諸外国の意や批判を一切斟酌することなく軍事面の即断即決ができるドナルド・トランプは、どうやら性格的には非常に戦時の大統領に向いているようです。
米軍は2017年4月6日のトマホークによるシリア奇襲空爆に続いて、13日にはアフガニスタンのカブール郊外で気化爆弾のモアブ(MOAB)を使用しました。
モアブというのは旧約聖書から取った名前(関連記事)なんですね。使用された「GBU43」は直径が約1m、長さが約9m。通常兵器では最大の威力と言われ、キノコ雲も立ち上るので、攻撃を受けた側は核兵器と間違える可能性もあるという。
GBU-43/B Mother of All Bombs (MOAB) Test (2003)
(*思わず「飛行機がウンコする場面か」と突っ込みそうに・・)
今回は対IS軍事作戦の一環であり、地下のトンネル施設を破壊するために投下したとのことです。地下数十mのIS要員に対して一定の効果があったようです。まあ、北朝鮮の地下施設を念頭に置いた予行演習も兼ねたことは明白でしょう。
トランプ政権の対北先制攻撃のきっかけと北朝鮮の警告
この「トマホーク空爆」と「モアブ投下」が北朝鮮への脅しの意味を含んでいたことは間違いありません。
同13日、米NBCテレビが複数の米情報機関高官をソースとする情報を報じました。それによると、米軍は「北朝鮮が6回目の核実験を実行するとの確証を得た時点で、通常兵器による先制攻撃を行う準備を整えている」とのことです。
これは、よく読むと、仮に北朝鮮が実験を強行しなくとも、「そうすると見なした・思っただけで攻撃する」と言っているに等しい。つまり、アメリカの主観次第ですから、いつでも好きな時に好きなタイミングで先制攻撃できるわけです。
周知の通り、アメリカならば後からいくらでも情報操作ができます。対して、嘘つきの常習犯の北朝鮮の声明などは最初からフェイク扱い。「核実験を実行するつもりはなかった」と強弁しても、アメリカがそうとこじつけたら、お終いです。
むろん、北朝鮮側は次のように猛反発です(傍線太字筆者)。
産経ニュース 2017.4.14 23:05更新
北朝鮮の韓成烈(ハン・ソンリョル)外務次官は14日、AP通信のインタビューで、6回目の核実験は「最高指導部が適切と判断したとき、いつでも実施する」と述べた。朝鮮人民軍総参謀部は同日、トランプ米政権の「軍事的挑発」が危険な段階に至ったと非難する報道官談話を発表し、「挑発を超強硬対応で粉砕する」と在日米軍基地などへの報復を警告した。(略)
朝鮮中央通信が伝えた軍の談話では、朝鮮半島周辺に向かっている米原子力空母について「接近するほど(北朝鮮側の)攻撃の効果が増す」と牽制。日本本土や沖縄、グアムの米軍基地に加え、米本土まで「われわれの戦略ロケット軍の照準内に入っていると心得るべきだ」と威嚇した。
【北朝鮮情勢】朝鮮人民軍が在日米軍基地などへの報復を警告 トランプ政権の「挑発」を「超強硬対応で粉砕」【ソウル=桜井紀雄】北朝鮮の韓成烈(ハン・ソンリョル)外務次官は14日、AP通信のインタビューで、6回目の核実験は「最高指導部が適切と判断したとき、いつでも…
以上、両国のやり取りを見ると、第二次朝鮮戦争の発端となる出来事が何であり、初期にどんなふうに攻撃しあうのかといったことまで、なんとなく想像可能です。
米中の密約と中ロに生じたズレ
他方、中ロが北朝鮮との国境に軍を集結しています。難民流入のコントロールや、不測の事態への備えです。やはり米朝軍事衝突は近いのでしょう。
ところで、先の米中首脳会談とその後の電話会談で、北朝鮮の核開発問題等について、トランプ大統領と習近平主席が何らかの共同歩調の合意をしたようです。
しかし、米側が触れるばかりで、中国側は一切沈黙している。「ミサイルで脅されて米側の言いなりになった」では面子丸潰れなので、国内的には隠したい道理です。
対して、トランプ氏のほうは公然と、中国のアクションに期待を表明したり、中国が“頑張っている”と褒めたりして、何らかの密約を守らせようとしています。
いったい、米中はどのような密約を交わしたのでしょうか。
