影の政府の内部事情とキッシンジャー・リターンズ、そしてレーガンの再来トランプ Henry Kissinger Returns

中国・アジア
出典:Council on International Educational Exchange




軍事タカ派とユダヤ金融と国内優先派の連合体であるトランプ政権は、こと対外政策においては、対ロを除いて極めて強硬です。この点で「ネオコンの再来」なら、対ユーラシア外交ではキッシンジャー本人の再登場という点が、まことに興味深い。



影の政府内部で“修正派”が台頭した経緯

現在の「西側VS中ロ」の関係、つまり「新冷戦」は2005~6年からスタートしています。「影の政府」は冷戦末期、次のポスト冷戦時代を見据えた大戦略を立てましたが、中ロが事実上の同盟を組んで対抗してきた事態に対する修正を強いられました。よって、現在はその大戦略の修正バージョン「2005年(ないし6年)路線」に沿っています。

つまり、中ロの仮想敵国化はすでにこの頃から始まっているんですね。そして、2013年から14年にかけて、世界各地で大戦の火種が作られました。それに連動し、対中路線も2015年から一段と強硬になった印象です。この頃はまだ「中ロはまとめて片付けられる」という自信というか、驕りが世界支配層の中で支配的だったようです。

しかし、どうやら彼らの内部で段々と懐疑的な見方が頭をもたげてきたらしい。

というのも、ロシアが意外なほど挑発に乗らない。西側の陰湿な対ロ制裁の連続で、プーチンは激おこプンプンしてばかりですが、今NATO軍と正面から戦えば負けると分っているので、じっと我慢の子です。プーチンのほうが、役者が上です。

しかも、中国経済も意外と足腰が強い。その上、毎年ニ桁の軍拡を行い、急速に兵器の近代化を進め、南シナ海だけでなく西太平洋まで視野に入れ始めた。

このように、とりわけ中国があまりに強大化してきたせいで、手にあまり始めた。影の政府の中から「中ロを同時に敵に回すのはまずい」という意見が出てきても当然です。それが昨年あたりから「修正派」として台頭してきたのでしょう。しかも、それは、「ロシア打倒のためには核戦争も辞さない」とする強硬派に対して、「そこまでせずとも内部から切り崩せばよい」とする“穏健派”であったのかもしれません。

もしかすると、キッシンジャー本人がそうだったのでしょうか。影の政府は長老支配的なところがあるので、今では90代半ばのヘンリー・キッシンジャーと、百歳越えのデビッド・ロックフェラーがサークルトップに位置することは間違いありません。ただし、引退制があるようなので、あくまでOBの立場でしょうが・・。

トランプのバックにいるのは「中ロ各個撃破派」である

いずれにしても、影の政府の内部で、「中ロを分断した上で各個撃破すべきだ」という修正派が台頭してきた。しかも、核戦争がハイリスクなので、今度は中ロを入れ替えて、中国にはハード路線、ロシアにはソフト路線を適用するのがよい、と。

影の政府が合議制である以上、この「修正案」か、それとも従来の「中ロ一括処分案」か、どちらにすべきかという諍いが生じるのは仕方がないことです。彼らはこういう「路線対立」を昔からやってきた。しかし、言ったように、それは彼らが「政府」である以上、当たり前の出来事であり、せいぜい「社内の争い」にすぎません。

むしろ、こんなふうに状況に応じて姿勢を変化する柔軟性があるからこそ、400年にもわたってユダヤ・プロテスタント連合が継続してきたともいえる。

つまり、「17年度からどちら方針を採用すべきか」という、そういう彼らの対立が反映されたのが、今回の米大統領選だったのではないかと思われます。

修正派から「レーガンの再来」であることを期待されたトランプ候補

影の政府の修正派が、当初からトランプが大統領になることを想定していたか否かは分かりません。ただ、トランプが共和党候補の中で頭ひとつ飛びぬけたあたりで、「トランプが優勢というなら、この男を利用しようではないか」というアイデアが出てきたとしても不思議ではありません。なにしろ彼らほどの現実主義者はいません。

しかも、事前のトランプの“身体検査”で、彼がロシアの諜報機関に弱みを握られているなどの、ロシアに対しては強硬には出辛い事情があることも分ってきた。これはMI6発ですから、かなり信憑性が高い情報です。そこで、どうするか・・・「そうだ、先に中国をやってしまおう!」というわけです。つまり、かつてのレーガンの役割を、今度は標的を中国に変えて、トランプにやらせればいいじゃないか、と。

見方を変えれば、ロシアが敵であることには代わりはないわけです。中ロを分断するということは、表面的にはどちらかに協調的・友好的に振舞わねばならないということでもあります。7~80代は中国、それが今回はロシアということです。

要は、「中ロ一括処分派」であろうが、「中ロ分断各個撃破派」だろうが、目的は同じなわけです。いったんロシアと和解するのは、平たく言えば演技であり、騙すためです。こうして内部の“民主化”によって、ロシアを内側から切り崩していく。

他方、中国に対しては、かつてレーガンがソ連に対してそうしたように、「悪の帝国」の烙印を押す。そのための大統領として、彼らはトランプを推したのです。

そして、2017年1月20日、トランプが大統領に就任しました。トランプはそれまで個人として中国を非難していましたが、ついに報道官を通して「政権」としても、中国による南シナ海の人工島建設を阻止すると明言するようになりました。

(次回、キッシンジャー関連記事の流れで、「誰も語らなかった田中角栄がロックフェラーに潰された本当の理由」について触れます。)

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