北朝鮮の持つ猶予期間、そして「妥協と破滅」の二つの相反する選択

テロ・紛争・戦争・崩壊
2017年3月6日 在日米軍基地を標的とした4発同時発射実験の様子




さて、今回は、前回の記事の続きのようなものです。

トランプ政権は、4月の段階で、中国を通して北朝鮮に対して、「核・ミサイル開発を放棄せよ」という要求を突きつけました。

これは「飲むのか、飲まないのか」という“最後通牒”に等しい。

ただし、このような場合、即答は無理ですから、北朝鮮に対して一定の猶予期間が与えられているはずです。しかも、「中国を通して」という点がポイントです。

つまり、アメリカは、中国に対して、この条件(核・ミサイル開発の放棄)を北に飲ませる説得役を押し付けたわけです。見方を変えれば、中国の有する説得のための期間が、だいたい北朝鮮に対して与えられている猶予期間とも考えられる。

私はこの記事で、「トランプ政権が中国に与えたチャンスの期間が、攻撃のタイミングを推し量る上で最大の材料ではないか」と述べ、大軍の用兵からして「だいたい1か月程度ではないか」というふうに一定の推測をしました。

つまり、4月7日の米中首脳会談から1か月後には、「あの中国ですら対話で解決できなかった」という大義名分が生じ、いつでも攻撃可能になるということです。

しかしながら、のちに当の米軍のハリス司令官が、その期間を否定しました。



アメリカが与えたチャンスの期間は?

報道に拠ると、4月27日、ハリス米太平洋軍司令官は、上院軍事委員会の公聴会で証言し、現在の北朝鮮情勢は「これまで見た中で最悪だ」とし、過去の制裁は北朝鮮の核・ミサイル開発を食い止める効果が「全くなかった」と断定した。その上で、

中国による対北圧力が効果を上げているかについては、米中が対北連携で合意した首脳会談から「まだ1か月程度しかたっておらず、判定は早すぎる」と指摘し、習主席に「チャンスを与えるべきだ」とした。(産経新聞2017.4.29)

つまり、首脳会談から1か月程度では「まだチャンスとして短すぎる」と述べた。だから、トランプ政権は、中国に対してもっと長い期間を与えた可能性が高い。そして、それがそのまま北朝鮮の有する執行猶予期間でもある、ということです。

まあ、どれくらいの期間を設けてあるのか、仮に日本人で知っている人がいるとしたら、安倍総理と菅官房長官などの数人くらいのものだろう。

もしかすると情報漏洩を警戒して安倍総理ですら知らされていない可能性もある。

まあ、一年や二年という「ロング」はあまり想像できない。やはり「何ヶ月」という単位でしょう。それが数ヶ月なのか、半年なのか・・推測は難しい。

現在、安倍さんと閣僚が結構余裕をかましていますから、意外と中国に対して半年くらいの期間は与えられているのかもしれない。すると、リミットは今年の10月頃になる。この時期だと、別のトラブルが生じれば、「来年」に回されてもフシギではない。

いずれにしても、北朝鮮としては、その間に、アメリカの理不尽な要求を呑むか、それとも跳ねつけて戦争に踏み切るか、一大決断をしなければならない。

北朝鮮が得意の「空約束→寝技作戦」に持ち込む場合

私は意外と「呑む」こともありえるのではないか、と思っています。

なぜなら、アメリカにとっての成功体験があるなら、北朝鮮にとってもまたある。それがいったん約束しておいて、後で180度手の平を返す、という手口です。

つまり、「騙まし討ち」ならぬ「騙し承諾」ですね。事実、北朝鮮は今まで二回、そうやって国際社会を騙して、援助だけせしめることに成功してきた。

今回も、いったん核・ミサイル開発の放棄に応じてみせる。訪米しての首脳会談の席上での署名だろうが何だろうが、とにかく約束する。

アメリカとしては、まさか一国の政府が国を明け渡す屈辱的な要求を呑むとは信じられないに違いない。しかし、想定外だろうが何だろうが、約束した以上は、戦争はいったん中止せざるをえない。こうして北朝鮮は、当面の攻撃を回避する。

ここからが本領発揮です。そうやって、いったん約束しておいて、実際には現場レベルで可能な限り査察をごまかし、サボタージュする。むろん、金正恩指導部レベルでは誠心誠意、協力しているふりをする。つまり、現場の人間が勝手に抵抗しているので自分たちの責任外であり、どうしようもない、というエクスキューズです。

