スポンサーリンク

宇宙エレベータ建設が日本の未来を切り開く

画像:大林組

今回も宇宙エレベータ関連だが、より踏み込んでみたい。

今、この国が斜陽に向かっていることを多くの人が実感していると思う。少子高齢化、財政の逼迫、エネルギー問題、貿易収支の赤字化、予想される巨大震災…。たしかに、日本を取り巻く現実は、マイナス材料に満ちている。そのせいか、日本人全体が守りに入り、最重要課題が「老後の保障の辻褄あわせ」という有様だ。

むろん、大事な問題ではあるが、減っていくパイの分け前を巡って同胞同士で言い争っている姿は虚しい。こんな時に、かのケネディ大統領が颯爽と現れて、国民に向かって「We choose go to the moon!」と力強く演説してくれたら、どれだけ勇気付けられるだろうか。

スポンサーリンク
スポンサーリンク

日本の新しい夢としてふさわしい宇宙開発

むろん、今の日本に必要なのは、アポロ計画のように、ただ国家の威信のために予算を食い潰す事業ではない。国家的な収入に繋がる何らかの事業である必要がある。ただし、石油掘削のように、他者の模倣や後追いでは、大きな収益は望めない。よって、「何か新しいこと」を始める必要がある。つまりは、国家としてのベンチャービジネスである。

実際、いったん斜陽化した国家は、もはや常識的な手法では立ち直れない。国家として「誰もやっていないこと」をやる…つまりは“イノベーション”によって国難を突破する以外に方法はない。当然、ハイリスクだが、ハイリターンでもある。だが、具体的にどんな事業がふさわしいのだろうか。

ヒントを求めて歴史を紐解くと、ふと一例が目に留まる。香辛料を手に入れるためにイスラム商人を介さない航路を探し求めた大航海事業だ。15世紀にエンリケ王子は次々と船団を派遣した。彼の死後、ポルトガルは喜望峰を回ることに成功し、新たなルートを開拓した。もしかして、これがその後のイスラム世界とヨーロッパ世界の命運を別けたのかもしれない。ポルトガルがこの事業に乗り出さなければ、ヨーロッパがどんな歴史を辿っていたかを想像すると面白い。少なくとも今のような繁栄はなかっただろう。

この事例を現代のわれわれにそっくり当てはめてみると、どうなるだろうか。「宇宙進出のための新たなルートの開拓」という事業がもっとも近似していないだろうか。実際、今の化学ロケットでは、旅客・物資の大量輸送は永遠に実現しない。しかし、地球の人口が急増し、資源やエネルギーが逼迫しつつある今、宇宙への大量進出のニーズは高まる一方だ。

それに応える方法として期待され、科学者によって研究されているのが「宇宙エレベータ」の建設である。これを完成させた時、「宇宙大航海時代」の幕が本格的に開けるかもしれない。そして始めに成し遂げた国家は、栄光と莫大な先行者利益を得られるに違いない。

おそらく、成功の暁にはリターンは何十、何百倍にもなり、日本の斜陽化の流れを一気に上向かせるに違いない。しかも、下で述べるが、資金は出したい人だけが出せばいい。税金でやるのではなく、夢にチップを張りたい人だけが張る仕組みを考えればよい。失敗しても、たかだか数兆円の損失だ。日本人のもつ余剰資産からすると、ビクともしない。

むろん、夢を思い描くのは勝手だ。問題は「実現できるのか、具体的にどうやるのか」である。それが伴わなければ単なる妄想でしかない。そこで、私なりに考えてみた。

おそらく、簡単に作れるのなら、他の国家や世界的なゼネコンがとっくに手をつけているだろう。では、困難な理由は何か? 宇宙ステーションや地上基地は、今の技術でも十分、建設可能である。ネックはエレベータの核となるケーブルの製法だ。

それ以外にも、政府のビジョン力・予算などの国力・国民の関心といった要素がある。

後者は今後の課題として、あくまでテクニカルに限れば、この勝負は「先にケーブルを開発し、ミニチュア版の実証基を作ってノウハウを蓄積したものが勝つ」と、私は睨んだ。鍵を握るのが、鋼鉄の20倍の強度をもつというカーボンナノチューブの製造技術である。こういった高機能繊維は日本企業のお家芸であり、繊維メーカーは世界に先駆けて次々とハイテク繊維を開発してきた実績がある。

宇宙開発も日本が今一番「ツイている」分野だ。次々と独創的な開発やミッションを実施できるまでになっている。たとえば、月面をハイビジョン撮影した「かぐや」、小惑星イトカワからのサンプルリターンを果たした探査機「はやぶさ」、世界水準の大型ロケットH2Bの成功、スペースシャトル引退後に国際宇宙ステーションへの物資輸送の主力となる補給機「HTV」の開発、太陽電池も兼ねた帆を広げて宇宙空間を航行した「IKAROS」等など。このように、今や欧米の後追いではなく、イノベーションにも成功している。

