トランプ大統領が現地時間9月19日、NYの国連本部の総会で演説しました。トップニュースで詳しく報じられているので、私などが繰り返す必要はないです。
しかし、日本人の関心は北朝鮮問題に偏っていて、その色眼鏡で演説を見てしまうと、本質を逃してしまう恐れがある。約40分の演説は以下で見ることができます。
FULL SPEECH: Trump addresses world problems at the 72nd UN General Assembly
14分ごろから、北朝鮮の独裁体制の残酷さ、ワームビア氏の件、金正男の件、横田めぐみさんの件などに言及しています。この「愛らしい13歳の少女」というサプライズは、安倍総理側が取り上げてほしいとお願いしていたものです。
トランプ大統領はそれをわざわざ世界中が注目する演説で取り上げてくれた。
ただし、興味深いことに、北朝鮮以上に、長々とテロ支援国家としてイランを非難している。イランがヒズボラに援助しているのは事実で、イスラエルがヒズボラの工場などを空爆している。このあたりは同じ「シーア派繋がり」なんですね。演説では中東問題(イスラエルの安全保障)が思いのほか大きな比重を占めている。
トランプ氏はまた、北朝鮮とイランを「ならず者政権=ローグ・レジーム(rogue regime)」と呼んでいる。
これは「レジームチェンジする」と言っているのと同じこと。
ただ、両国の独裁政権が同じ様に国民を人質にしているという勘違いをしている。北朝鮮についてはその通りだが、イランに関しては完全に偏見です。
だから、演説では、自分はイラン国民の味方をしているつもりで話していて、それが痛い勘違いになっている。トランプが大統領に就任した直後から、私は彼のイランに対する強い偏見を指摘してきましたが、依然として周囲のユダヤ人たちから間違ったイラン観を吹き込まれている(*シオニストの真の目的については当サイトの最下部の記事から)。
総じて、北朝鮮とイランを殺ると宣言しているようなもの。
ここで思い出されるのは、2002年のブッシュ大統領の演説です。当時、ブッシュ氏はイラク、イラン、北朝鮮を指して、「悪の枢軸」と呼んだ。
そして、アメリカはイラクに侵攻し、フセイン政権を打倒した。
今度のトランプ演説は「その時に撃ち漏らした二カ国を片付ける」という宣言です。
それは本丸ロシアを屈服させる前の「雑魚潰し」なのだ
以下は、約1年前に公表した記事であり、当然、次の大統領が誰かも分からない頃でしたが(私はヒラリーだと思いこんでいた)、今回のトランプ演説の内容を見る限り、北朝鮮とイランを潰すという戦略については、ドンピシャリだったと言えると思います。
(以下引用。赤字は今の筆者による)
なぜ2017年以降、朝鮮半島の戦争リスクが急激に高まるのか?
2001年1月20日、ブッシュが大統領に就任した。(略)翌02年1月、大統領は一般教書演説において、「イラク・イラン・北朝鮮」を名指しして、大量破壊兵器を開発保有する「ならず者国家」であり「悪の枢軸」axis of evilと非難。当初の標的をサダム・フセイン政権に定めて、03年3月には最後通牒を突き付け、対イラク戦争を開始した。(略)
対北朝鮮・対イラン戦は、より大きな視点で言えば、本丸のロシアを屈服させる前の露払い(ザコ潰し)だと私は考えている。分かり易くいえば、アメリカは、ラスボスを倒す前に、先に中小反米国家の各個撃破作戦に乗り出したということである。この作戦のキモは、相手に連携させないことだ。だから、イラン核合意とキューバとの先の和解は、北朝鮮を含めた、三カ国の分断策ではないかと、私は睨んでいる。
つまり、イラン核合意の本質はただの時間稼ぎだ。キューバは地政学的に敵陣営に回せないので、懐柔するわけだ。こうして三カ国を連携させない。そして、それぞれへの対応を見れば、最初に北朝鮮と開戦する気であることは明らかだ。
北朝鮮が片付けば、次はイスラエルがイランと開戦し、欧米が支援する形になる。キューバは内側から“民主的”に変革していく。
これらの計画は2017年の新大統領選出を待って動き始めるに違いない。
唯一、世界支配層にとって、トランプが「親ロシア」であることは問題ですが、8月に「対ロ制裁強化法成立」に大統領が署名せざるをえない事態に追い込まれ、アンチ対外軍事介入派のバノンが辞任に追いやられたことで、勝負あったようです。
トランプ政権は「軍事・グローバル企業・ユダヤ親族」政権になりました。
アメリカは世界初の「革新的軍事戦術」を北朝鮮に対して用いる
アメリカがフセイン政権のイラクと戦争することは、2001年の「9・11」テロの直後に正式決定しました。しかし、実際の開戦はその約1年半後でした。
その間、かなりダラダラとしていて、ブッシュとフセインは互いに罵り合っていた。
今現在、対北朝鮮でその路線をなぞっているとすれば、戦争はトランプの大統領就任から1年半後という可能性もある。やはり、一国相手に戦争するのは準備が大変です。
ただ、先の記事で述べたように、国連安保理の「9・11決議」により、北朝鮮はこれから収入の9割を断たれることになります。
つまり、北朝鮮からすれば、待てば待つほど不利になる。
以前なら「何もしないでダンマリを決め込む」という選択肢もあったろうが、今ではジリ貧になって、半年後か、一年後か分からないが、確実に国内経済が破綻するだけ。
やっぱりアメリカは北朝鮮に旧日本帝国の姿を重ね合わせているらしい。先に北朝鮮を暴発させる構造をうまく作り上げた。そして近々、北は「何か」をやらかすだろう。
また、トランプ政権は、対北攻撃に関して国内世論の支持も取り付けました。
外交もうまい。ブッシュ政権の時とは打って変わって、今回は非常に国際世論に神経を使い、日韓、中ロなど、関係国とのすり合わせも緊密に行っている。
その間、日韓に対して、ちゃっかり武器も売ってきた。
このようなパフォーマンスの結果、「アメリカは常に対話を望んできた」とか「我慢に我慢を重ねている」というふうに、国際社会は受け止めている。
なにしろ、疑り深いことで有名な日本のサヨクでさえ、「アメリカは北朝鮮と戦争する気はないんだ」などと騙されてきた始末。彼らもようやく目が覚めただろうが・・。
先の制裁決議でも、中ロ含む全会一致を優先させました。つまり、「国連の総意」(=国際社会の総意)という体裁にこだわった。
ここまで状況を作った上で、北朝鮮が「最初の一発」を殴ってきたら、アメリカが北朝鮮をTotally Destroy(完全に破壊)しても、世界は「やむなし」と思うだけ。イラク戦争の時のように、西側諸国が分裂する事態は起こりえないでしょう。
そして、実際の軍事作戦でも、驚くべきミラクルを見ることになるだろう。
アメリカは今回の戦争で、真に21世紀型の革新的な軍事戦術を採用する予定です。
それは、いわば「究極のエアシーバトル」です。
このまったく新しい軍事戦術を北朝鮮相手に実戦テストして、次にそれを用いて、イスラエルと共にイランを攻略する予定です。
もっとも、そうはうまくいかず、北朝鮮は核兵器の使用に漕ぎ着けるでしょうが・・。
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