6月19日、北朝鮮から植物人間状態で釈放された大学生のオットー・ワームビアさんが死亡しました。トランプ大統領は同国を非難し、「無実の人がこのような悲劇に遭わないようにする決意を新たにした」という、意味深な発言をしました。
ワームビア氏解放の立役者だったティラーソン国務長官に至っては、「北朝鮮に責任を負わせる」という、実力行使を臭わせる声明を発表しました。
米の有力政治家たちも激怒といっていいほど、激しく北朝鮮を非難しています。
しかし、私はそれ以上に米世論が激昂したことが「決定的」だと思っています。どうやら北朝鮮は「アメリカ人が一番嫌うこと」をやったようだ。
今回の事件は、BBC、ロイター、CNN、FOX、CNN、ABCなど英米系のマスメディアで軒並みトップニュース扱いでした。
ライブや、特集ニュースまでありました。しかも、北朝鮮の核開発、人権状況、金正恩の独裁者ぶり、米への挑発や脅迫声明なども、関連として放映されている。
なんだかんだと言って、今も米の世論形成の主役はテレビのニュース。今度の件で、大衆は北朝鮮を公式に「米国の敵」というふうに認識したと思います。
北朝鮮の悪魔化が始まり、日米の温度差はなくなる
これまでは、日米の対北空気には温度差がありました。日本で「北朝鮮脅威論」が一番盛り上がったのは、おそらく今年の3月から4月。それをピークにして、徐々に関心が下がっているところ。一方、アメリカの世論はこれから盛り上がっていく。
それくらい、大衆レベルの怒りのボルテージが強い。これから確実に北朝鮮関連の報道が増えていくだろう。それにつれ温度差も解消されていく。
すでに脱北者・亡命者の記者会見なども取り上げられ、非道な体制に対する“義憤”も高まっている。これは北の「悪魔化」と言えるだろう。そして、“正義感”に駆られた時のアメリカほど厄介で怖い存在がないことはご承知の通り。
気になるのは、少なからぬアメリカ人が戦前の旧日本軍に対して漠然と抱くイメージに北朝鮮をダブらせていること。われわれからすると、ひどい偏見であり、侮辱ですが、この際重要なのはあちらの側の主観。逆にいえば、かつて原爆を落とすほど日本を忌み嫌ったように、北朝鮮を憎み始めているともいえる。
今までは、北朝鮮が日本に弾道ミサイルを撃とうが、核実験をしようが、米大衆にとってしょせん「他人事」でした。しかし、今度の一件で確実に「自分たちの問題」になりました。これから米世論が開戦気運へと傾いていくのは間違いないと思います。
(付記:本来、すぐに書きたかったのですが、“加計学園問題”などという、くだらない雑事に関わってしまったせいで、遅れてしまいました)