米朝首脳会談をめぐる両国の駆け引き【よく分かる解説・前半】

外交・安全保障
なんか違うけど、まあいいか。どうせ現実もギャグと変わらん。




みなさん、こんにちは。

朝鮮半島情勢が目まぐるしく動いています。

米朝首脳会談を中止すると言ったり、またやると言ったり、さらには二度目の南北首脳会談が“電撃的”に行われたり・・。

少し混乱している人もいるかもしれない。

私のほうで、分かり易いように時系列でまとめてみました。



「9・11制裁」という始まり

これまでの経緯を簡単に説明するには、ここから遡るのがよいかと。

2017年9月11日、核実験や弾道ミサイル実験を繰り返す北朝鮮に対して、日米が各国を説得し、輸出収入を9割断つ国連安保理決議が採択されました。

この「9・11制裁」こそ本格的な「兵糧攻め」の開始でした。

私はここから「広義の戦争」が始まったと、当時から主張しています。

しかも、この経済制裁は「国際社会の総意」という政治的正当性を有します。現在の米国の対北戦略的優位は、実にここから形作られたわけです。

以後、北朝鮮は石炭や海産物の輸出、繊維製品の受注、労働者の派遣などによる従来の外貨収入が激減し、失業率が急増。核・ミサイル実験の予算にも影響が出始めた。

米国はその後も追加制裁で石油製品の輸入を制限し、違反の中国企業を罰したり、「瀬取り」を取り締まったりして地道に抜け道も潰していきました。

ただ、トランプ政権は、制裁の一方で「核放棄するなら首脳会談に応じてやる」と提案し続けてきました。こうやって常に対話の窓口は開けてきたわけです。

それでも、北朝鮮は長い間、強気の姿勢を見せてきた。しかし、史上最強と言われる制裁下で冬を越し、栄養失調や餓死者が出ているとも報告されるようになる。

核・ミサイル開発を放棄しない限り、経済制裁によるジリ貧が続くわけです。北朝鮮の中枢に近かった亡命者からは「二年もたない」という話まで出ていた。

3月に入って事態が急変、4月末の南北首脳会談まで

かくして、年が明け、2018年。変化の兆しが現れる。1月1日、金正恩は「新年の辞」で「平昌冬季五輪に代表団を派遣する用意がある」と表明。その後、南北閣僚級会談が実施され、北朝鮮の平昌オリンピック(2月9日~25日)参加が決定しました。

溺れるものは藁(韓国)をも掴む・・というわけで、北朝鮮は「南北は同じ民族」という宥和ムードを演出し、まずは韓国を取り込むことに尽力します。

そして、「9・11制裁」から半年ほど経った3月、大きな転機が訪れる。

韓国が米朝対話を取り持つために動きました(というより北に動かされた?)。

3月5日、金正恩と韓国の特別使節団が会談。4月下旬の南北首脳会談が決定。そして金正恩は韓国を挟む形で「米国と対話する用意がある」と表明しました。

文在寅大統領が自らしゃしゃり出てきたのか、仲介役を命令されたのか分かりませんが、トランプも「金正恩と会う」と即答。この時は「5月末までに」という話でした。

韓国はトランプ大統領の下にも特使を派遣します。

ちなみに、私はこの時に書いた記事で、「韓国が北朝鮮と米国の両方に対して調子のいいことを言ったんじゃないか」として、「伝言ゲーム」の危うさを指摘しました。

どうやら「話を盛った疑惑」は事実だったようだ。5月の後半に入ると、韓国(の文政権)は、トランプ政権と北朝鮮の両方から「話が違うじゃないか」というふうに叱られている。とくに北朝鮮からは「無知で無能な集団」とまで罵られている。

ところで、3月に半島情勢に影響を与える非常に重要な出来事が起こります。

・3月17日、中国の全人代が、任期制を排して、習近平を国家主席に再選。

・3月22日、トランプ政権が、史上最大600億ドル規模の対中制裁措置の発動を決定。中身は制裁関税や中国企業の対米投資の制限など。中国も対米報復を決定。

・3月26日から27日、金正恩が初訪中。習近平に恭順の意を示す。中国側も最高レベルの国賓待遇でもてなし、中朝関係の一挙改善を内外にアピールする。

以上、3つの出来事が集中したこの10日間は、いわばターニングポイントです。私に言わせれば、これ以降、またゲームの条件が変わった。

付け加えるなら、3月22日に、同時にジョン・ボルトンが国家安全保障担当補佐官に抜擢された人事も注目に値する。この職務は戦時の参謀でもあるんですね。

さて、この時はまだ南北の対話路線・融和ムードが上昇している頃であり、しかも米中の両大国が朝鮮半島の平和現出に同期しているかのように思われた。

4月27日の南北首脳会談では、それが絶頂に達する。金正恩は板門店で絶妙な演技を見せて、とくに韓国国民の気持ちを鷲づかみにした。

一連の表層の動きを見て、日本国内でも、リベラル系のメディアや識者が鬼の首でも取ったように、一斉に「蚊帳の外」論だの、「外交敗北」論だのを吹聴していた。

対して、私は、むしろこれは「安倍外交の戦略的勝利の結果であり、板門店会談は世紀の欺瞞として記憶されることになる」と、逆のことを力説しましたが。

さて、この辺りからマイク・ポンペオ国務長官が北朝鮮入りし、本格的な米朝の事前協議が開始されます。そして5月に入りました。ここから面白くなってくる。

(後半へ続く)

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