推測ですが、米軍の限定空爆と同時に、中国と繋がりのある朝鮮人民軍内の一派にクーデターを起こさせ、金正恩を逮捕する、という筋書きかもしれません。
つまり、外からアメリカが攻め、内から中国が呼応する形です。仮にこの種の密約だとしたら、米国内に隔離されている時に嵌められた格好とはいえ、習政権の威信を一挙に低下させる政治的爆弾になりかねません。一切公表できない道理でしょう。
しかも、米軍のシリア空爆について、ロシアと北朝鮮は「侵略行為」と激烈に非難しましたが、中国の習近平氏は「理解する」と述べました。中ロの対米姿勢に食い違いが生じている事実が様々な憶測を呼んでいます。
そして、同じことは対北姿勢にも当てはまるに違いありません。
つまり、中国が米軍の対北攻撃に妥協的もしくは傍観者的態度をとるとしたら、ロシアはその反対の行動を取るだろうということです。
老獪ロシアは北朝鮮を鉄砲玉として利用する
私が北朝鮮問題でずっと引っかかっていたことの一つが、ロシアの出方です。口出し屋のプーチンがほとんど沈黙している。何か影で企んでいるはずです。
いったいプーチンは何を考えているのか。ロシアの歴史的ともいえる「火事場泥棒」的狡猾さを忘れてはなりません。
おそらく、ロシア的には、北朝鮮と同盟を結んで心中する気はありませんが、アメリカの戦力を削ぎ、疲弊させる機会としては、最大限利用するでしょう。
ただ、うまく利用するためには、まず北朝鮮の目線で考えることが重要です。
いざ戦争になれば、北朝鮮にとって一番の脅威となるのは何でしょうか。それは国土領空に直接侵入してくる米軍の戦闘機でありステルス爆撃機です。これが一番厄介なのです。なぜなら、北朝鮮はほとんど迎撃することができないからです。
だからこそ、北朝鮮は必ず、在韓米軍基地や在日米軍基地(の空軍戦力)を叩こうとします。日本の岩国基地、横須賀に停泊中の空母ロナルド・レーガン、その艦載機の本拠地である厚木基地などを、弾道ミサイル攻撃の標的にするでしょう。
そして、基本的にこれらの地上基地の情報に関しては、北朝鮮はロシアの助けを借りる必要はありません。だいだい基地の内部にまでスパイを入れています。
しかし、洋上の空母はどうか。北朝鮮では位置を正確に把握できません。ましてや初期の空爆でレーダーはすべて破壊されてしまうわけです。
ここでロシアの出番というわけです。
おそらく、米軍としては、韓国軍に教えたら情報が漏れるので、正確な位置は韓国軍にも教えないはずです。しかし、ロシアならば洋上を移動する空母であっても正確な位置を常に把握することが可能です。ちなみに、報道によると、ロシアは情報収集艦までを出して、空母「カール・ビンソン」の機動部隊を直接追尾・監視しているらしい。
USS Carl Vinson (CVN 70) Carrier Strike Group in Action
こうして、ロシアは直接戦闘に介入しないが、影で米空母艦隊の情報を提供することで北朝鮮に攻撃させるというわけです。
上の記事にもあるように、北朝鮮の外務次官が、米空母について「接近するほど(北朝鮮側の)攻撃の効果が増す」と述べている点が気にかかります。
その際、朝鮮人民軍は、通常ミサイルか、弾道ミサイルか、魚雷か、機雷か、それとも高速艇による特攻作戦か、方法は分かりませんが、おそらく、米空母を確実に撃沈するために切り札の核兵器を使うだろうと私は推測します。
果たして、核攻撃の生贄になるのは「カール・ビンソン」か、メンテを終えて合流する「ロナルド・レーガン」か、それとも別の米空母か・・・。
当然、空母を核兵器で轟沈されたら、米も核兵器で報復するでしょう。
こうして核の撃ち合いになる可能性があるということです。私は先の記事で「核のタブーを破るための前哨戦であり、本番(世界大戦)前のシミュレーションの役割を担うのが、世界支配層にとっての第二次朝鮮戦争の意義」と記しました。
ただ、影の政府にとって予行演習なら、ロシアにとってもまた貴重な予行演習であるという現実を忘れてはいけません。
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