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なぜ打倒北朝鮮こそ“最高の人道支援”なのか?

出典:ユーチューブ「[アジアプレス 北朝鮮内部取材7]映像が記録した90年代飢餓の実情」より

まずは最新ネタから。

報道によると、空母「ニミッツ」が西太平洋に派遣されることになったそうですね。6月1日に米ワシントン州(*西海岸側、シアトルがある)の海軍基地を出港するそうですが、太平洋を横断するだけなので、すぐに日本近海に到達できます。

そこからどうなるかは、まだ不明です。

前々から言っていますが、戦争になった場合、米軍はエアシーバトル主体で行きます。最終的に北朝鮮を制圧するためには地上部隊の投入が不可欠ですが、米軍は韓国軍の戦時作戦統帥権を有しているので、戦時には韓国陸軍を自軍のコマとして使えます。つまり、地上戦の大半は「現地人」にやらせるつもりです。

それが本来は当たり前ですけどね。韓国としても、地上戦で己の血を流さなければ、戦後に半島北側を統治する権利を主張することはできません。主張自体はできますが、血を流さなかった者に権利を要求する資格は認められません。

というわけで地上戦闘の主力は韓国軍の役割になりますが、ここで中国が軍事介入してきたら大変なことになります。中国は政府系新聞を通して、すでに米軍の対北空爆を認めていますが、地上部隊が入ってくることは容認しないと発表しています。

しかし、たぶん口先だけだろうと思います。よって戦後、中国は北朝鮮という緩衝地帯を失い、米軍の勢力圏と直に対峙する格好になります。習近平は責任を問われますが、何よりも怖いのが「威信」を失うことです。権力闘争が激化し、政権二期目が(すでに発足していたとしても)どうなるか分かりません。地方勢力が公然と反抗し始めるでしょう。その結果、2018年から中国分裂に向けた最初の動きが起きると思われます。

朝鮮半島から次に中国へと、激変の波が連鎖するわけです。

以上は本題ではないので、またの機会に記したいと思います。



これまで大量の対北人道支援を行ってきた日本

さて、2002年9月17日に訪朝した小泉元総理が、現実には、北朝鮮の独裁体制の延命に手を貸す役割を果たしたことは、以下の記事で述べた。

北朝鮮の独裁体制を延命させた張本人(前半)
先日、レックス・ティラーソン米国務長官は「北朝鮮を非核化しようとする20年間の努力は失敗に終わった」と述べ、対北朝鮮政策の大転換を示唆した。 しかし、日本にも同じように対北政策における「15年間の失敗」がある。 アメリカの対北朝鮮攻撃に「待...

今回問題にしたいのは、そういった日朝の癒着関係のなかで実施されてきた食糧支援であり、またその際にいつも使われてきた“人道”というロジックである。

日本は今までどれだけ北朝鮮を支援してきたのか。高市早苗氏は次のように記す。

日本政府の対北朝鮮食糧支援は、1995年6月、同年10月、1996年6月、1997年10月、2000年3月、同年10月にそれぞれ決定され、6回に渡って実施されています。日朝国交正常化交渉は1991年から1992年の間に8回開かれ、その後長らく中断し、2000年に3回行なわれました。前記の食糧支援のうち4回は交渉中断中に実施されています。

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そうやって度々実施してきた上、2002年の小泉訪朝後には、政府はまた“人道支援”と称して、北朝鮮に大量のコメを送った。この件に関してググってみると、政府は最終的に118万トンものコメを送ったらしい。しかも、うち60万トンは新米。というのも、時の河野洋平外相が「自分の責任でコメを送る。送れば北朝鮮は心を開く。古米は失礼だから新米を送る」などと言い張ったらしいのだ。

こんなふうに、時の小泉内閣は、北朝鮮と「日朝平壌宣言」なる噴飯物の約束を交わした上、大量の対北コメ支援まで実施した。その上、日本人を誘拐した当の連中と一緒に拉致問題の解決に向けた“再調査”を行うという驚くべき欺瞞をもって、自国民の人道問題と国家主権犯罪の幕引きを図ろうとしたのだ。

背景には、何がなんでも日朝国交正常化を成し遂げるという信念に燃える田中均・当時外務省局長と、それによる利権目当てを目論む大物政治家たちがいた。

もともと北朝鮮利権の最大の窓口になっていたのが自民党の金丸信と言われるが、90年の熱烈歓迎訪朝における独断の「戦後補償」約束などがさすがに批判を招き、のちに脱税容疑などで捜査のメスが入る。この時、自宅から「無刻印の金のバー」が発見されたことは有名だ。北朝鮮から手渡された賄賂の可能性が高いともいう。

