先日、楽しみにしていた映画「空海 -KU-KAI- 美しき王妃の謎」を鑑賞した。
意外や意外、名探偵コナンならぬ“名探偵空海”な内容であった。
「空海 -KU-KAI- 美しき王妃の謎」予告1
当初、ドタバタとやけに忙しい感じで、しかもCGを使った妖術の類いが臆面もなくこれでもかと出てきて、ちょっと子供っぽい作品かなという感じはした。
その辺りで、好みが割れる作品だと思われる。
ただ、私のように中国史好きには、それを補って余りあるものだった。
原作の夢枕獏氏といえば、陰陽道の安倍晴明ブームの火付け役となった作家だ。
この作品でも方士が登場する。方士というのは、中国版のオカルティスト・魔術師・錬金術師の類いで、始皇帝が不老不死の霊薬を求めた頃から活躍していた。
まあ、歴史ファンタジーだと割り切れば、見て損はないと思う。
「空海 -KU-KAI- 美しき王妃の謎」予告2
唐の時代のオールスター総出演
しかも、私が以前に書いた大明宮に関する記事と繋がっていた。
(前略)国際的な帝国らしく、長安には仏教寺院だけでなく、ゾロアスター教やマニ教、ネストリウス派キリスト教の寺院まであったといいます。朝廷にも様々な民族出身者が取り立てられました。阿倍仲麻呂は中国名を持ち、秘書監にまで出世しました。武将の安禄山はソグド系で、高仙芝はチベット系だったと言われています。
このような帝国ですから、唐は「東アジア文明」の基盤ともなりました。
(略)もっとも、玄宗時代の前半は絶頂期(開元の治)でも、後半からは斜陽化しました。絶世の美女の楊貴妃を寵愛するあまり、彼女の一族の楊国忠の専横を許しました。彼と対立した三州(今の北京や遼東あたり)の節度使の安禄山は挙兵し、いったん洛陽を落として皇帝を僭称します。さらに長安を襲ったため、玄宗一行は都を逃れました。
この時を詠んだのが白居易の『長恨歌』です。西南に逃亡すること百余里のところで、将兵の怒りが爆発します。「こうなったのは楊国忠のせいだ」と。彼らは楊国忠を斬り、さらに楊貴妃も殺すよう、玄宗を突き上げました。皇帝は泣く泣く彼女を殺すように命じました。もっとも、楊貴妃が日本に逃げてきたという伝説が日本各地にあります。もしかして身代わりを立てて彼女を逃がしたのかもしれませんね。
この記事で、
阿倍仲麻呂、安禄山、玄宗、楊貴妃、白居易、楊国忠、
といった人物を取り上げたが、なんと全員が登場するのだ(ただし楊国忠は首だけ)。
そこに空海も加わり、なんと白居易と探偵コンビを組む。
白居易の先達として、盛唐時代の詩人・李白も登場する。
まさに歴史上のオールスター総出演である。それぞれが生き生きと描写されている。
原作は未読だが、時代設定は、おそらく空海の長安入りから間もない805年の春頃と思われる。すでに「安史の乱」の鎮圧から40年は過ぎている。
簡単にいえば、当時の人々は楊貴妃の死の真相を知らないという設定になっている。
都から避難する道中、将兵の謀反が起こったが、その時、本当は何が起きたのか。
楊貴妃はどのようにして亡くなったのか。死んだのか、生きているのか。
空海と白居易は、都で頻発する怪死事件と化け猫との関わりを調査し、その真相に迫っていく。果たして、幻術使いの方士や阿倍仲麻呂は、どう関わってくるのか・・。
とまあ、こういうストーリーだ。作家の夢枕獏氏の発想とアイデアは実に凄い。
大唐帝国と今の駄目ダメ共産中国
さて、映画の舞台設定はすでに晩唐の頃だが、それでも長安の繁栄というか雰囲気がよく描けている。当時、人口は100万をゆうに超えていたという。
