さて、この記事は前回(↓)の続きです。
旧日本軍が大陸で嵌まった泥沼に、ロシア軍も嵌まりつつあるという話でした。
しかし、ここから両者の運命は違う道筋を辿るでしょう。
日本は英米に敗北しましたが、ロシアは最終的に勝つ可能性があります。
第一に核兵器の存在です。
日本とNATO軍にとって最大の脅威は、太平洋と大西洋に展開するボレイ級ミサイル原潜です。太平洋艦隊の一隻だけで、日本の数百か所を核攻撃可能です。
つまり、たった一隻の潜水艦が日本を全滅させることが可能だということです。
他にも、巨大核ミサイルのサルマトや、核魚雷ポセイドンなどが最近は有名になりましたが、個々の性能について、今では情報が溢れているので、私からは繰り返しません。
要は、ロシアは国力に比して奇形的に核戦力が発達している特殊軍事国家なのです。
ちょうど、片手のハサミだけが大きなカニを想像してください。
今のロシアは、その肥大化したハサミを使わず、小さなハサミだけで戦っているカニみたいなものです。
それを見て「弱いカニだな」と嘲笑っているのがメディアや専門家です。
中には「ロシアの核兵器は実際には使えない核兵器だ」と主張する人もいますが、現実にはロシアほど核実験やミサイル発射実験を繰り返して、経験を蓄積してきた国はない。
最新兵器には依然として技術的な問題があるのかもしれないが、それらはすべて二次的なものであり、時間と共に克服可能なものと見なすべきです。
そもそもロシアは、今から60年も昔の旧ソ連時代に、広島型原爆の3千倍以上の威力をもつ50メガトンクラスの水爆「ツァーリ・ボンバ」の核実験に成功した国です。
それでさえ本来の出力の半分に抑えたものでした。
今では、これに近い威力のサルマトを、重爆撃機ではなく、長射程の弾道ミサイルで、全世界のどこにでも撃つことができます。
さすがにウクライナ戦争ごときで使う代物ではないために使わないだけで、NATOとの総力戦にエスカレートしたら、プーチンはためらわず使用するでしょう。
つまり、英米との戦争に発展したら、戦争もまた核兵器戦へとステージが繰り上がる可能性が高いということです。ロシアというカニは、肥大化したほうのハサミを使って、本来の力を発揮するということです。
第二に中国との連携です。
戦時中の日独は、戦時共同作戦がほとんどなく、個々が勝手に戦っている状態に近いものがありました。
しかし、ロシアと中国は、以前から「共同軍事演習」を頻繁に繰り返しています。
日米を仮想敵としているのが不気味です。どうも中ロはとっくの昔から、NATO軍(+日韓)相手に戦う準備をしているのではないか。
そして、いざ戦争になったら、日本・台湾・朝鮮半島という「旧本帝国領」が米中、又NATOと中ロとの代理戦争の場になりそうな予感さえします。
また、一番重要なポイントは、今や「工業生産力」という点では、戦前のアメリカに当たるのは、むしろ現代中国ではないか、ということです。
その際、何を一番の指標にするかというと、実は粗鋼生産量です。
もう5年くらい前のものですが、ご覧のように中国が全世界の半分を占めている。
アメリカなどは5%ほどしかありません。
「戦争」というのは、今ストックしてある武器を使ったらおしまい、ではなく、必ず「一定期間戦い続ける」という本質があります。
ちょうど、今のロシアとウクライナの戦争のように。
つまり、工業生産力と補給を背景にすることで、前線部隊は戦い続けることができます。
そして、銃も、弾丸も、りゅう弾砲も、砲弾も、戦車も、装甲車も、自走砲も、戦闘機も、爆撃機も、軍艦も、すべてはスチールが基本素材になっています。
しかも、大事なことは、製鉄所というのは、コンビニのようにホイホイ建てることができない、建てようと思えば普通は十年がかりの計画になる、という点です。
今ある設備で一定の増産なら可能ですが、新規の建設ともなると、国家が戦時特例で総力を挙げたとしても、一年以内の可能化は難しいのではないか。
また、その国の化石燃料の供給力という視点も必要です。
製鉄には大量のコークス(石炭)を使います。
また、戦車も戦闘機も軍艦も大半の兵器類は石油を燃料として動きます。
中国は石炭を自給できますし、石油や天然ガスにしても、ロシアから欲しいだけ融通してもらうことができます。ましてや戦時の同盟関係ならば。
かつての連合国はその工業生産力によって第二次大戦に勝利したという側面があります。
チャーチルはアメリカのそれを「巨大なボイラー」に例えていました。
ソ連がナチスドイツに最終的に勝つことできたのは、アメリカが後方から大量の武器を支援したからです。対日戦においては言うまでもありません。
日米比は「1:20」と言われました。単純にいえば、日本が軍艦一隻を作る間にアメリカは20隻を作る。
そして日本は石油が不足していましたが、当時のアメリカには無尽蔵にありました。
今度は、中国がかつてのアメリカの立場に当たる、ということです。
GDPこそアメリカよりもやや低いですが、今や世界一の工業大国・モノづくり大国が中国である事実は間違いありません。
しかも、人民解放軍系の企業が武器を作っている。軍産がすでに一体化している。
また、中国は石油の自給ができませんが、ロシアと組むことでその欠点を解消することができます。そして、中国の方はロシアに鋼鉄と武器を供給することができます。
中ロは「お互いの欠点を補い合える理想的な同盟関係」と見なせます。
戦時中もバーター取引でいつでも工業品と鉱物資源を交換し合える仲です。
旧ソ連はアメリカの無尽蔵の援助を受けることでナチスドイツに逆転勝利しました。
ロシアは「今度も同じ」ではないでしょうか。
ただし、違うのは、今度は中国がバックに付くということです。
そして、この本格軍事同盟関係は、中国が台湾を侵攻し、日米との軍事衝突に発展することにより、中ロがNATOという共通の敵を持つことによって、現実化します。
中国的には、NATO軍をできるだけ欧州にクギ付けにしておく必要性からも、ロシアに大量の武器支援を行うことが得策となります。
現在、見方によっては、ロシアが、西側軍事力の備蓄・予備力を、ウクライナというブラックホールに、うまく吸い取らせている、とも言えます。
まだ「特別軍事作戦」の段階で、NATOの兵器ストックが枯渇に近づいている。
その上、「戦争」しかも「中国も含めた戦争」(≒世界大戦)へと発展したら、西側軍事力の備蓄・予備力はどうなるのか。
事実、プーチンの側近が「戦争」と呼び始めています。
つまり、NATOの兵器ストックがほぼ枯渇したところで、中国の巨大な戦時生産力が発動され、たちまちロシアがその支援を受ける、という構図です。
それプラス、ロシアの世界一の核戦力。
特異な予言能力のあった出口王仁三郎は、未来の戦争を指して、「みんなアメリカが勝つと思っておるけどなあ」とボヤいていました。
そう、みんな米軍が勝つと信じ込んでいる。
しかし、第三次世界大戦になったら、本当に西側が勝つのでしょうか。
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