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今度のアメリカの戦争のやり方は怖いくらいに上手すぎる

米国のへイリー国連大使 2017.9.4の国連安保理の緊急会合にて

9月3日の北朝鮮の6回目の核実験(水爆級)を受けて、マティス国防長官らと国家安全保障会議(NSC)を開いて対応を協議したトランプ大統領は、会議終了直後、記者団から「大統領、北朝鮮を攻撃しますか?」と尋ねられると、次のように答えた。

We’ll see

これは日本のニュースで「そのうちわかるさ」という訳で報道されていた。

でも、私は「(軍事攻撃を)見ることになる」でもいいんじゃないかと思う。トランプ氏は当事者なので、「攻撃することになる」と言っているようなものだろう。

実際、ホワイトハウスでは最初からスケジュールが組まれているようだ。

当記事は、以下の前回の補完バージョンである。

2017年9月11日、北朝鮮との戦争が始まった
奇しくもNY同時多発テロから16年目を迎えた先の9月11日、北朝鮮に対する国連安保理の追加制裁決議が可決した。 北朝鮮が9月3日に強行した水爆実験に対するものだから、異例のスピードだ。その3日後には当初案を各国に提示しているから、米国はかな...

ちょっと経緯を振り返ってみよう。



まず中国をうまく罠に嵌めた

トランプ大統領は今年4月上旬、中国の習近平と首脳会談を行った。そして恩着せがましく中国に「百日猶予」を与えた。

これで中国をうまく「共犯」に引きずり込んだ格好である。

今では周知のように、中朝関係は決定的に悪化した。有事の際、中国が中朝同盟に基づいて北朝鮮を軍事支援する芽をうまく潰したともいえる。

中国はすでに共産党系メディアの論説を通して、アメリカによる対北空爆を暗に容認している。ただし、陸軍が乗り込んでくることは許さない、と釘を刺した。

これはまた見方を変えれば、「中ロ分断に成功した」とまでは言えねども、両国の対北朝鮮政策に微妙なひびを入れる格好にもなった。

余談だが、中ロの利害は元から完全に一致しない。ロシアは帝政時代に沿海州(外満州)を清から奪って以来、中国に日本海へ進出させないことを戦略にしてきた。この沿海州は冷戦時代に中ソ国境紛争の舞台ともなった地域である。

「沿海州をロシアに強奪された」という中国人の被害者意識は今でも強い。

上をご覧のように、中国の視点でいえば、微妙なところで、日本海へのアクセスをロシアにブロックされている格好だ。だから「羅津港」の支配権は中ロの利害が衝突するポイントとなっている。中国がここを手に入れれば、日本海へのフリーパスを手にしたも同じ。中国海軍が日本海の制海権を手中に収めると、ロシアとしては極東経済の生命線を握られる格好になってしまう。だから北朝鮮に関して中ロの利害は一致しない。

もともとそういう下地があったわけだが、トランプ政権は対北制裁仲間に中国を引きずり込むことで、中ロの“半分断”に成功したと言えるかもしれない。

だから中国が「百日猶予」の間に北朝鮮を何とかできなくとも構わないし、だいたいアメリカのほうも始めから中国がハンドルできるとも思っていない。

北朝鮮を孤立に追い込みつつ武器の売り込みにも成功

そして、その猶予期間が終わったのが7月の半ば。

直後の8月の初めから、アメリカは北朝鮮に対して本格的な兵糧攻め作戦を開始した。

まず8月5日の安保理決議で、北朝鮮の輸出収入の3分の1を削った。

次に前回の記事で述べたように、9月11日の決議によって一挙にその比率を9割に持っていった。今後、北朝鮮の収入は以前の1割に激減するだろう。

つまり、アメリカは、ほとんど1ヶ月で北朝鮮の糧道を断ってしまった。石炭・繊維製品の輸出、労働者派遣・・最大の収入源にして貴重な雇用の場は壊滅した。これで社会不安が増大し、内政面からも金正恩はますます追い詰められていくだろう。

しかも、これは安保理の「全会一致」採択である。アメリカが勝手に小国を苛めているわけではなく、あくまで「国際社会の総意」という形に持っていったのだ。

一国の経済を破滅に追い込む策でありながら、ロシアですら孤立することを恐れて制裁決議賛成に回らざるをえなかった。

しかも、そうやって脅威を高めている間、アメリカはちゃっかりと日韓への武器セールスにも成功している。

韓国の文政権は、THAAD(終末高高度防衛ミサイル)の在韓米軍への配備に対して、従来の2基だけでも拒絶反応を示していたのに、突然、4基の追加を決定した。アメリカは韓国に対して費用負担を求めていく交渉をすると発言している。

また、日本の防衛省は陸上配備型の「イージス・アショア」の導入を決定した。

THAADは1基1千億円。イージス・アショアは1基800億円(日本全土のカバーには最低2基必要)。どちらもロッキード・マーチン社製である。

今現在、トマホークミサイルの商談が始まっているようだ。

どうやら、ギリギリまで同盟国に武器を買わせるつもりらしい。

「最初の一発を撃たせろ」

以上のように、トランプ政権は、戦争のやり方が非常に巧みだし、狐のように狩りが狡猾だ。ブッシュ政権の時の稚拙さとは雲泥の差である。

しかし、就任したばかりの、しかも政界未経験のトランプが、本当にこれだけの戦略を考えることができるのだろうか。

やはり、未経験者にしてはあまりに上手すぎる。これはトランプの脳みそでありえない。背後に戦略家が隠れていて、大統領を振付けているように思われる。

しかも、かなり以前から入念に準備・計画しないと、こうはうまくいかない。

それにしても、アメリカがそうまでして大義名分の完全性にこだわる理由は何だろうか。こうまで慎重かつ用意周到に事を進める理由は何だろうか。

前々から言っているが、やはり核戦争になると分かっているからではないか。核兵器を使用して朝鮮人を虐殺することになると知っているからではないか。

だから、アメリカとしては、一分の隙もないようにしなければならない。だから、入念に計画して、「最初の一発」は北朝鮮に撃たせなければならない。

北朝鮮は今まで、ラングーン爆破テロ、大韓航空機爆破テロ、延坪島砲撃などのテロや攻撃を行ってきた。北朝鮮からしたら、これは「先制攻撃」というより、「ちょっと相手の顔を一発殴ってみただけ」というつもりだろう。

おそらく、アメリカはこれを待っている。この北朝鮮の、いつもの「挑発」や「暴力」を最初に引き出しておいて、日米韓などに死者が一人でも出れば、そこから報復という形で「実戦」へと移行していくつもりではないかと思われる。

こうすればアメリカ側の政治的正当性は万全になる。あらゆる新兵器の実戦テストを行い、相手に核兵器を使用することすら、政治的に可能になる。

だから、大義名分だけは何が何でも手に入れておかねばならない。「収入9割減」という今回の「兵糧攻め」も、相手を極限まで怒らせる目的もあるに違いない。

「さあ、早く最初の一発を殴ってこい」

アメリカは今、こう思っている。

そして北朝鮮はそれに乗せられて、近々「何か」やらかしてしまう気がする・・。

Takaaki Yamada: