さて、前回「日中友好詐欺」について述べたが、巷間では、安倍政権がまんまと乗せられているのでないかと心配する向きがあるようだ。
とくに、戦前の日本の同盟戦略の過ちを踏まえ、日本の生き残りは最強アングロサクソンとの連携にあると信じる親米保守層に、そういう声が強い。
今回の「日中平和友好条約締結40周年」では、日本は確かに見返りを得ている。
第一に、EV用の次世代急速充電器の規格を統一することが日中で決まった。中国は「EV+原子力」へと舵を切っている。よって、同規格化は日本企業に有利に働く。
第二に、1979年に始まる対中ODAの終了に漕ぎつけた。もっとも、今までズルズルと続けていたことが異常であることは言うまでもない。
第三に、習政権は(意外にも)その対内宣伝を買って出た。つまり、日本の経済協力が中国の経済発展に寄与した、感謝する、という具合である。本来、当たり前の話なのだが、未だに感謝ゼロ(マイナス?)の韓国と比べると、はるかに人間らしい態度だ。
第四に、第三国でのインフラ投資など、約50件の事業協力の覚書を締結した。
第五に、中国は尖閣諸島での強硬姿勢を軟化させ、「歴史問題」なる言いがかりも控え始めた。抗日ドラマの制作も急減しているという。
こんなふうに、当たり前のことも含まれるが、日本はまずまずの実利を得ている。
これを見て、安倍政権が中国の「エサ」に食らいついて「親中」に転じたのではないか、アメリカとの足並みを乱しているのではないか・・・そういう声も聞く。
ちょうど、天安門事件後に国際社会から孤立した中国が、天皇陛下訪中などを要請して、うまく日本をダシにして、その包囲網を突破し、その後にまた反日に転じた悪夢を思い起こさせるというのだ。「またその二の舞にならないか!?」という心配である。
今日の安倍外交の原型はやはり第一次安倍政権にあった
もっともな懸念かもしれないが、私は第一次の時の安倍外交をよく調べてみたほうがよいと言いたい。
こと対中外交に関しては、安倍さんは昔から「二刀流」なのである。
実は、第一次の安倍さんが辞任した後、私は「安倍対中外交の再評価を!」と題するエッセイを私的に書いていた。当時はずっとフィクションの創作に熱中していて、とくに発表する機会もなく埋もれていたが、今回急に思い出したので、探し出した。
信じようと信じまいと、以下は私が当時に書いたものである。
内容にかなりの繰り返しがあるが、当時の雰囲気がよく分かると思う。
安倍対中外交の再評価を!
安倍前総理は卓越した外交センスの持ち主だったようだ。政権誕生後、真っ先に行った訪中のタイミングは絶妙だった。政争を勝ち抜いた胡錦濤閥に対する祝賀のメッセージを含んでいたのだろうか。
また、中国側としても、党の中央委員会総会初日に日本の総理を迎えたことは、日中関係重視の姿勢を内外に深く心象付けた形となった。
1年という短い在任期間ではあったが、安倍氏は中国との間に「戦略的互恵関係」を構築することで合意するという道筋を残した。
また、相手の計算づくの「日中友好」に応じつつも、一方で共産党独裁体制に対するけん制である「価値観外交」を掲げた。オーストラリアやインドとの関係強化も、「これは中国封じ込めではないか」と中国人を恐れさせるほどの外交的効果を発揮した。
硬軟の二刀流を使い分ける安倍氏の外交手腕に、中国側も「侮りがたし」との印象を抱いたに違いない。
ちなみに余談だが、オウムのように日中友好を唱え、中国に対する批判を決して口にしない一部の日本の政治家を中国人は決して尊敬していない。内心で「利用価値のあるバカ」としか思っていない。河野洋平氏などはこの典型であると思われる。
◇
国交樹立以降、最悪と評された日中両国の関係は、06年の9月から急速に改善へと向かった。これは日中双方の国内の政治状況が根本的に変化したことに拠る。
日本では小泉政権に代わり、安倍政権が誕生した。安倍前総理が政権誕生後に真っ先に中国を訪問したことには、関係改善のメッセージの意味が含まれていた。また中国側としても党の中央委員会総会初日に日本の総理を北京に迎えたことは、日中関係重視の姿勢を内外に深く心象付けた形となり、日本国内からも好意的に受け止められた。
安倍氏は対中強硬姿勢をとることがあったが、それは中国に対する憎悪から発していたわけではない。彼が根本的には親中派であったことはよく知られている。
また、政財界だけでなく、国民の側にも中国との関係をこれ以上悪化させるべきではないとする考えがあり、安倍前総理には関係改善の期待が高まった。1年という短い在任期間ではあったが、彼は中国との間に「戦略的互恵関係」を構築することで合意するという一つの道筋を残した。
その安倍政権は07年9月をもって退陣し、後継として福田康夫氏が総理に就任した。
◇
中国に対して堂々「価値観外交」を掲げたのが安倍晋三前総理である。小泉時代には対立一色だったが、安倍氏の尽力によって日本は硬軟取り混ぜた対応へと移行した。
