みなさん、こんにちは。
韓国の反日については熟知しているつもりの私でも、最近の暴走ぶりには首を傾げざるをえないものがあります。
安倍総理の米議会演説が終了した後、案の定、朴槿恵氏は「隣国の信頼を強化できる機会を生かせなかった」と非難しました。また、日本が明治の産業革命遺産を世界文化遺産に登録しようとすると、「世界遺産条約の精神に背き、国家間の不必要な対立を招く」などと非難し、日本の申請を認めないよう、ユネスコの事務局長に直訴しました。
そして、韓国国会はなんと「反省のない安倍糾弾決議案」なるものを採択。ここまでやるともう、2012年8月の李明博氏による「竹島上陸挑発事件」に次ぐ、二度目の「対日宣戦布告まがい行為」と受け取られても仕方がない面があります。
さて、そんな最近の韓国の動きについて、感心するほど上手にまとめておられる方が二人ほどいましたので、この場を借りて紹介させていただきたいと思います。
まずはお一人目。NHKはさして報じていませんでしたが、その安倍総理の米議会での演説に対して、韓国は凄まじい妨害活動を行っていました。
そこのところをうまくまとめたのが、日本経済新聞社編集委員の鈴置高史氏の『「アベの米議会演説阻止」で自爆した韓国』だと思います(以下、表はリンク先からの転載)。
とまあ、実に執拗な働きかけをしていたわけです。いやはや、凄まじい執念と言わざるをえません。鈴置氏はこう言います。
普通の人が加盟する在米韓国人団体から、外務省、国会議長、はては朴槿恵大統領までオール韓国の体制を組んで「アベの演説」に横やりを入れてきました。あたかもジハード――民族の尊厳をかけた「聖戦」のようでした。
“オール韓国”というと、ほとんど総力戦ですね。「反日=宗教」説は以前からありましたから、「反日=ジハード」説も少しも不思議ではありません。
ご承知の通り、この目論見は頓挫しました。韓国人としては執念(怨念?)をかけて工作していただけに、今「アメリカに裏切られた!」感が充満しているそうな。
彼らの現在の気持ちを察すると、次のような感じでしょうか。
「宗主国様が……彼が親日だったなんて……そんなの嘘だ! 裏切ったな……ウリの気持ちを裏切ったな! 日帝と同じに、裏切ったんだ!」
というわけで、今後は唯一まともに相手してくれる中国へと益々傾斜していく、という予想がウォッチャーの間では多いようです。中国側も政府外の者に提案させるという形で「中韓同盟」のアドバルーンを打ち上げ始めました。思えば、朴槿恵政権が始まってから、日韓スワップ終了(中韓スワップへ代替)、日本の集団的自衛権に反対、THAAD(終末高高度防衛ミサイル)不参加、AIIB加盟……と来たわけですから、これは必然的な帰結なのかもしれません。
「こんな国と親しくなりたい国があるだろうか?」
次はもう一人の方です。
どうやら、そんな自分たちの対日姿勢のアブノーマルさについて、韓国人の中にもちゃんと自覚している人もいるようです。たとえば、数々のスクープをものにした元「朝鮮日報」記者で、「月刊朝鮮」編集長も務めた趙甲濟(チョ・ガプジェ)氏が主宰するサイトの会員で、最近、論客として台頭している「バンダービルド」氏。この俊逸なる人物を発掘し、頻繁に日本の読者に紹介しているのが「みずきの女子知韓宣言」さんです。
彼の論理力は往時のキム・ワンソブ氏を偲ばせるほどのキレで、私も思わず膝を打つことがしばしば。同氏は「こんな国と親しくなりたい国があるだろうか?」と題して以下の文章を寄せています。
¶互いに合意してもいない自己中心的な過去の歴史を提示して、無条件にそれに合わせて謝罪するよう求めてくる国。それで、譲歩次元で謝罪したら、定期的に謝罪を求めてくる国。既に謝罪したというと、全世界を駆けずり回って、手段や方法を選ばず、謝罪しろという非難活動に乗り出す国。
¶返却する義務もなかった文化財(朝鮮王朝儀軌)を返しても、お礼の一言も言わない国。
¶緊急な状況で弾薬を貸したところ、お礼を言う代わり、奇妙な理由で非難してくる国。
¶国家元首がその国の言葉で挨拶をしたというのに、無視をする国。
¶教科書が好みに合わないといって非難してくる国。
¶疑惑を提起するレベルの記事について、書いた外信記者を刑事罰で起訴して、長期間出国禁止にする国。
¶盗んだものを奇妙な理由(「略奪ではないという証拠を出すまで」)で返さない国。それとともに、過去の文化財を正式に返さないといって非難してくる国。
¶合法的な隣国の重要なイベントを、一日前に台無しにしておいて、それを痛快に思う国民が大部分の国。
¶ともすると、国際競技の最中に、観客が「歴史を忘れた~」「独島は~」などという国際ルールに反する政治スローガンを掲げて見せて、選手は猿真似をして悪口を言ってくる国。
¶太陽と似たような柄が発見されると、根拠もなく戦犯旗云々と言って、撤去運動を繰り広げる同胞を持った国。
¶気に入らなければ、国会や団体が、なにかと「糾弾決議案」を作って非難してくる国。
¶よく知りもしないくせに、頻繁に「軍国主義」「戦犯国家」「帝国主義の亡霊」などと言いながら非難してくる国。
¶隣国を憎み、憎悪するのはあまりにも当然のことだと考えていて、教育をしている国。
¶憎しみや憎悪に参加しなければ、「親日派」などと言って非難して、時には「生き埋め」にする国…。等
