北朝鮮は最初から「完全非核化」なんかする気はない

外交・安全保障




みなさん、こんにちは。

最新の情勢では、やはり北朝鮮が「一方的に核放棄できるか」などと言い始めた。

先んず、米韓軍事演習を理由に南北閣僚級会談を中止し、そして朝鮮中央通信はキム・ケグァン第1外務次官の談話を伝えた。

それによると、

「トランプ米政権が一方的な核放棄だけを強要しようとするなら、われわれはそのような対話にもはや興味を持たないだろう。」

「朝米首脳会談に応じるかどうか再考せざるを得ない」

「朝米関係改善のため誠意をもって朝米首脳会談に臨む場合、相応な対応を受けることになる」

「われわれは、朝鮮半島の非核化の用意を表明し、そのためには米国の敵視政策と核脅威による恐喝を終わらせることが先決条件になると数度にわたって明言した」

「米国はわが国の寛容な措置を弱気の表れと誤解し、彼らの制裁と圧迫攻勢の結果だと主張している」

そして、ボルトン補佐官などが「リビア方式」や「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」の実現を主張していることに対しては、

「対話を通じて問題を解決するのでなく、大国に国を委ねて崩壊したリビアやイラクの運命をわが国に強要しようとしている」

要するに、対話のテーブルを人質にとって、米国側が譲歩しろ、とけん制しているわけです。人の責任を声高に主張して強請り・タカリを成功させる・・いつもの手口です。

ただ、部下に言わせて金正恩の責任外としているところに、内心で米の顔色をうかがっている様子が分かる。トランプが「じゃあ対話はなしだ」と言い出したら、「あれは部下が勝手に言ったことだ」とでも弁明するつもりでしょう。

それにしても、

「南北は宥和ムードだ、日本だけ対話のテーブルにつけない、日本は蚊帳の外だ、日本は植民地支配を清算しろ」

と言っていた連中は何だったのでしょうか。

北朝鮮と同じ思考、同じ言葉を使う手先系の連中ですね。

今までもそうだが、この連中の言うことの逆が真実です。



なぜ自ら核物質と核弾頭を差し出すと提案しないのか?

そもそも、北朝鮮が本当に核放棄する意志があるなら、米および国際社会に対して、最初から次のように提案・公約するはずです。

「これまで製造した兵器級の核物質と核弾頭を差し出します」と。

それが真っ先に来なければおかしい。

3月はじめ頃に“非核化対話路線”に転換してすでに2カ月が経過するが、そんな約束は一切していない。代わりに「朝鮮半島の非核化」なる曖昧な概念を振り回すだけ。

2カ月もの時間があれば、とっくに非核化の第一段階は終わっていた。

つまり、最初から核放棄を実行する意志なんかないわけです。

しかし、アメリカは「核放棄しなければ攻撃する」と明言している。

だから、とりあえず「空約束」して急場をしのぐほかない。

そのために平和の道化師を演じてみせる・・そういう北なりの生存戦略なのです。それ以外に生き延びる方法がない。やらざるをえないから、やっているだけ。

前も言いましたが、南の文政権も共犯者です。

先日東京で開催された日中韓首脳会談では、韓国側の反対で、3カ国共同宣言には「完全で検証可能かつ不可逆的な非核化」の文言が挿入されませんでした。

また、韓国側が北朝鮮の「瀬取り」を手伝っていること、又は黙認していることが分かってきた。こんな南北の「蚊帳の中」に入るほうが正気の沙汰ではありません。

追い込まれた北朝鮮の生存戦略を推察する

あくまで私の推測と断っておきますが、どうも米の軍事行動が避けられないと確信した北朝鮮・金正恩政権は、次のような方針で動いているのではないかと思います。

第一に、味方を作り、国際社会を分断する。

これによって対北政策をめぐって互いに論争させるわけです。まず平昌五輪を利用して、平和とか同じ民族というムードを演出して、うまく韓国を取り込みました。また、韓国だけでなく、とくに日本の場合だと、例によってメディアや知識人などを使い、北朝鮮の擁護・代弁をさせます。敵の内部にいる味方を使って、世論操作をするわけです。その他、対中政策も大転換しました。あえて習近平に臣従する真似をして、味方につけました。ちょうど中国も、習近平政権二期目に入ったところで、トランプ政権から露骨に経済と安全保障面で仮想敵国指定されたため、両者の利害の一致という形で、早期の対北方針の転換に繋がりました。