そうやって、とにかく騙せるだけ騙して時間稼ぎする戦術ですね。そうこうしているうちに国際情勢も変化するし、トランプの任期も終わるだろうという魂胆です。

つまり、当面の攻撃さえうまく回避すれば、あとはずるずると引き延ばして、結局は何とかなるのではないか、今までもそうやって誤魔化してきたじゃないか、というわけです。

こんなふうに東洋的「寝技」に持ち込むことは、北朝鮮にとって「成功体験」でもありました。である以上、北朝鮮は今回もいったんは核・ミサイル開発の放棄を国際社会に約束してみせる可能性があります。

と、このように書いていたら、次のようなニュースが入ってきました。

北韓、6000億ドルの無償援助で核廃棄 2017-05-12 09:05

[하종대의 모바일 칼럼] “북한, 6000억 달러 무상원조시 핵 폐기”
“북한이 핵 폐기를 조건으로 10년간 매년 600억 달러의 무상원조와 북미(北美) 간 평화협정 체결을 요구했다.” 최근 중국의 여러 매체 온라인 사이트에 올라있는 내용이다.…

「北韓が核廃棄を条件に10年間、毎年600億ドルの無償援助と北米間の和平協定の締結を要求した」これは最近、中国の多くのメディアオンラインサイトに掲載されている内容だ。(略)北韓の要求条件は現在4つ。今後10年間、米国、中国、日本、ロシア、韓国など5ヵ国が無償で毎年600億ドルずつ北韓に提供。米国と北韓は平和協定を締結し、中国とロシアは北韓との協定を通じて北韓政権の安全を保障すれば北韓は3年以内に核凍結を皮切りに、段階的に核廃棄の段階まで進むというものだ(後略)

中国発の情報ですが、北朝鮮が「核を段階的に放棄するから、体制を保障して、毎年約6兆円を10年にわたってくれ」と要求している、ということです。

さすが厚かましい。まだ本当かどうか分かりませんが、これが最大ラインで、ここから徐々に要求を引き下げていく方向で日米韓と交渉し、最終的に「核・ミサイル開発を放棄せよ」というアメリカの要求を呑む、という成り行きも考えられます。

むろん、本気で放棄する意志があるはずがないので、「騙し承諾」でしょう。だいたいこの種の交渉自体が、時間稼ぎ戦術に各国を引きずり込むための作戦でしょう。

一番怖いのは北朝鮮の「先制核攻撃」オプションだ!

しかしながら、私は北朝鮮と日米がそういう「騙しあい」のゲームに入っていくのは、ホット・ウォーになるよりははるかにマシだと確信しています。

当然、その逆のケースも想定しておかねばならない。つまり、日本軍の真珠湾攻撃と同じ成り行きです。当然、宣戦布告なしの、完全奇襲攻撃。

これが一番怖い。これが一番起こってほしくないことです。

なぜなら、日米の準備が整わない段階での、いきなりの核による先制攻撃になる可能性がある。ある日突然、在日米軍基地に向けて核ミサイルを撃つということです。

「まさか、そんな馬鹿なことがあるか!」と誰でも思いますし、私だって自分の正気を疑いたくなります。しかし、大事なことは「相手の目線で考える」ということです。独裁者の金正恩の立場にしてみれば、どうせ自分が死ぬとしたら、攻撃が先になろうが、後になろうが、どっちにしろ同じことです。むしろ、「ならば」と思案する。

「どうせ死ぬなら、徹底抗戦してやろう。できるだけ緒戦で優位に立ってやろう」

「せめてアメリカに一矢報いから死んでやろう」

「殺される前に、できるだけ多くの敵を道連れにしてやろう」

こんなふうに決意を固めても不思議ではありません。あえて「常識では考えられないこと・ありえないこと」を想定してみるのも手です。とくに金正恩は、子供の時から世話になってきた金正日の側近をどんどん処刑したりするなど、極めて危険な性格がうかがえる。こういう人物が暴発すると、「核による先制攻撃」を考えても不思議ではない。

私が前々から気になっていたのが、ミサイル発射に立ち会う時の彼の表情です。彼は本心から「全軍の司令官」として「ウォー・ゲーム」をやりたいのかもしれない。

だから、死を覚悟したら「盛大にやってやろう」と考えるのではないでしょうか。

北朝鮮 「金正恩同志が人民軍戦略軍火星砲兵部隊弾道ロケット発射を現地指導 (김정은동지 화성포병부대 탄도로게트발사 지도)」 KCTV 2017/03/07 日本語字幕 English subs

以下、動画よりキャプチャ

果たして、最後は破滅へと突き進むのか・・・。

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