私は「勝算はある」と思う。たしかに、博打に等しい事業かもしれない。しかし、もはや常識的な対策では、少子高齢化時代の日本を支えられないのも事実だ。乗るか反るかの一発逆転を目指す価値はある。日本人が先頭に立って「宇宙大航海時代」を切り開くのだという気概、われわれにできなければ世界の誰にもできないという矜持でもって、今すぐプロジェクトに取り掛かかろう。私も微力ながら少しでも知恵を出して協力したい。

大林組版の宇宙エレベータ構想

あるモノを世の中に具現化するためには、まずできるだけ具体的にイメージすることが重要であると言われている。その一例としてふさわしいのが大林組の構想だ。

それによると、全体の長さが9万6千キロで、地球二周り以上もある。静止軌道上のステーションが約3万6千キロ上空なので、そこからさらに6万キロ分も反対側にケーブルが延びている計算になる。これはカウンターウエイトのためだ。

静止軌道上からケーブルを吊るすと、どうしてもその重力でステーションが地表側に引き寄せられる。それを防ぐためには、遠心力側にもケーブルを延ばす必要がある。例えるなら、立っている人の腕を片方からのみ引っ張ると倒れてしまうため、反対側からも腕を引っ張ってバランスを保つのと同じだ。ただし、そのせいで静止軌道上前後のケーブルは猛烈な引っ張りにさらされる。

これに耐えられる強度をもつのがカーボンナノチューブ製のケーブル(又はテザーTether=紐ともいう)と言われている。大林組はまた同軌道上前後のケーブルを太くし、両端へいくほど細くすることで、ケーブルにかかる力を均一にする方法を提案している。

このようなケーブルの各要所に施設を建設することで、一個の宇宙エレベータとして機能する。もっとも重要な施設は三つある。一つは「始発駅」に当たる地表側のアースポートで、同社はケーブルの張力調節等の理由から、洋上プラットホームを想定している。

もう一つは静止軌道上のステーションで、モジュールを次々と組み合わせて増減設できるユニット方式を提案している。ここには5×10キロの巨大な宇宙太陽光発電所も付随する。最後の一つはステーションからさらに6万キロ先のカウンターウエイトで、そのスウイング力から木星などを目指す太陽系資源採掘ゲートが設置される。

この三つの巨大施設の間に、上から火星連絡ゲート、低軌道衛星投入ゲート、月重力センター、火星重力センターなどの小施設が設けられる。

大林組の「季刊大林」は、以上の施工期間を25年間とし、50年度竣工予定で、施工ステップと構造計算の数値等を、実に事細かに算定している。これは同社のサイトにも未掲載のため、詳細を知りたい方は季刊誌を取り寄せてもらうしかない。

宇宙エレベータ建設プロジェクトをどう進めるか?

さて、私は大林組版の宇宙エレベータ構想にすべて賛成しているわけではない。とくに規模が小さすぎるのが気にかかる。おそらく、宇宙エレベータが完成すれば、世界中から人とモノが押し寄せる。この需要に応えるためにも、またリスク分散のためにも、あらかじめケーブルをどんどん増設できるようなキャパシティのある設計にすべきだと思う。その他にも気になる点が多々あるが、とりあえず大林組バージョンに類する施設を叩き台として、プランを前倒しすることにして、ここは前に進むとしよう。

第一に、いかなる計画であれ不可欠なのは施主および予算である。施主は当然、日本政府と言いたいところだが、どうせ今の政治家や官僚はリスクや責任を恐れる。よって、もし彼らが計画に積極的になるとしたら、自らに役得があり、失敗の暁にも政府を巻き込まず、責任もとらなくてよい独立行政法人や第三セクターなどの形態になるだろう。開通後に大きな成功を収めれば「省庁に昇格を」というムシのよい流れになるかもしれないが、当初の責任主体は、いつでも切り捨てられる中途半端な存在になりそうだ。もっとも、そのほうが冒険的な事業を思い切ってやれるので、かえっていいかもしれない。

ところで、大林組の施工計画は明確なのだが、建設費がはっきりしない。おそらく、不明な部分が多すぎるからだろう。研究開発段階のコストも含めて、莫大となることは想像に難くない。他の研究機関が発表している建設費等も参考にすると、とりあえず予算として大雑把に「数兆円」は不可欠だと思われる。問題はこれをどうやって調達するかである。バブル期ならともかく、一般会計から本格的な予算を引っ張ってくることは、ほとんど無理だ。高レベル放射性廃棄物の根本的解決策の確立という名目ならば、いくばくかの予算は出るかもしれない。だが、それとてせいぜい数十、数百億円というレベルだろう。

