「トランプがまんまと金正恩に騙された」論
「トランプは非核化の確約もなく北朝鮮に譲歩した」論
「トランプと金正恩が本気で朝鮮半島の平和を実現しようしている」論
メディアや世論でのそれらの跋扈をみると、どれだけの多くの人々がトランプ政権の芝居に騙されているかがよく分かる。それだけ演技が上手ということだろう。
米朝首脳会談の開催が決まった際、世論は「米朝が平和に向かって急転した」というふうに受け止めたが、実際には、首脳会談は開催の一年以上前からトランプ政権が北朝鮮に対して提案していたことである。すべては想定内のことなのだ。
北朝鮮の再度の裏切りはアメリカの“想定内”だ
だから、トランプ政権は、
第一に経済制裁でジリ貧の型に嵌められた北朝鮮が交渉に応じてくること、
第二にテーブルについた北朝鮮がどう出るかということ、
この二点についても、かなり以前から予測していたはず。
おそらく、第二に関して言えば、「北朝鮮は高確率で『過去』を繰り返すだろう」というふうに考えていたのではないか。その「過去」とは何か。
北朝鮮が首脳会談や多国間会議で核放棄に合意するとか、正式にその条約を締結するといったことは、過去にもあった出来事だ。
しかし、それだけでは何の意味もない。そこから約束を破る、国際社会を騙す、というのがこれまでの北朝鮮のパターンだからである。これが「過去」だ。
なにしろ、文書で契約しても平気で破る国だ(これは北だけでなく韓国も同じ)。
だから、北朝鮮が今回も苦し紛れに非核化の空約束をしてくるが、実際には完全非核化を実行する気はないということは、トランプ政権としても「想定内」の出来事である。
「大量破壊兵器を破棄する約束を破った」という軍事行動の口実
私は散々言っているが、最初からそれを承知の上で首脳会談をやった。
その理由は、アメリカ的には「騙された」という形を作りたいからだ。
なぜなら、北朝鮮がいくら核実験やミサイル実験をしたところで、それだけでは攻撃の口実にならないからである。この点では日米の世論に温度差がある。
2017年のシリア空爆の時は「アサド政権が化学兵器で市民を虐殺した」という大義名分(それが真実か否かはともかく)があったから、空爆可能だった。
北朝鮮に関しては、それに匹敵する口実が未だないのである。
だから、アメリカにとって開戦の方法は二つしかない。
一つは相手から「先制攻撃」してくること。
ところが、この点に関しては、北朝鮮はいくら米韓軍から挑発を受けても、非難声明を繰り返すばかりで、軍事的な反撃は頑として自制してきた。
そして、もう一つが大量破壊兵器破棄の「合意不履行」なのである。
それなら、大量破壊兵器とその関連施設を空爆――いわゆる「サージカル・ストライク」(外科手術的攻撃)――する口実になる。
「北朝鮮が自分たちで破棄すると米国と国際社会に公約しておきながら実行しなかったために、代わってわが国がやらざるをえなかっただけのことだ」
そう言えば、誰も反論できない。
「三度目の裏切り」は北朝鮮にとって命取りになる
しかも、今回の約束には、特別な「最後通牒的重み」がある。
というのも、米国と国際社会はこれまで何度も北朝鮮に騙されてきた。よって、「それにも関わらず、われわれは北朝鮮に再びチャンスを与えた」というのが今回。
つまり、アメリカ的には、三度目の正直で誠心誠意やったが、それにも関わらず、北朝鮮が約束を破った、国際社会を騙した、という形に持っていくことができるのだ。
北がラストチャンスを自ら葬ったのなら、十分に軍事行動の大義名分になる。
そして、相手が頑として先制攻撃してこない以上、この方法しかない。実質ハルノートを突きつけても空約束して飲んでくるなら、それを攻撃の口実にすればいいわけだ。
世間はつい華やかな米朝首脳会談とその共同声明だけを見て判断するが、そうじゃなくて、本当のポイントは「会談後に約束を履行するか否か」である。
だから、私はロードマップ(非核化工程表)の作成の米朝協議を注視している。
さて、他方で今、利害の一致した中朝が急接近し、中国が中朝貿易の再開や対北経済制裁の骨抜き、経済支援を約束しているとも言われている。
北朝鮮は国連決議による経済制裁の苦しさから、交渉のテーブルに着かざるをえなくなったが、仮に中国(やロシア)がそれを骨抜きにして、また(軍事的にも)後ろ盾になってくれるなら、「もう米朝合意を守らなくてもいい」と思考するだろう。
自分の都合でいくらでも人を裏切り、約束を破る・・いつもの北朝鮮のやり方だ。
だが、今度のアメリカは、まさにそれを待っているのである。
View Comments (1)
朝鮮半島がアカに染まり、東アジアで日本が唯一の反共産国になるかの瀬戸際ですね。トランプ政権がかつての大統領のように親中政策を続けるほど愚かではないことを祈ります。
安倍首相は東南アジア外交、欧米の仲裁役等で存在感を発揮してますので、多少の安心感はあります。
また、中国が天安門事件(天皇陛下訪問)以後、資本主義と共産主義を同時進行させる政策を取ってから経済大国となり現在、経済と軍事力拡大を武器に米国にケンカをふっかけていますが、日本やドイツが同じ末路を辿ったように潰されるのでしょうか。