「開元の治」の、退廃的ともいえる唐の絶頂期の様子は、空海と白居易の“回想”として登場する。玄宗が臣民を招いて無礼講の宴を催す場面だ。打ち上げ花火が登場するのは考証的にどうかと思うが、それでも玄宗が楊貴妃と戯れたり、方士が幻術を披露したり、李白が詩を詠んだりする場面は、まるで中国版のアラビアンナイトのよう。
登場人物と文明の爛熟ぶりは、中国史が好きな人にはたまらない場面だろう。この時代に生まれて、このような夢の一夜を過ごせた人は、まことに神の恩寵に浴したのだ。
もっとも、中国人から見ると、いかにも外国人が描いた唐であり中世中国だと感じるらしい。ただ、それでも映画はおおむね好評だそうだ。やはり、中国人以外でここまで中国文明をきっちりと描ききれるのは、日本人くらいのものだと思う。
「大明宮(DAMING PALACE)の紹介」でも述べたが、この時代は国際性・開放性において、今の共産中国とは対照的である。
日本の左派や自称リベラル派たちは、まともに中国史を知らないから、平気で毛沢東や今の習近平を賛美したりする。私に言わせれば、鳩山由紀夫みたいな“親中派”こそ中国を分かっていない。最近、習近平は国家主席の任期制を廃した。自称リベラル派たちはこんな独裁者を褒めちぎっていたわけだから、いかに「逆神」かということだ。
ところで、中国は国力が膨張期の頃はよく周辺地域を侵略する。
玄宗の時代には、武将の高仙芝がサマルカンドの近くまで遠征した。唐の国力(補給能力)あってのことだ。そして、イスラム帝国の軍勢と衝突した。当時の世界の二大帝国の激突である。タラス河畔の戦いは製紙法が西方世界に伝わるきっかけとなった。
今、習近平は「一帯一路」を掲げて南シナ海やインド洋を侵食しつつある。
これに対して、安倍政権は「多国間連携の強化による中国包囲網の形成」という、至極妥当な戦略を取っている。これはおそらく、どんな国でも日本と同じ立場に立たされたら取るという戦略である。「中国の機嫌を損なう」などと文句をつけている河野洋平や自称リベラル派は頭がおかしい。河野洋平は早く1200億円を弁償せよ。
「神韻」(SHEN YUN)を見て打倒共産党一党独裁に支援を
さて、まだ見ていないので、付け足しになってしまうが、
私としては、この「神韻」(SHEN YUN)の日本公演も楽しみである。
すでに4月の公演の席を予約済み。
どうやら、反共を掲げる大紀元・法輪功系の楽団らしい。
私に言わせれば、法輪功というのは、どうということのない無害な教えの団体だが、時の江沢民政権から危険視されて、徹底的に弾圧を受けた。
法輪功程度が「危険なカルト」なら、日本中の新興宗教が邪教になる。
こういう不寛容さ・信教の自由の弾圧・信者への拷問迫害という事例をもってしても、共産党独裁体制がいかに狂ったものであるかが分かる。
だから、今「親中派」を自称する政治家だの知識人だのは、アホなのだ。本当に中国人民の側に立っていない異様な「エセ親中派」なのである。
そういう輩の特徴は、やたらと習近平を褒めることだ。心底、馬鹿だと思う。
中国では王朝の交代期に入ると、強大な宗教団体が跳梁跋扈し、反乱に一枚噛む。
黄巾の乱、白蓮教徒(紅巾)の乱、太平天国の乱、義和団事変、などなど。私に言わせれば、共産党も立派な?宗教団体である。
日本にまともなインテリジェンスがあれば、今のうちに「将来の自由中国の巨大票田たりえる宗教団体(法輪功)」と関係を持ち、支援するはずなんだがな。
せめて私たち反独裁の市民は、「神韻」(SHEN YUN)を見て支援したいものだ。