そこで私は公債発行を提案したい。たとえば「宇宙開発債」である。ただ、それだけではつまらないので、「宇宙旅行招待キップ」や「優先キップ」も付ける。施工期間が長いので、自分の代で行けないなら子孫に譲ればいい。投資としてより魅力が増すよう、様々な成功報酬などのリターンも別途用意する。仮に数兆円集まれば事業をスタートできるが、一定期間内に予定の金額が集まらなければ返却するほかない。しかし、私は意外にも、あっという間に集まるのではないかと楽観している。たしかに、人々が夢を託したくなるような広報やマスメディアの喧伝、投資意欲を喚起するビジネスモデルの構築などが、資金集めに果たす役割も大きいだろう。だが、それ以上に、大勢の日本人がまだ「夢を見る」ことを忘れていないと思う。いや、「見たい」に違いない。資金はそんな「夢に賭けたい」という人だけが出せばいい。つまり、人々の希望こそがプロジェクトの“財源”だ。

第二に、建設地を選定しなければならない。唐突だが、地球が自転していることを思い起こしてほしい。すると、もっとも建設に適した土地が赤道直下であることが分かる。始発点は洋上プラットホームよりも、できれば島のほうがいい。というのも、エレベータ開通後には一大交易拠点へと成長し、瞬く間に都市化すると思われるからだ。当然、大掛かりな空港や港の整備も必要になる。ポート自体は海岸にあってもいいが、将来の発展を想えば、どうしても広大な土地が必要だ。

私はインドネシアの島を丸ごと買い取るか、又は期限付きで借りることを提案したい。なぜ私がインドネシアを推奨するのか。その答えは、同国が単に赤道直下にたくさんの島を抱えているだけではない。同国が極めて友好的・親日的な国であり、しかもそのポテンシャルからして、数十年後には大国の仲間入りを果たすと予想するからである。あるいは、われわれが国策として同国の大国化に力を貸せばいい。周辺陸海域の安全確保と、中豪をけん制する役割を立派に担ってくれるだろう。

ところで、なぜそれが重要条件かというと、エレベータ開通の暁には「安全保障」が最優先課題になるからである。エレベータのケーブルは攻撃や衝突事故に対して脆弱だ。飛行機で突っ込まれただけで、終わりである。つまり、どうしてもボディガードが必要なのだ。開通に合わせて自前の迎撃システムを持つことはむろんだが、一番いいのは軍隊で守ることである。その点、インドネシア領内にあり、かつ同国政府と国民にも利益を還元するなら、インドネシア空軍が喜んでその任に当たってくれるだろう。要は、エレベータの拠点がインドネシア領内にあることで、自然と同国の空軍力をレンタルする形になるのだ。むろん、選定に当たっては、地震・津波・火山の噴火などの自然災害や地政学的条件等も考慮しなければならないが、それ以上に大切なのはこの安全保障である。

第三に、施工請負企業だが、これは当の大林組にやってもらえばいいだろう。ただ、同社が元請だとしても、実態としては「日本企業連合」になりそうだ。

今言ったように、鍵を握るのはカーボンナノチューブ(CNT)製のケーブルの開発である。いかにして、遠心力と重力の猛烈な引っ張りに耐えられる丈夫なそれを作るか。これがキーテクノロジーとなる。これ以外のほとんどは、今ある技術の応用や発展ですむ。現在、CNTの大量生産は可能になったが、それはふわふわした綿状のものだ。これで切れ目のない均質なリボンを織る、テープ状のモノを作る、といった技術を確立しなければならない。ここでこそ、高機能繊維の開発で常に世界をリードしてきた日本の繊維産業の出番である。だいたい、CNT自体、日本人科学者が発見したものだ。ちなみに、CNT関連の技術は、今の段階から企業秘密以上に国家機密とするくらいの慎重さがほしい。

ところで、大林組の施工ステップには「実証基」という発想がない。これは建設業界だからかもしれないが、この計画はいきなり本番を始めたら失敗するのではないか。というのも、ロケット開発の歴史を見ても分かるように、未知の分野では想定外の出来事が次々と降りかかるからだ。通常の建設事業とは違い、「実際にやってみなければ分からない」ことが多すぎるのである。素人が開発プロセスに口を出すべきではないのは百も承知だが、やはり最初はミニチュア版を作って、失敗を重ねてみるべきではないだろうか。その試行錯誤の連続から新たな発見も生まれ、ノウハウも蓄積されていくと思う。それに、ミニチュア版を本番用の建設過程に取り込めばいい。商用ケーブルを渡したり、建設資材などを宇宙に運んだりといった作業に真価を発揮するに違いない。

2012年03月16日「アゴラ」掲載

スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク

シェアする

フォローする

スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク