4月27日、板門店での歴史的な南北首脳会談が行われました。
金正恩の役者ぶりは堂に入ったものでした。
テレビの向こう側にいる韓国人やその他の国の人々の警戒心を解いて親しい印象を与えるにはどう振る舞い、どんな言葉を発すればいいか、実によく計算している。
とうてい地球上で最悪レベルの人権弾圧を行っている独裁者とは感じさせないもので、事前にプロから相当なレクチャーを受けたのでしょう。
案の定、もともと習近平や金正恩よりも安倍総理のほうが独裁者に見えるらしい「ウルトラ色眼鏡」をかけた自称リベラル派などは、金正恩賞賛一色のようです(笑)。
彼らは「人権」という価値観を掲げているが、実際には人権なんてどうでもよく、特定の政治目的のために活動しているだけということがよく分かります。
北朝鮮は核の放棄に関して何の約束もしなかった
さて、両首脳は「板門店宣言」なるものに署名しました。
「南と北は、完全な非核化を通じて、核のない朝鮮半島を実現するという共同の目標を確認した」
「朝鮮半島の非核化のため、国際社会の支持と協力を得るよう努力する」
「今年中に終戦を宣言し、休戦協定を平和協定に転換する」
その他、南北米3者また南北米中4者会談の開催、南北首脳で定期的に会談、文在寅大統領が秋に平壌を訪問、などの条件が記載されています。
本来、今度の北朝鮮と国際社会の対立における焦点は「北朝鮮の核問題」です。米をはじめとして国際社会は「北朝鮮の非核化」に最大の関心を持っている。
ところが、この宣言には、非核化に関して「目標を確認した」だの「努力する」だのという内容が記してあるだけで、何らの義務も、具体性もない。
つまり、北は核放棄の約束は一切していない。それに関する一切の義務も背負わなかった。よって、これでは「何もしない」と言っているのと同じです。
つまり、最大の焦点の非核化に関しては、板門店会談は何の意味もなかったわけです。
韓国が北朝鮮をかばって共犯をやっている疑い
「北朝鮮からすれば、それに関する交渉相手は、韓国ではなくアメリカなのだ」という見方もありますが、本当に核を放棄する決意なら、別に板門店宣言で謳うことに何ら躊躇する必要はないはずです。むしろ世界が大注目する今の時点で発表したほうが、ウケがいいはずです。にもかかわらず、なぜ「共同の目標を確認した」などという、「あそこにあるものを見ました」みたいな行動性に欠く表現に留める必要があるのか。
しかも、韓国と一緒という形で・・・。私はここに疑いを持つ。
今まで、北朝鮮は散々、国際社会を騙してきました。
今度は、もしかして、南北が共同して国際社会を騙しにかかろうとしているのではないか、つまり韓国も共犯ではないか・・・そんな推測が浮かんできます。
まず、左派でノ・ムヒョン氏の後継者である文在寅大統領自身が、北朝鮮のエージェントである可能性がある。そして、北朝鮮の劇的な路線転換にしても、韓国側が親書を送り、北朝鮮との間で何らかの極秘の調整を行ったことが発端になっている。
南北共同の時間稼ぎ戦術の可能性
「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」とは、北朝鮮が核兵器をどこにいくつ隠し持っているか等を正直に申告し、一定の期限内に破棄することを意味しています。
こうしないと、日米などの「最大限の圧力」が続いて、北朝鮮はジリ貧になって自滅するしかありません。しかも、今度は日米も譲歩しない。アメリカなどは「米朝首脳会談が決裂すれば、軍事攻撃に踏み切るしかない」とまで明かしています。
だから私は「北朝鮮は将棋でいえば詰んでいる」と言っている。
将棋で詰むと、どの選択をしても「負け」です。
ただし、今回のケースが唯一、将棋と異なる点は「時間稼ぎ」ができる点です。
そして、ずるずると「負け」の結果を先延ばしにしているうちに、ゲームの構造そのもの劇的に変化することもある。これが現実の国際政治です。
実際、ブッシュ政権の時がそうでした。アメリカは、もともとイラクの次に北朝鮮を攻撃する予定でしたが、攻撃を先送りしているうちに状況そのものが根幹から変化しました。そしてブッシュ政権からネオコンがパージされて、北朝鮮は難を逃れたのです。
その時間稼ぎ戦術に協力した疑いが濃いのが時の小泉総理です(以下参考記事)。
当時の事例は、北朝鮮にとって「ラッキー」であり「成功体験」として強く記憶されているはずです。よって、今回もずるずると「負け」の結果を先延ばしにして、その間に状況が急変するといった事態を期待しているとしても不思議はない。
実際、トランプ政権は、メディアから攻撃され、崩壊しかかっている。
だから、今回は、米朝で核放棄に合意したあと、査察などの段階で、できるだけ遅滞するよう、微妙な抵抗や妨害を仕掛けるつもりかもしれない。あるいは、兵器級の核物質を完璧に隠して、査察チームを欺き通せる自信があるのかもしれない。
しかも、過去の成功体験を繰り返すにあたって、今回は韓国も共犯として加わっている。いや、それどころか、韓国側が入れ知恵した可能性すら疑われる。
動機は十分すぎるほどあるでしょう。言ったように、文在寅大統領自身が北朝鮮との繋がりを疑われる人物。しかも、アメリカが北朝鮮に対する軍事攻撃を始めたら、北朝鮮だけでなく、南も含めて朝鮮半島全体が火の粉に包まれかねない。
考えてみれば、不思議でも何でもありません。なにしろ、日本からすれば、今まで何度も騙してきた前科があるのは、北朝鮮だけでなく、韓国も同じだからです。
しかし、南北共同で国際社会を煙に巻く作戦は失敗するだろうと思います。
その理由はなぜか。それは、アメリカの本音が、朝鮮半島の平和を構築することではなく、戦争することにあると確信するからです。
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