない私たちは、実験台にされながら、感謝までする羽目になるだろう。