その後は、加藤紘一や山崎拓などが利権の窓口役になったと言われる。ヤマタクといえば統一教会系秘書を持ち、「日朝国交正常化推進議員連盟」の会長だった男だ。

いずれにしても、コメをいくら送ったところで北朝鮮は心を開かず、逆に核・ミサイル開発を加速させていったのだから、「自分の責任」で北朝鮮に新米を送ったことを自認する河野洋平は、言葉通り、責任を取らねばならないのではないか。

というわけで、早く責任をとれ。

損害の全額を弁償するべきだ。払えないなら切腹して国民に詫びよ。

そもそもなんでたくさんの人々が飢えているのか?

しかしながら、政治家がどうあれ、飢餓に瀕している北朝鮮の民衆を救うために人道援助として食糧を支援したこと自体は正しかったと考える人は少なくない。

飢えた人々を助けることは、独裁政権や核の問題とはまた別次元である、と。

そのように考え主張する人々は、とりあえず北朝鮮の多くの民衆が飢えているという事実だけは認めているわけだ。

では、「なぜ人々が飢えているのか? その原因は何だと思うのか?」と問うてみるべきではないだろうか。

まさか「天候不順」や「自然災害」などと答える人はいないと思う。北朝鮮ではよく洪水が起きるが、これが森林の伐採という“人災”に拠ることは明らかだ。

仮にそのような原因を認めるとしても、「ならばどうして南朝鮮の大半の人々は飢えていないのか」と問い返されれば、すぐに破綻する理由ではある。

北と南は同じ民族であるにもかかわらず、一方が飢えていて一方が豊かさを享受している現実がある。よって真因は政治システムの違いに由来するとしか考えられない。

つまり、飢餓の原因は北朝鮮の現在の政治システムにあるということ。具体的には、選挙という審判を経ない、建国の代から続く専制政治が根本的原因であろう。

ということは「北の民衆を飢餓に陥れている根本的原因=独裁体制を取り除かねば、民衆はこれからも恒常的に飢えにさらされる」と言えるのではないだろうか。

北朝鮮からの亡命者たちの一致した証言は、「援助した食糧は軍需物資に回されるので、結果的に体制の延命措置に繋がる」というものだ。

食糧が民衆の口に入るところまで監視すればいい、という意見はある。まず、仮にそういう条件で援助したとしてもその約束が守られるのか否か、という問題がある。なにしろ、証言によると「食糧を民衆に渡した後で、また回収している」というのもある。

ということは、本当に人道援助の実効性を確認するとすれば、二週間なり一ヶ月なり北朝鮮に滞在し、当局の監視(付き添いの者)から完全に自由に行動し、時間的・場所的に抜き打ちチェックできる状況でなければならない。

このような条件をクリアしてはじめて「人道援助が独裁体制延命のための軍需物資ではなく、飢餓に瀕した民衆の口に入った」と確認することができる。

しかし、以上のような条件を彼らが約束するだろうか? あるいは、仮に約束したとして現地で実直に守られるだろうか?

不可能だ、というのが私の考えである。

繰り返すが、飢餓の根本原因は独裁体制である。異様な個人崇拝のスターリン的専制政治が長引く限り、これからも飢餓を生み出す社会的構造はずっと温存される。

よって、形ばかりの「人道援助」を続けてその体制の延命を助けるよりも、むしろ少し時間が長引いても仕方ないから、その体制の変革を強いるほうが結果的に飢えて亡くなる人々も少なくてすむという考え方も不可能ではない。

つまり、「一時的な飢餓か、恒常的な飢餓か」という選択でもある。

「飢えている人々がかわいそうだ」といえば、たしかにそのとおりである。まったくもって悲惨である。しかし、仮に「人道援助」なるものが、人々に飢えを強いるそのシステムの延命に繋がるとしたら、果たして情緒に流されて軽々しく実施するのが正しいだろうか。だいたい当の飢えている人々がなんと感じるであろうか。

「真っ先に今の体制を倒してくれ」

と、彼らならそう言うのではないだろうか。

もっとも、前々から言っているように、あえてそのために日本が大きなリスクを負う必要はないというのが私の考えである。韓国人がやるべきことだろう。

Takaaki Yamada: