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今度のアメリカの戦争のやり方は怖いくらいに上手すぎる パート2

大坂夏の陣図屏風

前回は「金正恩の役者ぶり」を称え(?)ましたが、しかし役者度でいえばトランプのほうが一枚上手だと思います。

なぜなら、彼はアメリカの真の方針を完璧に隠している。

前回の記事の締めくくりで、アメリカの本音は北朝鮮との開戦であると述べました。

以前に下のような記事を書きましたが、続編を書く必要が出てきました。

今度のアメリカの戦争のやり方は怖いくらいに上手すぎる
9月3日の北朝鮮の6回目の核実験(水爆級)を受けて、マティス国防長官らと国家安全保障会議(NSC)を開いて対応を協議したトランプ大統領は、会議終了直後、記者団から「大統領、北朝鮮を攻撃しますか?」と尋ねられると、次のように答えた。 We'l...



北朝鮮を詰ませて対話のテーブルにつかせたアメリカの手腕

輸出収入9割断ちの「9・11制裁」以来、すでに7ヶ月以上が過ぎています。

アメリカが戦争するつもりだとしたら、これは理に叶っている。

要は、経済制裁を続けてどんどん敵を弱らせているわけです。

しかも、国力を奪って弱体化させると同時に、交渉に乗ってくるように仕向ける。実はこれが、相手から先制攻撃して来なくとも、うまく開戦の口実になる仕掛け。

アメリカは、「核放棄しない限り、経済制裁は永遠に続けるぞ。しかし、核放棄するなら首脳会談に応じてやってもいいぞ」と、ささやき続けた。

そうやって、いったん対話のテーブルへ北朝鮮を追い込んだわけです。

しかし、これは罠。そして北朝鮮はまんまと罠に嵌ってきた・・というか、提案に乗らざるをえなかった。なにしろ、ジリ貧の構図が続けば結局、自滅する以外に道はない。

しかしながら、他方で、核放棄といえば、戦わずして全面降伏するようなもの。とくに「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」とは、外国に対して国を明け渡すに等しい。

だから、北朝鮮としては、経済制裁が続くのも嫌だが、核放棄するのも嫌だ。

右に行っても、左に行っても、破滅しかない。北朝鮮は詰んでしまった。

しかも、核放棄しても、巨額の経済的見返りが必ずしも約束されないとあっては、いくら独裁者でも現実には政治的にほとんど実行不可能でしょう。

つまり、無理難題の類い。アメリカはそれを承知でやっているわけです。

まあ、悪いのは北朝鮮ですから、同情に値しません。

日本に向けてミサイルは撃つ、調子に乗って米本土を攻撃するぞと公に脅す・・これは致命的な過ちでした。自衛権に基づく予防的戦争の口実を米に与えた格好です。

妥協なしの非核化要求と「首脳会談を決裂させたら攻撃」という脅し

さて、米朝首脳会談を行うにあたり、アメリカは強硬な姿勢を表明している。

金正恩は機先を制するかのように核・ミサイル実験の停止・核実験場の廃止を表明しましたが、トランプ大統領はその決定を評価しつつも、一方でそれだけでは見返りは与えないこと、あくまで核放棄のための即時行動を迫る方針であることを表明しました。

しかも、河野外相が出席したG7の外相会合でも、北朝鮮が核放棄しないと見返りは与えないという方針が確認され、西側先進各国も完全にトランプ政権に同調した。

トランプ大統領は、目的は「核兵器を除去すること」と明言。しかも、任期中の2020年までに。「核ゼロ」には核関連工場・施設の解体も含まれている。

核開発の「凍結」だけでは一切の見返りは与えない。目的はあくまで完全かつ不可逆の非核化。そのための具体的行動が無い限り、最大限の圧力を維持する方針です。

しかも、それだけではない、驚くべき方針を示している。

米「米朝会談決裂すれば“北”攻撃」と日本に説明 2018427

(前略)先週行われた日米首脳会談で、アメリカ側の出席者が、「米朝首脳会談が決裂すれば、軍事攻撃に踏み切るしかない」と日本側に伝えていたことが、FNNの取材で明らかになった。

これは機密というより、意図的なリークでしょう。つまり、わざわざ北朝鮮に伝わるようにしている。いや、そういう意図があるなら、マイク・ポンペオCIA長官が事前に平壌入りした際に、すでに金正恩に直接口頭で伝えているに違いない。

要は、完全非核化の要求を飲まなければぶっ殺すぞと、脅している。リビアのカダフィの前例がありながら、リビア方式を強いるのだから、ほとんど鬼畜(笑)。

かくして、米朝首脳会談は、北朝鮮にとって命のかかったイベントになってしまった。

アメリカは北朝鮮に「空約束作戦」をさせ、圧倒的優位下で開戦する

いったいどうすればいいか・・・。

私は北朝鮮が「時間稼ぎ戦術」を選んだのではないかと推測しました。

とりあえず核放棄をすると約束して、とにかく時間を稼ぐ。その間に、トランプ政権が倒れるとか、中東で先に戦争になるといった、状況の急変を期待する作戦だ。

というより、もはやそれ以外に策はない。

つまり「空約束作戦」が彼らの答え。

しかも、韓国も共犯として、南北共同で時間稼ぎ戦術をしている疑いもある。文政権は北のエージェント政権だから、一緒に国際社会を欺いている可能性が高い。

よって、米朝首脳会談はいったん合意に達する可能性が高いと思います。

それに朝鮮戦争の終戦協定とか、在韓米軍の撤退とか、南北の交流促進とか、諸々の条件も付随して、さぞかし平和ムードが盛り上がることだろう。

しかし、これは偽りの平和でしかない。アメリカとトランプも役者。彼らは「北朝鮮がまた騙しにかかるだろう」と見抜いている。なぜなら、北朝鮮の行動は「相手を欺く」という点で常に一貫しているからです。だから「対話」のテーブルに着いた北朝鮮が「空約束作戦」を繰り出してくることは承知している。承知の上で追いやった。

CIAが北朝鮮の製造した兵器級核物質の量を正確に見抜いているのか、それとも査察段階で北朝鮮の嘘や隠蔽工作を見抜く自信があるのか、どちらかは分かりません。

いずれにしてもアメリカはどこかの時点で必ず北朝鮮の空約束を見破る

この時点で開戦したら、アメリカは2017年に開戦するよりも圧倒的に有利になります。なぜなら、北朝鮮は長引いた経済制裁で国力が疲弊し、しかも入り込んだ査察チームが軍の正確な配置や秘密基地の存在などの軍事機密情報をかなり入手するからです。

しかも、在韓米軍を撤退させたら、米軍死傷者も減らすことができる。一石数鳥。

私はふと400年前の「大坂の陣」を思い出しました。

徳川側は、1614年(慶長19)の大坂冬の陣と、翌1615年(慶長20年)の大坂夏の陣の「二段構え」で、豊臣勢力を滅ぼしました。

20万の大軍でも大阪城を攻め落とすことのできなかった徳川方は、いったん講話して冬の陣を終わらせます。秀頼ら豊臣家の身の安全と本領を保障して、その代わり外堀を埋めさせました。で、圧倒的に有利な条件を整えてから、攻め滅ぼしたんですね。

というわけで、結局は開戦時期が伸びるだけの話だと思います。

Takaaki Yamada:

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