水はどうすれば自給できるか?

オピニオン・提言系
撮影:Takaaki Yamada 群馬県のとある物凄く水のきれいな河川




昨今、「水道民営化」が話題になっている。

私も先日の記事で少しだけ触れた。水道法の改正法案を読むと、どうやら運営権を民間に譲渡できるらしい。ただ、典型的な法律文章のため、非常に煩雑であり、もし正確に内容を把握しようと思えば一、二週間は必要。私もそこまでやる暇はない。

というわけで、水道民営化の詳細は私にも分からないが、麻生太郎が娘の世代を通してロスチャイルド家と閨閥関係であり、日本の水利権を彼らに売ったなどの情報が飛び交っている現状は承知している。これに関しても、私には真偽不明である。

ただ、一つ断っておくと、昔から「民営水道」なるものが日本のあちこちに存在しているのは事実である。とくに別荘地には多い。ただし、大消費圏でそれが行われているケースは、私も寡聞にして知らない。だから、外資の「水メジャー」が都市部の水道運営権を手に入れたのをいいことに好き勝手に水道代を値上げするような事態になったら、私たち一般市民はどうすればよいのか、という問題を孕んでいる。

一般のサービスとは異なり、「A水道が駄目だならB水道で」という選択権はない。私たち市民は生殺与奪の権限を握られたも同様である。自立できないのをいいことに、永久に搾取対象にされる可能性もあるわけだ。したがって、今の内から「水自立」の方法を探っておくのも一考である。しかも、井戸を掘るとか、沢の水を引くとか、万人向きではない選択肢は初めから除外すべきだ。望まれているのは誰にでも可能な水自立の方法だ。



水自立にあたって飲料水製造機は不可欠

実は、私は「ユートピア・システム」というものを構想していて、その一環として各(公共)住宅が水とエネルギーを自給する方法について探ってきた。

その結果、簡単に井戸を掘ったり、沢の水を引いたりできない「普通の世帯」は、電力を使って飲料水を製造する装置が不可欠であるという考えに落ち着きつつある。

それは以前にも紹介したことがある。原理は除湿機と類似している。

空気中から水をつくる装置を紹介する
少し大げさな題名ですが、要は除湿機とほとんど同じ仕組みです。 実は、私は「ユートピア・システム」というものを密かに構想中です。 それは「霊的知識・超科学・新たな政治経済制度」に基づく社会のことです。 単純にいえば、今より一段レベルの高い「新

上の装置は一例で、小型冷蔵庫くらいのサイズだが、表にあるように、湿度90%の梅雨時なら1日あたり「33リットル」の製水能力がある。

冬場の湿度30%の時期でも「7・5リットル」の製水能力である。

しかも、冬場の外気は湿度が低くても、その代わり、部屋を閉め切るので、ガラス窓の内側に水滴が付くように、実際の室内の湿度はそれほど低くならない。ちょうど呼吸等を通して人体から放出された水分を、装置が再回収する格好になるだろうか。

一般的に、この種の装置は小型ながら飲料分をはるかに超える浄水を生産する。

つまり、電力さえあれば、とりあえず飲料水には困らないわけだ。

水を自給するための理想的な設計

さて、私の考えでは、水自立を達成するには2つの技術が必須である。

電力を使った飲料水製造機は一つ目。

二つ目は、雨水タンク及びそのろ過装置である。

この2つはだいたいどんな家にも設置可能である。ただし、マンションのような集合住宅となると、雨水の集水が難しい。ベランダに垂直に雨樋が渡っている世帯は多いし、無くても新設は比較的簡単だが、屋上に降る水をどう配分するかという問題が生じる。

とりあえず以下に一戸建てを対象とした方法を述べる。

私がそもそも考案しているのは送電と水道のインフラに頼らない住宅なので、この際だから電力を自給する方法もついでに述べておきたい。

上は、屋根の全面が太陽電池になっており、同時に雨水を集水するための理想的な形態になっている。電池パネルはガラスコーティングされている。端っこは土手になっていて、雨水が「横漏れ」しないようになっている。そのため、屋根に降った雨はすべて前方の雨樋に向かうわけだ。雨樋には落ち葉防止用の筒型ネットが敷いてある。

大日本プラスチックス(株)の「ネトロン」

雨水は生活用水として使うので、当然、集水部分は清潔でなければならない。

オートワイパーは屋根の清掃や積雪防止のために使う。また、雨樋はワンタッチで取り外し・取り付けが可能にして、清掃が容易でなければならない。

こうして集めた水は、なるべく屋外よりも屋内に導いたほうがいい。

下はあくまで屋外の事例である。

出典:The Rainwater Tank https://www.youtube.com/watch?v=tDMbhmna2iI

出典同:雨樋の水を受けている一次フィルター

屋外に設置した場合、タンクや配管の汚れや劣化が早い。清潔を保つためにも、メンテナンスの観点からも、屋内の納屋部分などに収納したほうがいい。

これはあくまで概略図である。

概念や原理を表しているだけで、寸法までこの通りというわけではない。たとえば、長期にわたる雨水タンクの屋内設置は家のバランスを崩す可能性がある。実際には、家の構造からは独立していて鉄骨で支えられているほうが望ましいかもしれない。

