さて、前回、私は次のように記しました。
意外と、わざと文在寅(ムン・ジェイン)当選後に開戦にもっていくのではないかと、睨んでいます。その理由は、彼があのノ・ムヒョン氏の後継者だからです。
これだけでは何のことか分かりませんね。なんで彼がノ・ムヒョン氏の後継者だったら“当選祝い”に第二次朝鮮戦争をプレゼントされねばならんのか?
それを詳しく説明しますが、その前に、以下の三点を再確認しておきたい。
アメリカの対北開戦が近いと考えられる三つの根拠
第一、アメリカはすでに好きな時に開戦することができる。
以下の記事に、次のように記しています。
同13日、米NBCテレビが複数の米情報機関高官をソースとする情報を報じました。それによると、米軍は「北朝鮮が6回目の核実験を実行するとの確証を得た時点で、通常兵器による先制攻撃を行う準備を整えている」とのことです。
これは、よく読むと、仮に北朝鮮が実験を強行しなくとも、「そうすると見なした・思っただけで攻撃する」と言っているに等しい。つまり、アメリカの主観次第ですから、いつでも好きな時に好きなタイミングで先制攻撃できるわけです。
極端ではなく、北朝鮮に核実験をする意志がまったく無くとも、アメリカが衛星写真を掲げてもっともらしい説明をすれば、いくらでもこじつけ可能ということです。第三国が検証不可能なので、痴漢冤罪事件ならぬ“核実験冤罪事件”で開戦が可能です。
第二、中国は米軍の対北「限定空爆」を事実上、容認している。
これは前回の記事で触れましたが、中国共産党機関紙の環球時報は4月22日付の社説で、「米国が北朝鮮の核関連施設などを限定攻撃する場合、中国は軍事介入する必要はない」と主張しました。この“限定攻撃”とは、4月6日のシリア空軍基地に対する空爆のようなケースを指しています。もっとも、その時は59発のトマホーク巡航ミサイルでしたが、北朝鮮に対してはその十倍を超える規模の“限定攻撃”になるでしょう。
中国は北朝鮮の後見人というふうに国際社会から見られています。その中国が「アメリカが北朝鮮を限定攻撃しても軍事介入しない」と言ったわけです。これは逆にいえば、アメリカに軍事行動の自由を保証した格好です。どうやら習近平は個人的にも非常に金正恩を嫌っているそうですが、ついに政府としても見放したらしい。
第三、(おそらく)5月に政治的にも軍事的にも開戦条件が整う。
これは前回の記事で記しましたね。
アメリカが武力行使を正当化するためのダシに使われた中国ですが、一応は一か月くらいの「対北説得期間」を与えられているものと推定できるでしょう。つまり、5月7日くらいまでは中国にボールがゆだねられている。この間に中国が奇跡の説得能力を発揮して北朝鮮に非核化を約束させることができれば戦争はまだ回避される可能性があります。しかし、その可能性はほとんどないでしょう。よって、アメリカは、「中国ですら対話で解決できなかった」という、最強の武力行使正当化の理由を手にできるわけです。
一方で、対北空爆作戦には二個空母艦隊は必須と言われていますので、横須賀でメンテ中の空母「ロナルド・レーガン」の復帰が待たれます。その期日がやはり5月の初旬。これをもって軍事的条件も整う格好になります。そうすると、アメリカが政治的にも軍事的にも開戦可能になるのは、ちょうど韓国大統領選挙の頃ということです。
韓国大統領選の時期に開戦するとしたら、その真意は何か?
以上の三点からすると、5月7日以降、北朝鮮の核関連施設等を標的として、アメリカがいつ何時「限定空爆」を敢行してもおかしくはないと考えられます。
トランプ大統領の「中国が解決できなければ、単独行動も辞さない」は、字句通りに解釈すべきでしょう。しょせん、武力行使正当化のダシでしかない。
ここで、誰でも感じることですが、私も「妙に韓国大統領選挙に近いな」と思いました。で、当初は「従北派」とも言われる文在寅(ムン・ジェイン)氏が大統領に当選する「前」に攻撃に踏み切るつもりではないかと、漠然と思っていました。
(*現在、韓国大統領選は5月9日投開票予定。事実上、最大野党「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)前代表と、野党「国民の党」の安哲秀(アン・チョルス)元共同代表の一騎打ち。文氏だけでなく安氏もまた北朝鮮にある程度宥和的らしい)
しかし、今では、意外と「当選後」ではないかという考えのほうが強いです。
理由は二つある。
アメリカの底意1 「韓国にあの時のお返しをしてやる!」
まず一つ目。
私自身、もっと早くに気づくべきだったのですが、あの盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領の時代(2003年~2008年)の韓国は物凄い反米だったんですね。
一つのきっかけは、2002年6月に起きた在韓米軍による人身事故、およびその後始末のまずさです。米兵の装甲車が女子中学生2名を轢き殺してしまった。しかも、在韓米軍内の裁判所は運転をしていた兵士二人に無罪判決。これで韓国中が激怒した。それで、もともと反米親北路線のノ・ムヒョン氏が大統領に当選したとの見方も多い。
当時、無数の韓国人が反米デモに決起しました。在韓米軍基地はどこも激しい抗議にさらされました。そして、ソウルの中心部に集まった何十万という市民が、手に持った小さな星条旗の紙を一斉に燃やしたり、巨大な星条旗の布を引き裂いたりしました。
South Korea HATE AMERICANS PROTEST 2011
