北朝鮮が先制EMP攻撃なら日本終了

テロ・紛争・戦争・崩壊
出典:US gov and Wkipedia Commons 1962年7月9日、ハワイ・ホノルルから見た高高度核爆発の爆発の様子




私は2017年3月の記事で、チラリと次のようなことを記していた。

日本のイージス艦や潜水艦はEMP攻撃に弱いといわれる。

だから、そういう核戦術をやられると、あとは一方的にミサイル攻撃される展開になる可能性もある。

EMP攻撃というのは電磁パルスElectromagnetic Puluseを使った攻撃のことだ。一応、頭の片隅にあり、気にはなっていたが、あえて大きく取り上げなかった。

周知の通り、9月3日、北朝鮮は推定160キロトン(広島型原爆のおよそ10倍)の水爆実験を行った。その直後、次のように発表したという報道が入った。

北朝鮮の電磁パルス攻撃 高度100km以上での爆発で日本列島のほとんどが影響下に 9/11(月)

(出典:https://abematimes.com/posts/2927039

北朝鮮の朝鮮中央テレビは3日、「我々の水爆は、広大な地域に超強力電磁パルス攻撃まで加えられる、多機能化された核弾頭である」と発表した。

(略)「電磁パルス攻撃」とは、迎撃の難しい高度100km以上の大気圏外で水爆を爆発させ、それによって生じるガンマ線と空気中の分子が衝突することで生じる電磁パルスによって、地上の通信機器や流通システムに壊滅的なダメージを与えるというものだ。この高度でミサイルを迎撃することは難しく、米国上空で実施された場合、被害は米国本土全域に及ぶとされている。(略)

米シンクタンクの分析では、電磁パルス攻撃を受けた場合、車や鉄道、航空機などの輸送網、電気・水道などのインフラ、軍の通信能力など全てのシステムが破壊され、影響が1年間続くと、米国民の9割が飢餓や病気などによって死亡するという推計もある。

このEMP攻撃表明の話題は、書く機会がずるずると引き伸ばしになって、やや旧聞に属してしまったが、要は北朝鮮もとっくにこの攻撃法に注目していた、ということ。



一番恐ろしいのは北朝鮮の先制EMP攻撃

上のアメリカの例は、そのまま日本にも当てはまる。

だいたい関東の上空100キロくらいのところで核爆発させると、日本全土に電子のシャワーが降り注ぐ形になる。それが地上の電気機器のケーブルや電子製品の回路に過電流を生じさせ、ショートさせてしまうと言われている。

スマホやパソコン、テレビや冷蔵庫などの私たちに身近なハイテク製品や家電製品だけでなく、送電網や変電施設が破損するので、そもそも電気が使えなくなる。社会全体が電気文明以前の状態に後戻りすることになる。

電子機器で制御している水道・通信・輸送交通システムも壊滅的ダメージを受ける。水・食糧・エネルギーの供給も突如として途絶え、暮らしは完全に崩壊する。

だから「1年で米国民の9割が死亡」という推計はそのまま日本にも当てはまる。

これについては、読売新聞のサイトに掲載された『高度上空の核爆発で起きる「電気がない世界」の恐怖』という記事も参考になる。

北朝鮮を自殺的先制攻撃に追い詰めると、どれだけヤバイかという話である。

たとえば、弾道ミサイル実験を装って、例の「ロフテッド軌道」で、いきなり日米に対して「EMP攻撃」を仕掛けてきたら?

それが先制攻撃の「最初の一打」だったら? 防ぐのは難しい。

まず、「いつもの弾道ミサイル実験ではないか」と思って見過ごすし、仮にそれが先制攻撃だと分かっても、相手が高高度に発射してしまえば、MDによる撃墜は困難だ。

むしろ、その後は、兵器が旧式な北朝鮮のほうが有利になるかもしれない。

かくして、日本の社会や経済は突如として崩壊する。むろん、北朝鮮も反撃を受けて崩壊するだろう。しかし、独裁者にしてみれば、どうせ死ぬのだから、自国がどうなろうが知ったことではない。できるだけ多くの敵を道連れにすることだけを考えるだろう。

しかも、北朝鮮からすれば、アメリカ上空よりも日本上空のほうがはるかに狙いやすい。仮に大気圏の再突入技術が怪しくても、圏外爆発だから技術的には問題ない。

そうすると、追い込まれた状況にあるのは、北朝鮮よりも意外と日本のほうかもしれない。こういう時は戦略次元のミスを疑わなくてはならない。

スターフィッシュ・プライム(Starfish Prime)

依然として半信半疑の人もいるかもしれないが、これはもともと実際に起きた出来事から発見された現象であり攻撃法である。

以下、“Starfish Aftermath” by Charles Glassmireから引用させていただきたい。ちなみに、スターフィッシュとはヒトデのこと。

1962年7月9日、ジョンストン島から約250マイル(402キロ)上空の中央太平洋上でスターフィッシュ・プライム核実験が行われた。弾頭は1.4メガトンで、計画どおりに爆発した。その瞬間、約900マイル(1448キロ)離れたハワイ諸島は、電力サービスのブラックアウトを経験し、幾つかの主要な都市を暗闇に投げ込んだ。

ハワイの主要都市では、300個の街灯が直ちに消えた。 スイッチと電流調節器が焼損すると、街中の盗難警報が鳴り始めた。送電線と回路に電磁誘導が起こり(略)いくつかの諸島間のマイクロ波通信の接続が破壊された。巨大なコイルが誘導されたサージの影響を受けたため、発電機は電力の出力を停止した。(略)

夜空は魅惑的なオーロラ模様とライトショーになった。ある観察者はクワジェリン島から1400海里も離れたところにヒトデ模様を見てそれを描写した。(略)

スターフィッシュ・プライム実験は計画者が予想していたよりもはるかに大きな電磁パルスを作り出した。(略)

すぐに低軌道の3つの衛星が壊れた。最終的に7つの衛星が故障した。

と、このように、大気圏外で行われた核実験は、ハワイ諸島の電力システムのほか、人工衛星にまで大きなダメージをもたらした。

その威力とは裏腹に現象そのものは非常に美しかったという。

白い閃光が生じたかと思うと、緑色の玉になって、それが紫、赤と、変化した。人工のオーロラはアトミック・レインボウとも呼ばれた。

Operation Dominic — Starfish Prime

ある日突然、私たちが上空にこれを見てしまった時、それは現代文明の終焉の印だ。コンピュータ全盛ゆえに私たちの社会や経済は完全に麻痺してしまうだろう。

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