第二に、米朝首脳会談にむけて、事前段階で相手を自分のペースに引き込み、妥協させる。

トランプ政権は「リビア方式」と呼ばれる一挙非核化を突きつけていますが、これを「段階的非核化」へと変え、条件闘争に持ち込みたい。そして、一段階ごとに経済制裁解除や経済支援、米朝国交による体制保証などを得る。つい最近「一方的な核放棄なんかできるか、米朝首脳会談をご破算にする可能性もある」と臭わせ始めたのも、こういう算段からだと思います。先に三人の米国人を解放して宥和ムードを高め、相手の「会談成功への期待値」を高めた上で、それを人質にとる戦術をやっています。それを突然ご破算にすると脅して交渉の主導権を握り、できるだけ有利な条件で合意に持ち込む算段です。

第三に、一応「合意」にこぎつければ、今度は実際の査察段階でまた寝技に持ち込む。

米が求めているのは「いつ・どんな場所・誰でも」自由に査察できる「無条件査察権」です。しかし、一致した見方は、かつてのリビアや南アフリカとは比べ物にならない前代未聞の規模になる点です。それくらい査察対象が膨大にある。その際に、妨害と受け取られない境界線上の行為を通して、査察官を疲弊させ、できるだけ査察を遅滞させる。北朝鮮はこの時にいろんな知恵を総動員すると思われます。たとえば、交通事情が悪化した、担当者が寝込んだ、鍵をなくした、通訳がうまくいかない、等など。

第四に、結末としてAとBのシナリオを用意する。

Aのほうは北朝鮮が望むシナリオ。できるだけ時間を稼ぎ、トランプ政権の崩壊や中東戦争の勃発などの国際情勢の急変を待ち、相手が対北軍事行動をしている余裕がなくなったのを見て取るや、以前のようにちゃぶ台を引っくり返す。「本当は核放棄するつもりだったが、米韓のせいで、できなくなった」と、人のせいにしてご破算にするわけです。

Bのほうは望まないシナリオ。いわば北朝鮮にとって、最大限犠牲を払う最悪のシナリオです。それは一定の核物質や核弾頭を差し出し、部品や核施設の廃棄にも応じて、「これが全部だ」と騙すことです。つまり「一部非核化」を「完全非核化」と誤認させる。実際にはかなりの核物質や核弾頭を極秘の施設に隠匿する。北朝鮮は世界でもっとも秘密の軍事施設を持つ国の一つですから、おそらく隠匿可能と踏んでいる。関係者には家族を人質にして口止めをしておく。

というわけで、北朝鮮は今、上のような方針で動いていると推測します。

つまり、馬鹿正直に全部核放棄するつもりなんか毛頭ない、最悪のケースでもなんとか一部の核放棄に留める腹積もりだ、というのが私の推測です。

6月12日の米朝首脳会談は、表面的には成功するかもしれない。

ショーアップされた舞台で歴史的な合意が成立するかもしれない。

だから何だ、と言っておきます。北朝鮮は、これまでも契約して、あとから翻す、というパターンを続けてきた。書面や条約にサインしても、後から平気で破る。

彼らにとって今度の米朝合意もその程度のものに過ぎない。本質は詐欺国家です。

とりあえず核放棄の約束だけはして、日米の市民と国際社会を信用させる。しかし、完全非核化なんかする気はまったくない。とことん人を騙せると信じている。なぜなら、それが彼らの今までの成功体験だから。

それゆえ、合意が成立しただけで、「日本は経済支援しろ」「植民地支配の清算をしろ」などの、手先系のメディアや知識人の大合唱には、耳を貸しては成りません。

もっとも、これまで述べてきたように、私は一貫して最終的には戦争になると主張しています。アメリカのほうが上手なのです。次はそれを説明します。

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