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湊弘平氏の「磁力回転装置」は今や誰でも製造・販売が可能

磁力の元は電子スピンから生じるこのようなトーラス状のエネルギーの流れだと考えられている。

さて、前回の続きである。

湊弘平氏の「磁力回転装置」の初期タイプが下である。

出典『ムー別冊 世界超科学百科』(1985年刊)

つまり、彼はもう30年以上前にフリエネ装置を完成させているわけだ。

それから十年くらいして、湊弘平氏は特許出願をしている。

審査の結果、正式に特許として認められたのが以下だ。

「磁力回転装置」

出願日 1996年4月11日 出願番号1996-113046

https://astamuse.com/ja/published/JP/No/1997285103

たぶん、特許として登録されたものとしては、これがもっとも初期だと思う。

特許権は「特許出願の日から20年」である。

つまり、この装置はすでに特許権が切れ、誰でも製造販売が可能になっている。

ちなみに、永久機関だと特許が取れないため、出願書類には、入力よりも出力が上回るといった内容は、あえて記載していない。

発明の説明の冒頭部分だけを抜き出してみよう(*赤字は筆者)。

課題

回転体をよりスムーズに回転させると共に、回転体から得られるトルクが大きく実際の乗り物等に応用できるようにした磁力回転装置を提供する。

解決手段

第1回転軸2aに回転可能に装着された第1回転体4aと、前記第1回転軸に対し並列な第2回転軸2bに回転可能に装着された第2回転体4bと、互いに逆方向に連動して回転可能とする連動手段とを設けて配置され、各外周部に円周方向等間隔にコの字状永久磁石7a、7bを配設する。第1回転体及び第2回転体が連動して回転される際には対向磁極が同極で周期的に近接対向し、前記第1回転体の磁極が前記第2回転体の磁極よりも僅かに先行して回転運動されるようになっており、電磁石の通電を切り換えることにより回転体の起動、制動を与えるようになっている。

要するに、磁石を配置した二つのドラムが近接して並べてあって、接するポイントで、左側のN極と右側のN極とがちょうど反発しあって回転する、というわけだ。

で、以下の原理図は、やや分かりにくいかもしれないが、片方がわずかに先行しているということを表している。

その「差」はドラムの基底部の歯車がかみ合うことで固定されている。

このわずかな非対称性が「キモ」なのである。

これは湊弘平氏が試行錯誤の末、発見したノウハウである。

ユーチューブでは世界中の何十人もの発明者が同類の装置を試作して公開しているが、このちょっとしたノウハウに気づかないために壁にぶち当たっている。

ところで、上のタイプでは、電磁石はあくまで回転の制御のための脇役だが、下の縦型タイプ(同じ出願内)では、電磁石が回転を持続させる主体になっている。

つまり、瞬間的に電磁石をオンにして、対向側の磁石と同極の反発力を発生させて回転を維持するものだ。

こちらのタイプは当然、相当の入力電力を食う。ただ、高トルク化が可能らしく、発電機に接続すると、入力よりも大きな出力を得られると湊氏は主張している。

当然、「エネルギー保存則上ありえない」という反発があろうが、湊氏側は入力と出力の数値を公開しており、3倍以上とする説明を、私は信じている。

当然、入力は回生電力から得られるわけで、事実上の永久機関ということになる。



「磁力回転装置」を使った直駆方式

湊弘平氏の二つ目の特許登録が以下である。

「直接駆動式磁力回転装置」

出願日 2003年8月26日 出願番号 2003-208744

https://astamuse.com/ja/published/JP/No/2005073310

この発明はモーターの回転を利用する家電製品や車両ならほとんど代替可能かもしれない。モーターはずっと電流を流し続けねばならないが、これならばパルス電流ですむ。

ただし、両者の入力電力とパワーの比が分からないので、直駆方式のほうが本当にエネルギーの利用効率が勝っているかどうかまでは私にも分からない。

出願はあくまで仕組を説明したものにすぎない。

ただ、発想はおもしろいと思う(とくにバイクや自動車の駆動力としては)。

課題

直接駆動式磁力回転装置を応用した扇風機において、回転体とモータが別々に存在するため回転力伝達過程で損失が発生し、また装置の小型化も困難である。

解決手段

回転体に直接永久磁石板を取り付けることにより回転力伝達手段を無くして、効率が良く、小型、低コストの直接駆動式磁力回転装置を実現する。

下は原理。

下は扇風機への応用例。

これは洗濯機。

これはEVの車輪。

インホイールモーターと間違えないように。

あくまで電磁石で同極の永久磁石を反発させる原理を応用したもの。

ただし、この方式で駆動するEVだと、回転数をコントロールできる誘導モーターとは違い、無段変速機(CVT)が必要になるのでは、とも思えてくる。

つまり、事実上、上の方式は非現実的で、動力部と車軸を切り離さなければならない。

電動ママチャリ程度なら、上の方式でもいけると思うが・・。

ただし、(専門家でないのでよく知らないが)電磁石をうまく制御できれば、EVのアドバンテージであるトランスミッション・フリーを損なわなくてすむかもしれない。

湊弘平氏の「磁力回転装置」を製造してみるメーカーはないのだろうか?

最後の三つ目の特許がこれ。

「磁力発電装置」

出願日 2006年5月11日 出願番号 2006-132074

https://astamuse.com/ja/published/JP/No/2007306700

課題

環境汚染や安全面、設備費等の面での問題がなく、半永久的に大容量の電力を小型装置で効率的に取り出すことができる磁力発電装置を提供する。

解決手段

永久磁石と電磁石の磁力利用により回転モードと発電モードを繰り返しながら回転して第1電力を出力する磁力回転式モータ発電機と、磁力回転式モータ発電機に回転軸を介して連結され、ロータに等間隔に埋設された永久磁石群に対向して配設されたステータ側のコイル群より第2電力を出力する増設発電機とで成り、第1電力及び第2電力を合算して出力する磁力発電装置である。

つまり、以前の装置を応用して、より発電量を増やせるようにしたもの。

ところで、電磁石で回転体やピストンを動かす原理は、実は19世紀から存在していた。今日的な交流・直流のモーターが登場するまで、様々なタイプのモーターが発明されていた。当時は低性能だったため、駆逐されてしまったのである。

1970年代の学研「6年の科学」にも電磁石エンジンが登場している。

私はメーカーがまず自家発電用としてこの「磁力回転装置」を試作してみたらどうかと思う。それで自社の工場やオフィスの電力を賄ってみる実験をする。

月に何百、何千万という電気代が浮いたとしたら、大変なコスト削減である。

その過程でノウハウも蓄積して、うまくいけば商品化に持っていく。

どこかに「試してみよう」というメーカーはないものだろうか。

Takaaki Yamada: