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加計学園 何が問題か 事の本質をズバリ解説【2・内部文書の是非】

出典:2017/01/18 ANNニュース

さて、引き続き「加計学園問題」又「疑惑」の“本質”について解説したい。

加計学園に決まった経緯は以上だが、ここである問題が発覚し、人々の疑念を呼ぶ。大きく「文書の問題」「縁故政治疑惑」に分かれるが、まずは前者から。

2017年5月17日、朝日新聞が一面トップで加計学園問題を報じた。内容は、同校の獣医学部新設について「総理のご意向」などと記された文書があったとする等だ。

菅官房長官は第一報の直後、「文書の作成日時や作成部局が明確でない」として、誰が書いたか分からない怪文書というふうに扱った。だが、朝日新聞は翌18日、日時や参加者などが記された文科省の文書の存在を公表した。

これはすぐ後に、文科省の事務次官だった前川喜平氏が朝日新聞に持ち込んだ情報であることが分かる。前川元事務次官はこの“ネタ”を複数の新聞社やテレビ局、週刊誌に持ちこんでいたが、朝日新聞だけが大々的に取り上げたというわけだ。

朝日新聞は何もかも事情を知っていたが、あえて出所を不明瞭にして報道し、うまく官邸側に否定させることに成功した格好だ。その上で、真相を明らかにする。その結果、政府が嘘をついたかのような格好になった。この初動対応のまずさにより、以後、文書の内容以上に、存在自体の是非がクローズアップされていった感がある。

5月19日、松野文科相が「文書の存在は確認できなかった」とする“調査結果”を発表した。内部文書だからどうせ表に出てこないと高をくくっていたのだろうか。

これで官邸側はまた下手を打った格好になった。



前川氏のスキャンダルと文書実在のすったもんだ

前川元事務次官とは、2017年3月に天下りの斡旋をしていたとして懲戒処分を受け、辞めさせられていた人物だった。しかも、在職中に警察当局から“ある事”で厳重注意を受けていた。それが新宿歌舞伎町にある「出会い系バー」通いだ。

これは店内の女性を選んで外に連れ出してデートするシステムで、事実上の売春・援助交際目的の風俗店だという。5月22日、読売新聞がその事実を報じた。

テレビ朝日「モーニングショー」より

言うまでもないが、彼は日本の教育システムの頂点に立っていた人物だ。

元警察庁警備局長(つまり全国公安警察の頂点)の杉田和博官房副長官がその過去の経緯に言及したことから、読売新聞にリークしたのは官邸だと囁かれた。

つまり、官邸自ら前川氏のスキャンダルを暴露して彼の信憑性を貶めようとしたのではないか、というわけだ。これで事態はさらに泥沼化した。

5月25日、渦中の前川元事務次官が記者会見した。

彼は獣医学部の新設決定時における事務方のトップとして、「総理のご意向」などと記された文書は間違いなく存在したと断言。「行政のあり方」に疑問を感じたことが告発に至った動機であると示唆し、「あったものはなかったことにはできない」と啖呵を切った。

また、「出会い系バー」に通いつめていた件については、謝罪しつつも「貧困調査」だったとして、ネガティブ・イメージの払拭に努めた。

文書存在問題は前川氏に軍配が上がった。前述のように、6月半ばには“再調査”によって内部文書が実在することが、当初否定した松野大臣から発表された。

もっとも、内容的には選定に関して総理の直接関与を証明するものではない。あれほど騒いだ割には、全体としてどうということのない文書であり、期待した人は肩透かしを食らった格好になった。ただ、当初、官邸側が「無い」と言い張ってしまったことで、「官邸が隠蔽しようとした爆弾級の極秘情報」というイメージが膨らんでいた。

その証拠能力のない複数の文書にあって、もっとも証拠に近いと注目されたのが、「疑惑のポイント」として【1】で先述した部分である。つまり、「加計学園」と「京都産業大学」の明暗を分けることになった萩生田官房副長官からの加筆修正指示箇所だ。

「総理のご意向文書」の終わり

つい最近、前川氏がこんなことを言った。

【加計学園】なぜ、加計問題で渦中の前川さんが「安倍さんに感謝している」と語るのか?
前川喜平さんがBuzzFeed Newsの取材に応じた。そこで語られた安倍政権への思いとは?

(上記事から引用・傍線太字筆者)

「私は文科省でずっとフリースクールを認めるべきだ、と言ってたんです。いまの学校制度では対応できない不登校問題をどう考えたときに、学校の外に学校ではない選択肢があっていい、と」

「文科省ではそんなことを言う官僚は少数派だった。ところが、安倍さんはフリースクールを支援しようと、施政方針演説でおっしゃった」(略)

「私だってね(フリースクール問題に関して)これは『総理のご意向だ』って言ったことはありますよ(笑)

今年2月に施行された、不登校支援を目的にした教育機会確保法も重要だったと振り返る。この制定には前川さんも関わっていた。

馳(浩・自民党衆院議員)さんらが中心になってフリースクールや夜間中学の問題で、教育機会確保法につながる議員立法をやろうとしていたんです。超党派の議員連盟もできていました」(略)

「フリースクール認めるべきだ、夜間中学をもっと作るべきだと言っても、文科省に内なる『岩盤』があった。それを総理の一声と議員連盟、つまり政治主導で突破するんですよ」

自分で「総理のご意向だ」という葵の印籠を使っていたなら、さも爆弾級の情報であるかのように印象付けた文科省の文書は、実はたいした意味はなかったと半ば認めたようなものではないか。ついでに政治主導の岩盤規制突破も正当化している。

これで「新学部『総理の意向』ガー」と鬼の首でも取った勢いだった朝日新聞も、「二階に上がって梯子を外された」ようなものだ。

いずれにしても、これでくだんの文書の証拠能力はますます減ったと思われる。

次回、「3・縁故政治疑惑」へとつづく。

 

【加計学園問題】ウィキペディア「獣医学部」を読む

http://freezzaa.com/archives/1854

加計学園問題騒ぎ 疑問の声まとめ 超必読の三名五記事の紹介

http://freezzaa.com/archives/1859

加計学園 何が問題? 本質をズバリ解説【1・選考における疑惑】

http://freezzaa.com/archives/1879

Takaaki Yamada: