ベトナムの首都ハノイで行われた第2回米朝首脳会談は物別れに終わりました。
まず事実関係だけ整理したいと思います。
2月28日、昼食会と合意文書署名の予定が突然、キャンセルされました。
トランプ大統領は記者会見において、「北朝鮮が制裁の完全な解除を要求してきた」と述べた上で、現段階ではそれに応じられないと述べました。
ただし、首脳同士の個人的な関係が良好であることはアピールしました。
非核化の進め方をめぐっては、北朝鮮側がニョンビョンの核施設を廃棄すると提案したものの、アメリカ側はあくまでウラン濃縮施設を含む「他の核施設」の廃棄も要求し、その点で意見が対立して、双方妥協せず、最後には物別れに終わったようです。
翌日、トランプ氏の記者会見に反論する形で、北朝鮮の李容浩(リ・ヨンホ)外相と崔善姫(チェ・ソンヒ)外務次官が異例の記者会見(質問は抜き)を開きました。
「わが国は、制裁の完全な解除ではなく、一部(民生・民需用の制裁5件)の解除を求めたにすぎない」という趣旨です。ニュースでは制約上、二人の発言をかなり切り取っていますが、やはり全文を読んだ上で判断しないとフェアではありません。
チェ・ソンヒ外務次官は最後のほうで、金正恩氏の本心を代弁する形で、「国務委員長同志は今後の朝米の交渉に意欲を失われるのではないか」「今後、こういう機会が、アメリカ側に設けられるかはお答え申し上げにくい」と、含みのある発言をしています。
原則を曲げなかったアメリカとそれを読みきれなかった国内識者
といわけで、この記事を執筆している現在、金正恩は列車での帰路にあります。
要するに、アメリカの対朝姿勢は「完全な非核化が行われない限り、経済制裁が解除されることはない」という当初のスタンスから何も変わっていないということです。
今回、人道支援にかこつけて一部の経済支援程度なら再開するかもしれないという話が飛び交っていましたが、それですら貿易の再開を望む北朝鮮の要望からは程遠い。
この結果を見ると、トランプが焦っているとか、手柄が欲しくて譲歩するとか、米朝融和の流れがさらに加速するとか、日本だけが取り残されているといった、国内での事前の論調は何だったのかと首を傾げたくなります。要は、メディアに登場するジャーナリストや大学教授、コメンテーターだからといって、当てになるとは限らないわけです。今回は「北朝鮮には一切支援しない」と事前に明言した安倍政権が影の勝者かも知れません。
そもそも、北朝鮮は、今まで5回も「非核化する」といって、約束を破ってきた。
そのうち、数回は国際社会からの援助を騙し取ってきた。
しかも、文書で約束しても、あとから平気で破る。この点では南も同類。
だから、今度こそ、まず非核化を「実行」して見せなければならない。核査察を受け入れ、合格をもらわなければならない。少なくとも西側はその方針で一致している。
しかし、北朝鮮は、本心から非核化する意志はないのに、「今回も騙せる」とタカをくくり、口約束の虚言を弄して、ずるずると寝技に持ち込もうとしたわけです。
日米の担当者はそのことを熟知していて、もはや騙されない。
北朝鮮と、日本の識者やメディアは、その辺を甘く見ていたのではないか。
北朝鮮は戦略面で大きく敗北しているという現実
ただ、今回、マスコミは正しい情報も流していました。
それが「経済制裁で北朝鮮がいかに苦しい立場に追いやられているか」です。
2017年9月11日、国連安保理は北朝鮮に対して輸出収入の9割を断つ経済制裁を課しました。兵糧攻めは「実戦前戦争」の一手段。つまり、戦争の一環です。
だから、私は、この「9・11制裁」をもって「広義の戦争が始まった」と評しました。ただ、そういう評をしたのは私ぐらいのようで、戦略面から「9・11制裁」を高く評価する識者やメディアはごく小数派でした。しかし、それから1年半が過ぎてみれば、北朝鮮が外貨不足と国内の不満の増大でかなり動揺してきたことが見て取れます。
しかも、北朝鮮が完全非核化しない限り、経済制裁は一切解除しないという点で、国際社会は一応の合意を維持しています。後になってから、それがマズイと感づいた中ロ韓が「瀬取り」などの密貿易をしていますが、日米英仏加豪の「西側連合」は安保理決議に基づいて堂々、その瀬取りの監視・取締りを実施しています。
思えば、この安保理決議は、安倍総理の肝いりで、各国に必死で根回しして実現したものでした。つまり、日米外交当局の成果です。これはまた「非核化を実行しない限り、兵糧攻めが続く」という「仕組み」を作ったと言えるでしょう。
