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マティス国防長官の発言の裏を読む【第二次朝鮮戦争】

つい先日、ジェームズ・マティス氏がこんな発言をしました(傍線太字等筆者)。

北朝鮮は「最も喫緊で危険な脅威」 “狂犬”マティス氏が予言「力の均衡、列強競争の時代に」2017.6.13

(前略)世界の安全保障環境に関して証言した。

マティス氏は、米国を取り巻く「最も喫緊かつ危険な脅威」として北朝鮮を挙げ、同国の核・ミサイル開発は「全て(の国々)にとり、明白かつ眼前の危険だ」と強調した。(略)

外交的解決に失敗し、軍事衝突となった場合は「1953年(の朝鮮戦争)以来、見たこともないような極めて深刻な戦争となる」との見通しを示した。

また、現在の世界が「力の均衡」や「列強同士の競争」に回帰するという「新たな時代」に入ったと指摘。第二次大戦後に構築された国際秩序は「再起を果たして攻撃性を強めたロシア」と「より自信を深めた強引な中国」からの攻撃にさらされていると危機感を示した。

http://www.sankei.com/world/news/170613/wor1706130033-n1.html

マティス国防長官といえば、5月の記者会見でも、北朝鮮問題の軍事的解決は「信じられない規模での悲劇」を引き起こすとして、外交的打開を訴えました。

つまり、この種の警告を二度も発したわけです。

彼はものすごい読書家で、「戦う修道士(Warrior Monk)」という異名を持つほどの、いたって真面目な人物です。トランプのように軽い気持ちで口を開いたりしない。

発言の真意は何でしょうか。

「なるほど、アメリカさんは、なるべく戦いたくないようだ。このような悲劇が起こらないよう、必死で外交的解決を模索しているんだな」

と感心した人。

まさに術中に嵌っています。

なぜなら、彼は世界中の人々にそう思わせるために発言しているからです。



マティスは最初から「そうなる」ことを知っている!

私たちからすると、大袈裟とも思える表現です。

しかし、マティスは元海兵隊大将で、米中央軍司令官などを歴任し、現在はペンタゴンのトップいるVIPです。トップシークレットを知る立場にある。

実は、私が引っ掛かっていることがあります。

かつてのイラク戦争とは反対に、今度のアメリカは、戦争の大義名分づくりに非常に神経を使っている。ブッシュ政権時代の強引なやり方とは打って変わって、今回は慎重すぎるとも思える姿勢を貫いている。わざわざ中国まで「連れ」にしました。

その真意については、以前の記事で次のように述べました。

5月に対北攻撃の政治的条件と軍事的条件がピタリと揃う訳
私は4月16日の以下の記事で、次のように記しました。 こうして、ロシアは直接戦闘に介入しないが、影で米空母艦隊の情報を提供することで北朝鮮に攻撃させる、というわけです。(略)朝鮮人民軍は、通常ミサイルか、弾道ミサイルか、魚雷か、機雷か、それ...

実際のところ、アメリカは、中国が本当に北朝鮮問題を解決できるとは思っていない。わざわざ米中貿易を人質にして習近平を巻き込んだ最大の理由は、「中国ですら対話で解決できなかった」という既成事実を作るためであったと思われます。

世界は「親北国家で、事実上の後見人である、あの中国ですら駄目だった」という風に見なします。実際、アメリカは宣戦布告に際してそういう説明を使うでしょう。「よって、やむにやまれず・・」と、武力行使を「より」正当化できるというわけです。

要するに、こうまでして、武力行使の大義名分を「完璧」に整えようとしている。なぜここまで一部の隙もないよう、細心の注意を払う必要があるのか?

と、その点に引っ掛かっていたわけです。しかし、マティスの二度にわたる警告の意味をよくよく考えみた結果、なんとなく謎が解けてきました。

これは、あとから道徳的に指を差されないようにするための布石ではないか。

つまり、マティスは朝鮮半島で「見たこともないような極めて深刻な戦争」や「信じられない規模での悲劇」が実際に起きることを、最初から分かっている。

しかも、核戦争になる。北朝鮮は核兵器を使用し、それに対してアメリカもまた核兵器を使用する。一部では広島・長崎を思わせる惨状になる。

当然、全世界が震撼する。そして、その惨状を見て、誰もがこう口々に言うだろう。

「なんでこんなことになってしまったのか?」

「戦争になる道は避けられなかったのか?」

「このような悲劇を食い止める方法はなかったのか?」

とくに戦後になると、急に勇敢になって、責任追及に血筋を挙げるものが沸いてくる。ロシアなどはここぞとばかり“加害者”の米軍とアメリカを叩こうとするだろう。

アメリカが本当に恐れているのは、この“被告席”ではないでしょうか。

つまり、今の時点で、戦後の国際世論に神経を尖らせている。すでにそこまで見据えて、自国が国際社会の非難の的にならないよう布石を打っている。

だから、慎重の上にも慎重を重ねて、政治的な条件を整えることに尽力している。

・・と、こんなふうに推測すれば、腑に落ちるのではないでしょうか。

核戦争にするつもりだからこそ、あえて事前に外交・平和的解決を声高に訴える

ちょうど、公衆の面前で人を殺すことになった男の立場を想像するといいでしょう。人々から「殺人者」と指を差されないようにするためにはどうしたらよいか。

まず、事前に相手が極悪人であると、人々に周知する。しかも、「自分は悪人といえども殺したくない、なるべく話し合いで解決したい」と、ことあるごとに吹聴しておく。そうすれば、実際にそうなった時のエクスキューズとして生きてきます。

しかも、トランプは鈍感だからともかく、実際に戦争を指揮する立場のマティスにしてみれば、これは彼自身の歴史的評価にすら関わってくる重大問題です。

ちなみに、彼は歴史家・戦史研究家といえるほどの知識レベルにあるという。だとすれば、自分が歴史の裁きを受ける事態は、何にも増して耐え難いはずだ。

だから、彼はアメリカのためだけでなく、自身のためにも、同時代と後世の史家から悪者との烙印を押されることがないよう、周到に手を打っている。

つまり、彼の意味深な発言は、後々に責任を回避するための伏線というわけです。中国もそのためのダシに使われているに過ぎない。

「だから、私は散々警告してきたではないか」

「だから、われわれアメリカはこうなると警告して、あれほど外交的解決に努力してきたではないか」

事前に下地を作っておけば、戦後に堂々とそう主張できるというわけです。

逆にいえば、それだけ悲惨な局地戦になることを見越している。

言ったように、これほどまで伏線に神経を使うのは尋常ではありません。だから、私は「核兵器を使用するつもりであることの証左」だと考えます。

北朝鮮も馬鹿ではない。アメリカの真意をとっくに見抜いている。

あの、狂ったような政治声明とミサイル発射実験の連発を見て、私たちは単に「キ○ガイだ」というふうに嘲笑っていますが、殺られる側にしてみれば、発狂したくもなる気持ちも分からないではありません。

いずれにしても、米朝が核兵器を撃ち合えば、見るに耐えない惨劇になるでしょう。

Takaaki Yamada: