みなさん、こんにちわ。
「櫻井ジャーナル」のほうで、「露外務省の広報担当が米大統領選でトランプが勝利した理由をユダヤ系資金が原因だと示唆した 2016.11.19」と題する興味深い記事が掲載されていた。
11月13日に放送された番組の中でロシア外務省の広報担当者、マリア・ザハロバはアメリカの大統領選挙でドナルド・トランプが勝利した理由をユダヤ人の資金だと語ったという。9月にニューヨークで会ったユダヤ系の人物から、自分たちはヒラリー・クリントンに寄付しているが、その倍をトランプに提供していることを明らかにしたとしている。
トランプ次期大統領はフリン中将に安全保障担当補佐官就任を要請したようで、まだ主導権を保持 - 《櫻井ジャーナル》:楽天ブログドナルド・トランプはマイケル・フリン元DIA局長に対し、安全保障担当補佐官への就任を要請したとAPが伝えている。トランプはロシアとの関係修復を訴え、シリアではバシャール・アル・アサド体制の打倒ではなくア
で、この記事は欧米メディアがネタ元になっているが、リンク先に飛ぶと、もともとは次のような題名であり、その番組の動画も紹介されていた。
Russian Government Spokeswoman Suggests Trump Won Thanks To ‘The Jews’
Мария Захарова: о пропаганде, Трампе, Макфоле. Воскресный вечер от 13.11.16
この動画はロシア語のみで、私もさっぱり分からない。しかも、これを紹介する英文記事のほうも、上から目線でロシアの後進性を揶揄するものなので、おそらく都合のいい部分のみをピックアップして、そうでない部分は黙殺している可能性が高い。
そういうわけで英文記事のみ依拠するのは危険だと事前に断った上で、話を進めたい。
マリア・ザハロワ報道官がロシア全国に向けて堂々「ユダヤ陰謀論」を展開
どうやら、先日の11月13日、ロシア外務省報道官のマリア・ザハロワMaria Zakharovaさんが、ロシアで全国放送されている人気トーク番組「日曜の夜」に出演し、極めてあけすけに“ユダヤ陰謀論”を展開したらしい。
英文記事は、のっけからこのマリア・ザハロバ女史の人物像に愚か者の烙印を押し、ユダヤ人からの献金がトランプ勝利の鍵であるなどと全国放映のトークショーで彼女が語ったため、「反ユダヤ主義」anti-Semitismの告発のトリガーを引いたとしている。
それによると、9月、国連総会のためにニューヨークにいる際、彼女はあるアメリカ系ユダヤ人から言われた言葉に大きく納得したらしい。それが次だ。
“If you want to know what will happen in America, who do you have to talk to? You have to talk to the Jews, naturally. But of course,”
「もしあなたがアメリカで何が起きるか知りたいならば、誰と話さなければならないか? 当然、ユダヤ人とだよ。しかしもちろん・・」
ザハロバ女史はここでもったいぶって、観客に拍手を促がしたそうな。しかも、相手の言葉を再現する間、からかいの意味を込め?てわざとユダヤ人風のアクセントを使った。
“you understand, of course, we’ll donate to Clinton. But we’ll donate twice as much to the Republicans.’ That was it! The matter was settled, for me personally,”
「君は分かっているだろう、もちろん。われわれはクリントンに寄付するさ。しかし、われわれは共和党にその二倍を寄付するんだ」
この言葉を聴いて「そうだったのか、これで個人的に疑問は解けた!」と、とても納得してしまったのがザハロバ女史である。そして、こう付け足した。
“if you want to know the future, don’t read the mainstream newspapers — our people in Brighton [Beach] will tell you everything,”
「もしあなたが将来何が起きるか知りたければ、主流の新聞は読んではいけません。ブライトンビーチ(*NYのConey Islandの南端に位置し、ロシア系移民が多い)にいるわれわれの身内がすべてを話してくれるでしょう」
観客はワーッと拍手である。英文メディアはこの後、数人の“政治的に正しい”人々を登場させ、彼らの口を借りてザハロバ女史を批判させている。
実は、上の“ユダヤ人の言葉”は、いわゆるユダヤ陰謀論者たちがその根拠として引用する典型的なセリフの一つなのである。つまり、全体としてみれば、この記事は、「一国の報道官たるものが典型的なユダヤ陰謀論に嵌まっているぞ(笑)」というニュアンスであり、彼女がレイシストの馬鹿者であると、読者に印象付けているわけだ。
要するに、政治的に成熟した欧米の常識からすれば失笑ものであるという前提で、ロシアの後進性の事例として取り上げられたわけである。
プーチン政権はトランプ勝利を「ユダヤのおかげ」と事実上公式発表した
仮に日本で、外務省の報道官が人気テレビ番組でえんえんとユダヤ陰謀論をぶったら、どんな騒動に発展するだろうか。おそらく、右派・左派関係なく、知識人や主流メディア総発狂だろう。公人でなくとも十分、知的道徳的弱者の烙印を押される。
しかし、少し違う角度からモノを見るくらい、罰は当たるまい。ポリティカル・コレクトネスの観点からありえないことだとしても、仮にそれが「真実」だとしたら、果たしてタブー扱いすることが進歩的なのだろうか。公共の言論空間で、政府の要職に就く人がそれをあけすけに語るのは、偏見の拡大再生産に当たる言語道断の行為なのだろうか。それとも、そのような状態は、本当はより“自由”で“民主的”なのだろうか。
