さて、「やっぱり」と思えるニュースが飛び込んできた。
【米政権交代】クリントン氏追及しないトランプ氏に保守派反発 2016.11.23
【米政権交代】クリントン氏追及しないトランプ氏に保守派反発 - BBCニュースドナルド・トランプ米次期大統領が、民主党候補だったヒラリー・クリントン氏の国務長官時代のメール問題について追及しないと発言したことから、トランプ氏の支持者たちが「裏切り」、「約束が違う」などと強く反発している。ドナルド・トランプ米次期大統領が、民主党候補だったヒラリー・クリントン氏の国務長官時代のメール問題について追及しないと発言したことから、トランプ氏の支持者たちが「裏切りだ」、「約束が違う」などと強く反発している。(略)広報担当のケリーアン・コンウェイ氏は22日、民主党大統領候補だったヒラリー・クリントン氏の国務長官時代のメール問題を追及していくという選挙公約について、追及するつもりはないと述べた。またトランプ氏自身も同日、米紙ニューヨーク・タイムズに対して、「前に進みたい。後退したくない」、「クリントン一家を傷つけたくないんだ。本当にそんなことしたくない。彼女は大変な思いをしてきたし、いろいろな形でとても苦しんできた」と話したという。(略)トランプ氏はさらに同日、ニューヨーク・タイムズ紙に対して、自分を支持する「alt-right(オルタナ右翼)」運動を非難した。
これで、トランプを反グローバリズムの旗手であるかのように持ち上げていた人々は、俗にいう「二階に上がって梯子を外される」格好になったわけだ。しかも、まだトランプが大統領に就任してもいないうちから。トランプ側の演説集会では、「彼女を刑務所にぶちこめ!」(Lock her up!)の大合唱が盛んだったが、この分だと、どうやらトランプ大統領の下でぶち込まれるのはアメリカ右翼のほうになりそうだ。
私は11月11日の記事で、
この選挙は、最初からどっちに転んでもユダヤの丸儲けではないか。私たちはつい「共和党VS民主党」とか、「グローバリズムVS反グローバリズム」といった二元対立構造に目を奪われがちです。しかし、見方を変えれば、それは誰かの作った「価値観のフレーム」の中に私たちの思考が捕らわれた状態にも例えられる。
と書いたが、今回の選挙は、要は「飛車を使うか、角を使うか」という黒幕内部の揉め事のようなもので、どちらも彼らのコマである事実に変わりないのではないか。
もっと早くに書けばよかったが、トランプの話で明確におかしい点があった。それは悪が常にヒラリーとクリントン財団のレベルに矮小化されていることだ。
これまでトランプは、さもアメリカの背後にいる国際勢力を追求するかのように印象付けながら、実際には「悪の本丸」への言及を巧妙に避け続けていた。そして、そのパシリの、そのまたパシリ程度の存在にすぎないヒラリーとクリントン財団だけを叩いていた。
だが、トランプが本当に「ISを操っている黒幕」や「9.11テロの背後にいる黒幕」を追及するはずがないのだ。なぜなら、どちらの背後にいるのもイスラエルだからである。
そしてそのイスラエルを偏愛し、事実上のシオニストといえるのがトランプだ。
だから、ドナルド・トランプが巨悪を追及することなど、最初からありえないのだ。
それは巧妙なアメリカ民族主義のガス抜きの仕掛けだった
私たちは教科書的な世界史で、ヴェルサイユ体制の産物である国際連盟について、「アメリカのウィルソンが提唱しながら、米議会の猛反対にあって、当のアメリカが参加しなかった」とだけ知っている。しかし、これでは何も理解していないのと同じだ。
おそらく、1920年に国際連盟が発足した直後のアメリカ人の(地のインテリたちの)感情は、現在のそれとよく似ている。
当時の彼らは、1913年の連邦準備制度(FRB)の設立と1917年の第一次大戦参戦の件で、「まんまと国際銀行家の勢力に騙された」と気づき、猛烈に憤慨していた。
後者の件は、1915年の「リメンバー・ルシタニア」という口実が使われたが、実際には英仏側への莫大な貸し付けが真の動機だった。金融資本が英仏という国家に何十億ドルも貸し付けて、英仏はその資金でアメリカから軍需物資を買い付けていた。
ちなみに、日本もその特需の恩恵を受けていたことはご存知の通りである。当然、英仏が敗北したら、債権が焦げ付く。だから、金融資本にしてみれば、貸した金を回収するためにも、絶対に英仏が勝たねばならなかったのである。
しかも、話し出すとキリがないが、彼らはドイツで革命を起こし、最初の共産主義国家に改造する計画も立てていた。だから、あらゆる意味で英仏が勝ち、ドイツが敗戦しなければならなかったのである。
こうして、彼らは無理やりアメリカの参戦へ持っていった。しかも、ヴェルサイユ体制下で国際連盟が誕生したわけが、フタをあければ見れば、幹部職は国際銀行家の関係者のユダヤ人で占められていた。それで「地のアメリカ人」である議員たちが怒って、トーマス・ウッドロウ・ウィルソンを吊るし上げ、連盟参加を潰してしまったのだ。
その後、1929年に世界恐慌が発生すると、彼らはまた同じ国際銀行家たちが大儲けした事実を知って、今度は猛烈にモルガンを吊るし上げたのである。
ちなみに、この四つの出来事にすべて関与していたのが、ハンブルクの宮廷ユダヤ人の家系であるポール・ウォーバーグだが、わき道に反れるので機を改めよう。
要は、この時と類似した反グローバリズムの怒りの感情が、またアメリカで噴出しているのである。で、国際勢力はその時、自分たちが吊るし上げられた苦い経験があるから、何らかの手を打たなければならなかった。
実は、それがトランプたちによるクリントン攻撃だったのではないか。
本当はパシリの、そのまたパシリ程度の存在なのに、うまく巨悪に仕立て上げる。すべてクリントンのせいにする。そして、大衆の怒りの矛先をクリントンとその取り巻きに向ける。それによって本当の黒幕は難を免れるという寸法だ。
つまり、彼女は「避雷針役」であり、大衆のガス抜きのための「生贄」なのである。
しかも、トランプは、選挙が終わってみると、そのクリントンすら本気で追及する気はないようだ。仮にアメリカ民族主義者たちが怒ったとしても、その矛先は今度はトランプのほうにいく。まるでピンボールゲームのように両者の間を行ったりきたりする。大衆の注意がそこに引き付けられれば、それだけ黒幕も安泰というわけだ。
ザハロワ発言の真意とトランプ幻想の崩壊
さて、これでプーチンが、外務省報道官のマリア・ザハロワの私的発言という形で、トランプ勝利は「ユダヤのおかげ」と事実上公式発表したワケも浮かび上がってきた。
これは黒幕に対する次のようなメッセージだったのである。
「われわれは、クリントンとトランプのどちらの背後にも『おまえたち(ユダヤ)』がいることを知っているし、これからもしっかり監視していくぞ」
私が「やっぱりプーチンは知っていたのか!」と驚き、感心したのが、2013年1月13日に彼が行った演説だ。プーチンは居並ぶユダヤの有力者の前でこう言ったのだ。
「最初のソ連政府メンバーの80~85%はユダヤ人だった」
さすがプーチンはKGB出身だけあって、本当のことを全部知っているのだ。
いずれにしても、これで「トランプが影の権力に対して立ち上がった」というヒロイックなトランプ観は完全に崩壊したと言えるのではないか。
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