安倍氏は、内政はともかく、外交においては内向きな日本の政治家の中にあって珍しく戦略的な思考や行動ができる人物であった。
安倍氏の対中外交はポイントを突いていた。
- 第一、訪中のタイミング。
- 第二、普遍的価値を掲げたこと。
- 第三、中国との戦略的互恵関係の合意。
- 第四、アセアンやインドとの関係強化。
このように並べてみると、彼は友好と牽制という「二柄」をうまく使っていたことが分かる。
わが国にとって中国に対して能動的で戦略的な対応ができる指導者の誕生は久しぶりだった。思えば、06年7月に北朝鮮がミサイルの連続発射をした際の対応が、大きな経験となったのではないか。この時、安倍氏と麻生氏は、拒否権をチラつかせる中ロをけん制しながら諸大国を唱導し、最終的に制裁決議を全会一致で採択に導いた。こうして本質的に外交を理解する、珍しく「外向き」のリーダーが誕生した。
安倍氏はまた、拉致問題で国家の大義を曲げなかったし、地球環境問題でも国際的にリーダーシップを発揮した。ただし、あまりにたくさんのことを一度にやろうと急いだ嫌いがあった。そのため一般国民からすると、かえって何をやっているのか伝わってこない部分があった。さらに、安倍氏には性格的に「悪」の要素とタフネスが欠けていた。しばらく時間はかかるが、安倍氏の功績はいずれ再評価されるだろう。
死にかけ共産中国からできるだけ実利をもぎ取れ
どうだろうか。今、安倍総理がやっている外交は、第一次の時にほとんどその根を見ることができよう。それを理解する上で、上記は参考になると思う。
第一次の時も、ブッシュ政権から面子を潰された胡錦濤政権が「日中戦略的互恵外交」などと称して擦り寄ってきたことがあったのだ。
安倍さんはそれに応じつつも、他方で「価値観外交」を掲げた。
余談だが、当時、拉致問題を切り捨てて日本を裏切ったのはブッシュ政権だった。あの時の保守派の情けなさといったら・・。信用できないのはアメリカも同じだ。
さて、第二次就任以降も、安倍総理は尖閣諸島と南シナ海で攻勢に出る中国に対して、「多国間連携の強化」という当たり前の外交戦略をもって対処した。
これをボロクソにけなしていたのが、いわゆる左派・リベラル派である。
この連中は心底アホなのか、それとも中国朝鮮の手先か、あるいは手先に扇動されて踊っているだけ――これが一番多いはず――なのか、まあ、どれかだろう。
問題は、政治家や知識人・新聞記者でこのレベルの人間が多いことだ。私は「安倍政権の外交は当たり前のことだ、どんな国でもそうするはずだ」と書いてきた。
対して、河野洋平は「台湾問題で中国の機嫌が悪くなった!」と(本当に)発言して安倍外交を非難した。おまえは中国の機嫌をとるのが日本の政治家の仕事とでも思っているのかと、百万回問い質したい。この馬鹿については過去にもこんな記事を書いた。
息子の太郎氏の活躍がなかったら、今頃、電柱に吊るしているところである。
また、森永卓郎などは、安倍氏の二刀流外交を指して「やっていることが矛盾している」などと批判していた。アホ丸出しである。
森永は「外交たるもの、友好するなら友好一辺倒で、敵対するなら敵対一辺倒で、常に一貫していなければならない」と考えているらしい。単純すぎる頭である。
硬軟とりまぜた対中外交を非難しているのは、売国エイリアンの鳩山由紀夫も同じ。
こういう連中が、政治家や知識人を名乗れてしまう国である。
「みんなで仲良くしましょう」という幼稚園の教室と、自国のエゴの最大化のために各国がしのぎを削る国際社会との区別がつかないらしいのだ。
幼稚園の先生の教えを頑なに信じる純真なオジさんたちなのか(オエッ)。
安倍氏は戦後もっとも強硬な対中外交を推進していた総理だが、にも関わらず中国は状況が不利と察するや、コロッと「媚日外交」へと転換した。
「近隣諸国との関係ガー」と叫んでいた連中は、二階に上がってまんまとハシゴを外された格好である。鳩山などは、ハトが豆鉄砲食らったみたいな顔をしているに違いない。
さて、話がやや反れてしまったが、このように、安倍さんは中国に対しては押さえるべき点を押さえ、基本的に二刀流外交を駆使してきたから、「日米離間の計」に乗せられる心配はない。むしろ、いつものように日中友好詐欺に騙されるフリをして、「日本くみしやす」と内心で嘲弄させるべき。今はそうやって経済面での「実利」を取ればいい。
どうせ共産中国は長く持たない。毎度のように日中友好詐欺に躍らされている「お人好しの馬鹿」を演じて、相手にどんどん日本の利益になることをやらせて、最後は背中から刺して裏切ればよいのではないか。河野洋平的親中も、石原慎太郎的反中も、単純バカという点では同じ。これからは悪賢い「用中」で行こうじゃないか。
「これを読まずに共産中国を語るな――『マンガで読む嘘つき中国共産党』」
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