つまり、どっちが本当は色眼鏡か、という話である。
ロシアはもともとポグロムの本場で、しかも「過去を反省する」などの成熟さとはあまり縁がないようだから、「やれやれ、これだからロシアは・・」という欧米の揶揄も分からないではない。実際、ロシアが本当に民主的な国なら、もっとプーチン政権に対する批判が溢れていてもいいはずだ。だから、これは、自分たちの権力に対してはタブーに満ちているが、その代わり、敵国・ライバル国に対してはいかなる遠慮もしないし、タブーも設けないという類いの自国本位主義の表れだと思う。実は、戦前の日本にもこういうところがあった。それはひどく偏ってはいるが、ただある種の自由であるのも確かだ。
興味深いのは、ロシア政府の表向きの立場はどうあれ、公職の報道官をわざわざテレビに出演させて、欧米でユダヤ陰謀論と受け取られる発言をさせたことだ。それがどういう反応を引き起こすかを知らないほど、ロシア人も鈍くない。
普通に考えれば、これはプーチン政権の広報だ。建前上は民主国家なので、ソ連時代のプラウダのようにあからさまではないが、要は内外に向けた宣伝である。対内的には、世論操作の装置であり、もっといえば国民を洗脳するためのものだ。対外的には、「ロシア・トゥデイ」がやっている対欧米向けの真実暴露作戦と共通するものを感じる。
つまり、「こっちこそ本当のことを言っているんだ、おまえら西側のほうが洗脳されているんだ、早く気づけ」というわけだ。さすがに政府としては言い辛いから、わざわざテレビ番組に出演させて、プライベート発言の体裁を繕ったらしい。
すると、日本ではトランプとプーチンの関係が極めて良好であるように思われているが、ちょっと誤解している向きがあるのではないか。わざわざ「トランプはユダヤの金で当選したんだぞ、ユダヤに選ばれたんだぞ」と内外に向けて吹聴するくらいだから、プーチンがトランプにあまり友情を感じているとは思えない。ロシアを追い詰める一方だったオバマ・クリントン外交に比べると、まだ米ロ戦争に反対するトランプのほうが交渉余地があるという意味で、プーチン政権としては「歓迎」する、という程度の話かもしれない。
シオニスト内部の路線対立という視点
さて、トランプのユダヤ人脈については前の記事でも触れた。
トランプの娘イヴァンカさんの婿筋・クシュナー家は、ポーランドのホロコースト生存者の家系で、不動産で財を成した新興の富豪。
また、トランプの大統領選挙で最大の資金源となったシェルドン・アデルソンについては、ウィキペディアの記事をそのまま紹介する。
シェルドン・アデルソン(Sheldon Gary Adelson、1933年8月4日 )はアメリカ合衆国の実業家。ネバダ州ラスベガスに本社をおく上場企業ラスベガス・サンズの会長かつCEOであり、不動産開発業者。また、Las Vegas Review-Journalを所有している。彼は寄付者、博愛主義者でもあり妻とアデルソン財団を設立した。(略)アメリカ合衆国随一の富豪であり、フォーブスの発表による世界長者番付の2007年度版によれば、世界で第6番目の長者である。シオニストとして知られ、2006年には北米のシオニスト組織『バースライト・イスラエル』に3000万ドルを寄付している。
シェルドン・アデルソン - Wikipedia
要は、彼らはロシアとの核戦争になったらすべてを失う人々である。一方で、彼らは熱烈なシオニストでもあり、一様にネタニヤフ現イスラエル首相とも親しい共通点を持つ。
ドナルド・トランプ自身はユダヤ人ではないが、偏執的ともいえる親イスラエルであり(つまり事実上のシオニストだ)、娘以下がユダヤ人である。
対して、クリントン陣営はどうかというと、やはりシオニストがバックにいる。ジョージ・ソロスなどは、完全なロスチャイルドの代理人である。
ロスチャイルド家がよくやる手口の一つとして、若くて才能のあるユダヤ人(しかもなるべく一族の関係者)を見出して、大金を無利子融資するというものがある。そうやって「よし、おまえ一丁ビジネスをやってみろ」と後援するわけだ。
かつてこれで急成長したのが(おそらく改宗ユダヤ人の)モルガンとロックフェラー、サムエル(シェル石油)、リーマン、ランバート、ブロフマンなどの、そうそうたる子・孫財閥なのである。実はジョージ・ソロスもその系譜に連なる人間だ。
私の想像では、初代マイヤー・ロスチャイルド自身が商人として自立するに際して、そうやって丁稚先の家主オッペンハイマー家から融資を受けたはずである。だから、歴史的にいえば、本当はオッペンハイマー家のほうがロスチャイルド家よりも「格」が高いのだが、その辺を説明し出すとキリがないので、今回はここまでにしておきたい。
また、「シオニストとは本当は何か」という説明も長くなるので機会を改めざるをえないが、要は、ゴールはみな同じである。そういう意味で、トラップのバックも、ヒラリーのバックも、目的それ自体が違うわけではない。ところが、どうやら彼ら自身の勢力があまりにも膨れ上がったことで、一枚岩ではなくなっているらしい。つまり、その目的を実現する方法について、単純にいえば急進派か、穏健派かという路線対立が生じているのだ。
おそらく、それはプーチン・ロシアを戦争で打ち負かして無理にでも従えようと考える派閥と、いやいや、何も核戦争のリスクを犯さなくとも、またエリツィン時代のように「北風と太陽」で内部から乗っ取ってしまえばいいじゃないかという派閥との対立だと思われる。そして、後者がトランプ側についた、というのが事の真相ではないか。
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