まず、左端のトイレ・散水系統だが、人の口に触れないという前提なので、一次フィルターで濾しただけの水をそのまま使う。

二次フィルターで細菌等を除去した水は、フロとシンク・洗面系統へと回す。

言ったように、飲料水製造機は常に浄水を過剰生産するので、余剰分はシンク・洗面系統へフィードバックするのが望ましい。

絵にもあるが、オフグリッドを実現するためには、「太陽光発電+バッテリー」だけでは不十分であり、小型の風力発電機も併設したほうがいい。

風車に関しては二種類を載せたが、発電量をとるなら水平軸式、建物への低負荷をとるなら垂直軸式を選ぶ。ここでは「フリエネ」は飛躍なので既存技術にしたが、私自身は、これらはあくまでそれが本格登場するまでの代用システムだと考えている。

水と電力の自給自足が可能になれば全国どこへでも家が建てられる!

さて、以上のシステムは、たいていの一戸建てなら導入可能なはずである。

仮にお寺のような建築物でも、屋根に太陽光パネルを設置して、雨樋を雨水タンクへと導いて・・という具合に、やることは基本的に同じである。

というわけで、私の考える水自立のシステムを紹介してきたが、果たして、一般家庭が水を自給自足することは可能だろうか?

この問いに断言することは難しい。なぜなら「条件」次第だからである。

家族の人数、家の広さや屋根の面積、消費の形態・・。

また、地域によって降雨量も異なる。しかも、降水は年間を通して一定ではなく、季節ごとに推移する。何十年かに一度、極端に渇水する異常気象もありえる。

ただし、そういった個々の「条件」によって左右されるとはいえ、その世帯の需要がはっきりしていれば、基本的にそれをややオーバーする供給体制を作ればいい。とくに新築ならばそれが比較的容易である。そうやって余裕を持って取り組むのがよい。

エネルギー(電力)さえあれば、とりあえず、飲み水に困ることはない。である以上、決定的に深刻な事態にはならない。だから、雨の少ない日が続いて生活用水が不足すれば、風呂屋や温泉にでも行くか、くらいの気持ちでいてもいいのではないか。あと、「1㎥いくら」という有料給水車を活用する方法もある。あくまで非常手段だが・・。

それに、上に例示したように、電力も自給自足可能なシステムにすれば、大地震などで断水や停電しても、我が家だけは水にも電力にも困ることがない。つまり、万一の際の保険にもなる。これからの時代、この安心感のメリットは大きいのではないか。

ちなみに、以上はあくまで水自立にプライオリティを置いたアイデアであることに留意してほしい。つまり、経済的に妥当な選択か否かは保証しかねる。はっきり言って、将来、外資の「水メジャー」がコストを吹っかけてきたとして、それよりも経済的とはまったく限らないのである。ただし、経済性は二の次とはいえ、これだけは言える。

仮にエネルギーと水が自給できれば、可住地がぐっと拡大する!

公道にさえアクセスできる土地であれば、全国どこにでも家を建てられるようになるだろう。むろん、買い物は不便だが、例の「ポツンと一軒家」も不可能ではないのだ。

付記 役所は防災強化を急ぐべし

ところで、これ(下)は急いだほうがいいぜよ。

どーも嫌な予感がする。

役所は水と電力を半自給できるようにすべき
先日、巨大地震が近いんじゃないか、という記事を書きました。 新燃岳の爆発的噴火がかなりヤバい件【巨大地震の前触れか?】 過去の地震関連記事を集めてみた こういった大規模災害時に、対策・復興の拠点となるのが役所です。 とくに市役所や町村役場な...

(前略)今のうちに、各地の市役所や町村役場に、太陽光発電と雨水タンクを組み合わせたシステムを整備していくことは、非常に有効な災害対策になると思います。

また、公用車もどんどんEVに交換していけばいい。役所の地域活動には車が欠かせませんが、内燃車だと、非常用発電機の燃料切れと同じ問題が起きる。

太陽光パネルと普通充電器、EVさえあれば、役所は機能し続けることができます。しかも、この種の設備投資は、浮いた電気代でかなり償却可能なはずです。(後略)

こういうのはね、市長町長レベルで、あるいは役所の部長レベルで、「よし、すぐやろう!」と決断するもんじゃ。「国土強靭化」だけが防災ではない。

もっと知恵を使おうぜ、知恵を!

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