この「仕組み≒フレーム」内に閉じ込められた北朝鮮は、現実には2017年9月以降、時間が経つほどに経済制裁で弱る一方の立場に苦慮しているわけです。
非核化を「実行」しないと、この「檻」から出してもらえないわけです。
しかも、トランプ外交は、第1回の米朝首脳会談で、金正恩に非核化を公約させた(契約ではなく一応は合意アグリーメントですが)わけです。
さらに、北朝鮮は時間が経つほどに弱っていくわけだから、仮に米朝が完全決裂して実戦になったとしても、アメリカ的には戦争面でも有利に働くわけです。
これは北朝鮮が「詰んだ」構造であると、かつて私は評しました。
そして、今回、トランプ政権はそれを再確認した。金正恩もまたその構造そのものを結局は突破できなかったことを思い知ったでしょう。
北朝鮮側のあがきと日本国内の対北協力者の策動
北朝鮮は内心では非常に困っているわけです。
なぜなら、本音では非核化するつもりはない。しかし非核化しないと、永久に国連安保理の大義の下で経済制裁され続ける。しかも、6・12会談で非核化の口約束までさせられた。時間が経てば経つほど自分たちは弱っていく。しかし、日米は黙ってそれを眺めていればいい・・。自国こそが敗者であることを、北朝鮮自身が一番よく知っている。
そこで北朝鮮が力を入れているのが日韓での「工作」なのです。
たとえば、「はじめに北朝鮮の非核化ありき」が西側の原則なのに、文政権はそれを無視した融和を図っている。日本海でのレーダー照射事件は、どうやら「瀬取り現場」を撮りに来た自衛隊の哨戒機を威嚇した事件だったようだ。
そして、日本国内においては、北朝鮮の世論工作者とその手先系日本人が、その「融和の流れ」なるものが国際社会のトレンドであるかのように誤喧伝し、日本は和解ムードから取り残されるなどと吹聴する。日本人の心理的弱点にうまくつけ込んで、あろうことか、戦略的優位に立つ日本が「国際社会から孤立」しているなどと、強迫観念を植え付けようとする。
毎度のことですが、手先系は事実を語らず、日本人を騙して、自己中心的な民族的願望に利用しようと企みます。こういう「半島カルト」の洗脳手口は、今では広く認知されるようになり、人々は従来のように彼らの嘘に騙されなくなりました。
しかし、依然としてその洗脳の片棒を担ぐ、新聞記者だの自称アクティビストだの大学教授だのが多いのも事実で、まだまだカルトの詐欺師には注意が必要です
「しばらくすると、必ずトラブルになる。」との去年の予測
さて、今後のことを考えてみましょう。
私は2018年の第1回の米朝首脳会談の直前、次のように記しました。
そして第1回会談の直後、次のように記しました。
(前略)今回の米朝交渉は、北朝鮮側の無条件降伏とまでは言わないが、「半無条件降伏」くらいは言ってもいいんじゃないでしょうか。
ま、アメリカが突きつけたハルノートを飲んだ、ということでしょう。
巷間には「米朝が従来の敵対関係を解消して友好的な関係の樹立へと舵を切った。これで朝鮮半島に平和がもたらされる」と、感動している人たちもいる。
美談だと信じるのは個人の勝手ですが、戦いなき降伏・無血開城の合意の類いを指して「米朝の和解」とか「平和」と呼ぶなら、たしかにそうかもしれない。しかし、それは北朝鮮側が負けたという情けない実態を隠すものでしかない。さらに言うなら、これは二重に表面的な見方でしょう。
何度も言っていますが、北朝鮮はどうせ完全非核化なんか実行しないし、政治的にもできない。
つまり、空約束。しばらくすると、必ずトラブルになる。
有力な脱北者によると、北朝鮮が経済制裁に耐えられるのは2年くらいらしい。
「9・11制裁」から2年後というと、今年の9月。まあ、瀬取りなどの対症療法もコソコソとやっているから、もって今年一杯といったところでしょうか。
私はずっと前から「北朝鮮内部でクーデターが起きない限り、最後には戦争になる」と言っていますが、幸いというべきが、まだ韓国内であるが、金体制打倒を呼びかける運動が始まったようだ。戦争になるより、内部的な闘争・政権交代のほうがずっとマシ。
「自由朝鮮」Free Joseonというのは、素晴らしい響きではないだろうか。
独裁体制を支えて結果的に朝鮮人民を塗炭の苦しみへと追いやっている在日コリアンと手先の日本人は恥を知れ! きさまらに歴史の裁きが下る日は近い。