Anti-America Festival in Seoul
実は、その場面は、アメリカのテレビでもトップニュースで報じられたんですね。そしてマッカーサー将軍の銅像撤去論争や抗議運動までが起こった。
もちろん、韓国人にも言い分はあろうが、ここで大事なのはアメリカ側の主観であり感情です。耳に挟んだ話では、当時のペンタゴンや米軍人たちは怒りに打ち震えたらしい。たしか、ヒラリーも「恩を仇で返された」と発言したと思う。
そりゃそうでしょう。アメリカ人にしてみれば、多大な犠牲を払って韓国人を侵略者から守ってやった。国を救ってやった。だから、感謝されこそすれ、恨まれる筋合いはない。ノ・ムヒョン氏の反米親北政治と韓国人の同運動はとうてい許せるものではない。どうやらこの時を境に、米の対韓認識というか、感情は、180度転換したらしい。
で、このノ・ムヒョン氏の後継者がムン・ジェイン氏なんですね。
そこで、意外と執念深く当時の屈辱を覚えているアメリカ政軍のトップは、「それだったら一丁、当てつけしてやろうか」と思っているのではないか(笑)。
つまり、「あの時は、よくも恩を仇で返しやがったな。どうだ、ノ・ムヒョンの弟子のきさまには、当選直後に戦争をプレゼントしてやるぞ」というわけです(笑)。
裏切りには代償を支払わせるのが西洋帝国主義のやり方です。
もちろん、陰険なアメリカ人の皆さんのことだから、こういう「本音」は億尾にも出さない。それに韓国に「戦後の後始末」をさせるには、リーダーが不在では困るという事情もある。ちなみに、ムン氏は戦時作戦統制権を取り戻すと息巻いていますが、当選してから交渉を始めても、実際には何ヶ月もかかるでしょう。だから、米軍は彼の当選後もしばらくは韓国軍を自国の一部隊のように運用することができます。
果たして、その間に、北朝鮮との決着をつけるのか。それとも、いったん在韓米軍を撤退させて「アチソンライン」開戦方式に切り替えるのか・・・。
下に挙げる理由から、今の私は前者のほうが高確率と思っています。
アメリカの底意2 「金正恩を絶望の淵に叩き落してやる!」
ブッシュ政権当時、北朝鮮は「悪の枢軸」の烙印を押され、イラクの次に打倒される予定だったから、2003年のノ・ムヒョン氏の大統領当選は天啓でした(以下参考記事)。
他方で、北朝鮮は、拉致問題の解決と国交正常化をエサにして、当時の小泉純一郎総理と田中均アジア大洋州局長をうまく取り込んだ。ブッシュ政権の意志決定に対する影響力では、韓国大統領よりも日本の小泉総理のほうが圧倒的に大きい。で、小泉氏は北朝鮮の思惑通り、ブッシュ政権の対北攻撃に「待った」をかけました。今にして思えば、この3年間こそ、核保有前に北朝鮮を殺れる絶好の「機」だった。
こうして、当時の北朝鮮は、韓国と日本のトップを利用することで、うまくピンチを切り抜けました。しかし、今回の危機では、日本の総理は“あの”安倍氏。だから、今の北朝鮮はことのほか次期韓国大統領に望みをかけているに違いない。
仮にムン氏(アン氏でも)が当選したら、「やった! ノ・ムヒョンの再来だ!」というわけです。だから、北朝鮮は現在、「瀬戸際外交」をやりつつも、冷静に一線は越えないようにしている。そうやって韓国の次期政権誕生をじっと待っている。
それゆえ、親北大統領の「当選前」よりも、「当選後」に行われた空爆のほうが、より衝撃度が高い。アメリカにしてみれば、そうやって、金正恩に「かすかな望み」を抱かせた直後に、冷酷にも限定空爆を実施し、次に絶望の淵へと叩き落すわけです。
すると、若くて忍耐のない、そして感情を爆発させるタイプの独裁者は、どんな行動に出るでしょうか? おそらく、完全に退路を断たれたと思い込んだ彼は自暴自棄へと走るでしょう。つまり、「破滅覚悟の逆上自殺的戦争」への突入です。
限定空爆から本格戦争へ――それこそがアメリカの狙いだ!
なんのために? 実はそれこそがポイントです。
アメリカの本音は「限定空爆だけで終わらせたくない、そこから本物の戦争へと繋げていきたい」ということです。最初から報復させることが狙いなんです。
だから、国際的には「警告のための限定空爆」という体裁にして、そこからうまく報復の連鎖へと持ち込んでいくわけです。
当サイトの読者には、以前から何度も説明してきましたが、今回の対北朝鮮戦争は「米国・イスラエル・影の政府」の三者の内部理由から起きるものです。
アメリカもイスラエルも、第一に「自国の安全保障のため」に北朝鮮を潰すわけですから、最初から韓国の許可とか都合とか、まったく関係がないわけです。
しかし、何も速やかに北を消す必要はないわけです。なぜなら、彼らは北朝鮮の反撃圏外にいる。反撃を受けるのは日韓です。だから、彼らは「自国の安全保障のため」という目的と同時に、その他の目的も思う存分、追求することができる。
それも説明して来ましたが、たとえば、軍産複合体を肥えさせることであったり、世界大戦の予行演習をすることであったりします。
その「利益」を思うと、彼ら的には最初の一撃で金正恩を殺すつもりはないわけです。最初の空爆で、巧妙に「窮鼠、猫を噛む」形に追い込んで、暴発させるつもりです。
はっきり言えば、「核ミサイルを撃たせる」ことも目的の一つです! 正直いって、私もこの巧妙な「悪魔的悪知恵」に気づくのが遅すぎた。
いずれにしても、以上のように推測すると、なんとなく開戦時期も浮かんでくる。次期韓国大統領が当選して、まだ間もない頃に始めるのではないかと思っている。