さて、トランプ新政権を指して私は勝手に「ネオ・ネオコン政権」とあだ名しました。トランプでもヒラリーでも大きな違いはないというのが私の考えです。
両者の極端な対ロシア姿勢の違いについては、主として「影の政府」内の路線対立が反映されたものであり、その白黒をつけたのが米大統領選だったのでしょう。
では、トランプ就任で、具体的に何がどう変わったのでしょうか。私はその謎を解く鍵がキッシンジャーだと思っています。
キッシンジャー再登場
昨年2月、キッシンジャーは訪ロしてプーチンと会談しています。憶測情報がたくさん出ましたが、どうやら「このままでは第三次世界大戦になる」という危機感を共有したらしい。その後、米ロはいったんシリアでの停戦合意に漕ぎ着けています。
そして昨年5月、トランプ候補がシークレット・サービスを引き連れてキッシンジャー邸を訪ねました。しかも、アメリカの大手ニュースでライブ中継されたんですね。
極秘訪問じゃなく、CBS――目マーク――に大々的に放映させる・・・なんか引っかかりました。「跳ね上がりのトランプの首に鈴を付けたぞ」という影の政府のサインなのでしょうか。これは陰謀系ウォッチャーの間でちょっとした話題になりました。
以後、キッシンジャーはトランプタワーに出入りするようになり、両者は何度も会合を重ねていました。私は最初、キッシンジャーがトランプに釘を刺したのかと思いましたが、そうではなく、何か共同作業をしている風でした。
昨年末に浮かび上がったトランプ政権の対中ロ戦略
で、ようやく見えてきたのがトランプ当選後、昨年の12月になってからです。
まず、トランプは台湾の蔡英文総統と電話会談し、いきなり「一つの中国」という前提をひっくり返しました。この原則は1970年代の米中・日中の国交正常化と台湾断交から続いているものです。立役者はキッシンジャーでした。
そして、同月、トランプ氏は、わざわざホワイトハウス内に「国家通商会議」を新設し、超対中強硬派のピーター・ナヴァロ教授を登用しました。
しかも、トランプがナヴァロ教授の本を読んでわざわざ政権入りを口説いたという点に興味をそそられました。というのも、トランプがそんな本を自主的に読むことはありえない。周辺の「誰」かが読ませたに決まっている。
さて、この時点で、三つのヒントが出揃いました。
- キッシンジャー
- 対ロ宥和姿勢
- 対中強硬姿勢
これでようやく私にも見えてきました。というか、分ってみれば「なんだ、そういうことか」という程度の話でした。
要するに、70年~80年代にかけて行われた、キッシンジャーの対ユーラシア「オフショア・バランシング」政策の「リターン&リバース版」だと思われます。
ポイントは、単に過去の成功手法を蒸し返すだけでなく、標的を入れ替える、つまり「リバースする」という点にあります。かつてのソ連が、今度は中国になるわけです。
キッシンジャーは公職にあった「影の政府」の人間
キッシンジャーが本当は何者で、何をした人なのか、「表」の歴史で解説されていることと実際のそれとは異なるというのが私の考えです。いずれロシア革命以降の「本当の歴史」は説明しますが、要は「裏」から見ないと本当のことは分からない。
キッシンジャーは表の公職に就いていた「影の政府」の人物で、今は当然、重鎮の一人です。世間には彼を「ロックフェラー財閥の番頭」と見なす向きもありますが、彼はオッペンハイマーの出自なので、微妙に違うと思います。
巷間で喧伝されている「ロックフェラーVSロスチャイルド」という対立構造とはまったく違うものの、「影の政府」内に米派と欧州派の微妙な立場の違いがあるのも事実のようです。だから、キッシンジャーは番頭であると同時に「目付け」を兼ねていたのではないかと思います。つまり、ロックフェラーのほうが鈴を付けられていたわけです。
もともとロックフェラー家の先祖もドイツ南部にいたらしい。米のドイツ系移民には19世紀にゲットーから解放されたユダヤ人が大量に紛れ込んでいます。しかも、表面上はプロテスタントに改宗し、移民の際に名前も変えた人が少なくない。
「影の政府」史上最大の失敗の後始末を任されたキッシンジャー
まあ、そういう話は置いておいて、彼にまつわる真実を話すのがここでの趣旨です。元にあったのは、下の記事で紹介したロシア革命です。
このように、いったんは「影の政府」配下のソ連政府が成立しました。ところが、スターリンが最終的に「影の政府」を裏切ったことで、統制を離れてしまいました。あの狂った独裁は、実は自分と政権を守るためだったんですね。
しかも、絶対あってはならないことが起こった。それがソ連の「ロシア回帰」です。“ロシア人”という民族は人格改造によって完全に滅ぼしてしまう予定でした。
しかし、ヒトラーの侵攻に対抗するために“大祖国戦争”プロパガンダを始めたところから誤算が始まり、最終的にソ連の内部からロシア民族が復活し、あろうことか「ロシア・ソビエト」が成立してしまったのです。
そのため、当初の「やらせ冷戦」の予定が「本物の冷戦」になってしまった。これは「影の政府」史上最大といってもいい、歴史的な大チョンボでした。
もともと「やらせ冷戦」は全世界を二大国家に収斂するための演出でした。ところが、本物の対立と化したことで、万一にもロシア・ソビエトが勝利したらどうなるのかという大問題が浮上した。当然、「影の政府」は破滅します。そこで、本当にソ連を打倒して、ロシアの再植民地化をはかり、いったん「米一極支配体制」にする必要があった。その戦略を任された人物こそ、実はキッシンジャーだったわけです。
こういったことは「表」の学界やメディアの人は誰も知りません。
天才キッシンジャーの手腕とは?
