上のアイキャッチ画像と「縁故政治疑惑」の題を抱き合わせたら、特定の結論に誘導しようとする印象操作に近いことは承知しているが、ここに来る読者の皆さんはフェアなものの見方ができる人だと思うので、あくまでご自身で冷静に判断してほしい。
さて、当初から「文書問題」と並んで報道されたのが「縁故政治疑惑」である。
朝日新聞は、加計学園の理事長の加計孝太郎氏が、安倍総理のアメリカ留学時代からの友人であると報じた。そればかりか、安倍総理はかつて加計学園の役員をしており、数年間にわたって報酬(ただし年間14万円という微々たるもの)を貰っていた。
だから当然、次の疑惑が起こった。
加計学園が選ばれて京都産業大学が落選したのは、偶然ではなく、加計学園の理事長が総理の友人だからではないか。
つまり、私情で便宜を図ったのではないか。
要するに、選定は「はじめに加計学園ありき」という疑惑である。
当然、安倍総理と官邸側はそれを否定した。実際にそのことを直接証明する証拠は今のところない。だが、安倍総理だけではなかった。以前から総理周辺の関係者が加計学園とその系列の学校法人のポストに次々と就任していたのだ。
その中には系列保育施設の“名誉園長”を務める昭恵夫人も含まれる。
上記「週刊朝日」の報じるところに拠れば、この関係図の中にある萩生田氏、井上氏、江島氏の三人は、いずれも政治から離脱していた一時期の“浪人中”に加計学園系列の「客員教授」として迎えられ、少ないながらも一定の報酬を貰っていた。
つまり、加計グループ理事長の加計孝太郎氏は、以前から友人である安倍氏とその周辺の人たちを「ひいき」にしていた。待遇内容からして「面倒を見ていた」というほど大袈裟なものではないが、それでも受けた側が一定の「借り」を感じる程ではあると思う。
よって、このような状況証拠から「加計学園の獣医学部新設の認可とはそれに応えたものではなかったか」という推測が当然、浮かんでくるわけだ。
しかも、内閣府審議官らが、内閣の「最高意志」を臭わせつつ、2018年の開校に間に合うよう、文科省側にかなりプレッシャーをかけたとまで言われている。
改めて言う、この問題は「正 VS 不正」の単純構造ではない
この問題の複雑な点は、他方で疑惑の反論反証も多いことだ。
たとえば、第一次安倍内閣の頃に請願があったが、認められなかった(もっとも同内閣が一年で倒れてしまった時間的制約も関係しているかもしれない)。
獣医学部新設は半世紀以上も認められてこなかった。獣医師の養成も、東と西では「8:2」とアンバランスで、しかも四国にだけ学部がない不公平な状況だった。
それゆえ四国の民間業者と自治体が悲願をかなえるべく15回にもわたって忍耐強く申請してきたが、己の既得権益を温存したい官民癒着構造から阻まれてきた。
ゆえに、今回の決定は、公益上の課題を解決する「国家戦略特区」の趣旨から見ても「妥当性」が強い。また、例の萩生田氏による加筆修正指示箇所も、公益の建前を逸脱するものとは言い難い。現状を鑑みれば、誰だって京都より四国を選ぶだろう。
ただ、そこには「なら加計学園で妥当なのか」という疑問も生じる。私はこの加計一族に対しては、学校ビジネスをしている政商ではないか、という印象を持っている。
もっとも、学校の運営には巨額の補助金が絡むので、どこの公立校や学校法人にも大なり小なり当てはまることだし、それゆえ利権の温床は他にも無数にある。
また、民主党の鳩山政権自身が、この岩盤規制とアンフェアな状況を改善すべく、加計学園の件を構造改革特区に指定し、実施に向けて検討を始めていた点も忘れてはならない。すると、鳩山由紀夫氏も「お友達」だったという理屈になる(鳩トモ?)。
ところが、愛媛県元知事の加戸守行によると、「前に進んだよ、さすが民主党」と思っていたら、民主党内に獣医師議連が出来てしまった。そして、日本獣医師連盟は玉木雄一郎衆院議員(現民進党幹事長代理)に100万円の献金をした。
この玉木議員が今、加計学園問題の追及の急先鋒を務めている。こっちのほうが、よほど「業者からの金銭」と「政治家の政治活動」との間に直接性がある。
また、朝日新聞はかねてより「打倒安倍政権」を社是にしているらしく、安倍政権の葬式をうちで出すとか言っているそうだし、同社にネタを売り込んだ前川元事務次官も天下り問題の詰め腹を切らされてから今回の挙に及んだ。彼は文科省の関係する、おそらくもっと重大な腐敗については口を閉ざしており、私怨動機を疑われても仕方がない。
一方、蓮舫代表の民進党は、ここぞとばかり彼らと軌を一にしてこの問題を追及し、国会が紛糾する事態になっている。まあ、安倍政権を詰問したり、調査を要請したりするのはいいが、あまりに「政争の道具」として弄んではいないか。「怪しい」「説明責任を果たせ」と言うだけでなく、告発側ははっきりした証拠を挙げなければならない。
また、官邸側の対応も、何か後ろ暗い点があることを臭わせるものがある。
だから【1】の冒頭で述べたように、これはそもそも「正 VS 不正」の、白黒・善悪の明確な構造ではなく、「不正 VS 不正」であり「正 VS 正」でもある案件だと思う。
よって白黒つけようがないし、議論はこの先も平行線を辿るだろう。
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以上、やや急な調べものだったので、解説に不足や穴、事実誤認などが少なくない可能性はお断りしておきたい。さらに、私はこの問題に関して何ら専門家ではない。拙いながらも識者の意見等を参考しながら、まとめさせてもらった次第である。
次回、この問題を総合的見地から見た【4・結論編】です。つづく。
【加計学園問題】ウィキペディア「獣医学部」を読む
(http://freezzaa.com/archives/1854)
加計学園問題騒ぎ 疑問の声まとめ 超必読の三名五記事の紹介
(http://freezzaa.com/archives/1859)
加計学園 何が問題? 本質をズバリ解説【1・選考における疑惑】
(http://freezzaa.com/archives/1879)
加計学園 何が問題か 事の本質をズバリ解説【2・内部文書の是非】