○思いやりが多くて謝罪が上手な「ドイツ」という国を、この国のそばに持ってきたとしたら、1~2年で真っ青になって、内部から国交断絶しようという話が出てくるだろう。(中略)
○この国が隣国からこういう扱いを受けることになった根本的な原因
日本に謝罪などを要求するとき、謝罪を受けたときに日本が得られる利益が、謝罪を拒否した時よりも何か一つでも多くなるということを認識させる必要があった。しかし、そんなことをしなかった。
例)
・相手が謝罪してきたとき、「当然のことだ」と思うだけで、許すことなど考えなかった。
・相手が文化財(儀軌など)を返却してきても、「当然のことだ」と思うだけで、感謝を返そうなどとは思わなかった。
・相手が弾薬を貸してくれたのに、むしろ罵りを返した。
一言でいって、相手が「何かしてあげたことに対するやりがいを全く感じられないようにしたこと」が、現在のような状況を招いた。
以上の日本語訳は「みずきの女子知韓宣言」さんから許可を得てお借りしました。
同サイトでは、上の項目にそれぞれ照合する事例も丁寧にリンクしてあり、バンダービルド氏が決して根拠もなく言っているのではないことが分かります。また、その他のバンダービルド氏の主張も一読に値するものばかりです(*目ざとい出版社が彼にコンタクトをとってほしいと願います)。ぜひとも直接「みずきの女子知韓宣言」さんをご覧ください。
要するに、バンダービルド氏は、本当は韓国こそが日本に対してヘイト・レイシズム・精神的暴力を振るっているのだと、日韓関係悪化の本質をちゃんと見抜いているわけです。これに対して、日本では二種類の間違った反応が存在しています。
一つは、韓国を一切批判しないどころか、何事も擁護し、逆にすべてを日本に責任転嫁する行為です。そのような奴隷的態度は韓国に対する本当の友情ではなく、逆に彼らの悪心を増長させる結果しか生みません。
もう一つは、怒りに身をまかせて攻撃的なカウンター・レイシズムに打って出る行為です。しかし、これは己を貶め、ますます相手の過激化を誘い、最終的にはイスラエル・パレスチナ間のようなヘイトと暴力の応酬へと繋がって、子孫に対して多大な負の遺産を残しかねません。
この二つの反応は、正反対のようでいて、実際は、日韓の相互理解のために何にもならないという意味において、同類のものではないでしょうか(もっとも、もはや相互理解を目指す必要はない、そんな段階は韓国側の執拗な反日によってとっくに頓挫したのだ、という見方もあるでしょうが)。
こういった反日のファナティック化について、「従北左派のせいだ」とする意見や、「日韓どっちもどっち」論なども見ることができます。前者の意見は韓国のネットでしばしば見られます。後者のほうは、一見、公正のようでいて、日韓をさも同罪であるかのように相対化することは、問題の本質からかけ離れている気もします。
また、「民族差別」や「偏狭なナショナリズム」の問題を取り上げる場合、自身を戒めるだけでなく、逆に自分たちがその対象にされた時、どうすればよいのかという視点が欠落しがちに思われます。
最後に、公平を期すためにも、異論も紹介しておきましょう。
たとえば、一水会の鈴木邦男氏は「ソウル大学で、ヘイトスピーチについて話してきた」の中で、日本で「『反中・嫌韓本』がやたらと多い」ことを取り上げ、「そんなものを読んで『気分がスッキリした』と思う人もいるんだ。なさけない」と批判する。
また、韓国が子どもの時から「反日教育」をしている「反日国家」であるという見方に対して実際の韓国は違うと示唆する。そして次のように締めくくる。
日本の本屋には「反韓本」ばかりが並び、政治家は韓国の悪口をいって、「自分こそが愛国者」だと自負している。ヘイトスピーチのデモもある。「国防・安全保障」というのならば、まず近隣諸国と仲よくして、戦争にならないシステムをつくること。それこそが安全保障だと亀井静香さんが新聞で言っていた。その通りだと思う。他国を挑発し、それでもって、「自分は愛国者だ」などと言ってるのは愛国者ではない。最も国を危うくしてるのだ。そのことを感じた。
鈴木氏の主張には、韓国の過ちを指摘するものは一箇所もありません。韓国側の官民挙げての執拗な対日悪罵や挑発を問題視する意見は、あくまで「反韓」の「悪口」であり「愛国者気取り」ということらしい。たまたま鈴木氏の生の声を聞く機会がありましたが、やはり彼は日本側のおかしさばかりをずっと訴え続けていた。
まあ、私からはあえて突っ込みません。私に言えることは、こういった意見も頭から排除すべきではないということです。
それでは。
2015年05月26日「アゴラ」掲載
(再掲時付記:鈴置高史さんと「みずきの女子知韓宣言」さんには、この場を借りて改めてお礼申し上げたいと思います。ちなみにですが、「パンと反日」は、言うまでもなく愚民政治のたとえである「パンとサーカス」にかけています。また、日本に対して、韓国側が民族蔑視のレイシズムに基づき、ヘイトスピーチを繰り返してきたということは、かなり以前から鄭大均氏とオ・ソンファ氏も指摘しています。この行為が、日本に古くからあった朝鮮蔑視を呼び覚まし、カウンター・ヘイトとカウンター・レイシズムへと繋がっていった側面もあるように思われます。)
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