必ずしもキッシンジャーひとりの知恵というわけではないでしょうが、彼が考えたのはユーラシア大陸の内部対立を利用するということでした。
当時、中ソ対立がエスカレートしていました。そこで中ソ関係を完全に分断すべく、1971年、キッシンジャーは訪中し、毛沢東・周恩来と会談しました。そして翌年、ニクソン訪中を演出し、米中国交回復を実現したわけです。
当時、日本の新聞と政界は「日本の頭越しに米中が国交を回復した」と言って衝撃を受け、大騒ぎしていました。もう、アホかという話です。
アメリカはそれで日本にも「中国と関係を改善しなさい」と薦めたわけです。しかも、日本から莫大な経済援助をさせて、中国に飴を与えた。
対して、80年代に入ると、ソ連に対しては「超強硬派」のレーガン政権を誕生させ、迎え撃った。まず原油価格を低く抑えて、ソ連最大の糧道を細らせました。
ご存知の通り、この策は2014年半ばからまたやっています。標的はロシア・イラン・ベネズエラでした。国力のないベネズエラが真っ先に倒れました。この策の直前にロックフェラーが「もう石油事業やーめた」と言って撤退してましたね(笑)。
で、レーガン政権は、ソ連の収入を減らす一方で、「SDI」構想をぶち上げ、軍拡競争のチップをどんどん釣り上げていった。通常、二つのライバル国家があると、重要なのは互いに戦力のバランスを取ることです。取れなくなったほうが負けです。無理したアメリカは財政赤字がどんどん膨らみ、債務国家に転落しました。しかし、ソ連はそれ以上に無理を重ねました。国民を犠牲にして軍拡をしました。
アメリカのほうは、実はリスクヘッジしていました。実は、同じ80年代、もう一つの策略を地下で進めていました。それを記したのが以下の記事。
つまり、日本からアメリカへの大規模な資産移転計画でした。だから、レーガン政権としては、いくら軍拡で赤字を出したところで後で日本に支払わせるから問題ないわけです。これはまた、来たる「米一極支配時代」への備えでもありました。だから、日本を弱体化させ、アメリカ経済へのカンフル剤を注入する必要もあったわけです。
さて、こういった戦略を進めた結果はどうだったでしょうか?
ソ連は疲弊しきり、内部から崩壊していきます。1989年にベルリンの壁が崩壊します。続いて90年、日本のバブル経済が弾けます。そして91年末、とうとうソ連は崩壊しました。同じ時期、日本は巨額の資産を失いました。
どうですか? これが彼の手腕です。とんでもない天才でしょう?
これから「悪の帝国」扱いになる中国
まあ、対日政策のほうは、「影の政府」の別の人間が担当していたと思いますが、いずれにしてもキッシンジャーは世間で言われているよりも恐ろしい人物です。
ちなみに、「冷戦終結から次の四半世紀(25年間)の大戦略」は、別の人間たちが担当したようです。で、興味深いことに、冷戦終結の功績者であるキッシンジャーは、たびたびメディアに登場しては、とくにネオコンあたりを指して、「この若輩者が何をやっておるのか」という感じで公然と批判していました(笑)。そして、この四半世紀で目標を達成できなかったため、また彼が再登板してきたという印象を受けます。
仮に私の推理が正しいとしたら、今後、中国は「悪の帝国」視され、かつてのソ連と同じ運命を辿ることになるでしょう。
(*陰謀系の記事はとくに「新世界より」のほうで多いです。こちらのほうが危ない、面白いネタを扱っているので、どうかご覧下さい。)
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