木走まさみず氏と神谷匠蔵氏の記事を紹介する

政治・社会
ロイター/Kim Hong-Ji




つい昨日の話ですが、私自身が久々に膝を打った論考が二つあったので、すでにご存知の方もいるでしょうが、紹介させていただきます。

ぜひ元記事をご覧になっていただきたいと思います。



木走まさみず氏の記事

一つはブロゴスで著名な木走まさみず氏の手による「『少女像』社説で日本政府批判する朝日新聞にその資格はあるのか」(2017-01-10)です。

まず木走氏は、当問題に関する主要5紙の社説を比較し、「韓国以上に日本政府の対応を批判しているのは朝日新聞ただ一紙だけ」であることを見い出します。木走氏はその「不平等なほどの喧嘩両成敗的平等主義」に疑問を呈しつつ、「一連の朝日新聞従軍慰安婦ねつ造報道がなければ」釜山総領事館前「少女像」もなかったのではないかと考えます。

その理由が記事の真骨頂です。

「日本軍関係者がいたいけな少女を強制的に連行して慰安婦とした」という出鱈目な朝日新聞ねつ造記事さえなければ、日本領事館の前に「少女像」は設置されてはいなかった可能性を思うとき、この「少女像」設置の諸悪の根源は朝日新聞にあるとすら、思えてくるのであります。

こうして木走氏は朝日新聞の「大罪」を再度検証します。

 1991年8月11日付け朝日新聞記事の書き出しです。

「日中戦争や第二次大戦の際、「女子挺身隊」の名で戦場に連行され、日本軍人相手に売春行為を強いられた「朝鮮人従軍慰安婦」のうち、一人がソウル市内に生存していることがわかり、「韓国挺身隊問題対策協議会」(尹貞玉・共同代表、十六団体約三十万人)が聞き取りを始めた。」

<「女子挺身隊」の名で戦場に連行され、日本軍人相手に売春行為を強いられた「朝鮮人従軍慰安婦」>、普通の日本語能力があれば、読者はこの書き出しは極めて事実報道記事としてあいまいなことに気づきます。

いったい誰がこの気の毒な女性を連行し売春を強いたのか、肝心の主語がないのです。

この主語がない書き出しが極めて意図的で重要なのであります。

この問題の記事冒頭部分に関して、朝日新聞は3年前の12月、実に掲載より23年の長きを経て、「誤りとして、おわびして訂正します」と謝罪、過去記事データベース上も「この女性が挺身隊の名で戦場に連行された事実はありません」との事実無根との「おことわりをつけます」としました。

つまり、<『女子挺身(ていしん)隊』の名で戦場に連行され、>の部分は、朝日新聞自身が「誤りとして、おわびして訂正します」、「この女性が挺身隊の名で戦場に連行された事実はありません」と、謝罪して訂正すべき事実無根の文章であったことを認めています。

実際はこの女性はキーセンに40円で売られ養父に中国に連れていかれたことが12月6日の裁判の訴状でも明らかになっているのですが、その事実を隠し、本人が言ってもいない<『女子挺身(ていしん)隊』の名で戦場に連行され、>と付け加えていたことこそが、本記事が単なる「誤報」ではなく「捏造」記事であると批判されてきた所以です。

傍線は重要な箇所なので、私が勝手に付け加えさせていただきました。以下もそうさせていただきます。木走氏によると、上の91年の記事が「朝日新聞のねつぞう第二弾」であり、実は「ねつぞう第一弾記事のつじつまをあわせるため」のものでした。それが以下の記事です。

 本件に関わる捏造報道の始まりは、河野談話が発表される11年前の82年9月2日、朝日新聞は「朝鮮の女性 私も連行」と題する「スクープ」記事を大きく掲載します。

(以下カッコ内引用)(前略)

その証言が始まると、大阪の500人の聴衆はしんとして聞き入ったという。

「当時、われわれは『狩り出し』という言葉を使っていた・・・泣き叫ぶというような生やさしいものではない。船に積み込まれる時には、全員がうつろな目をして廃人のようになっていた・・・」

これは、昭和18年夏、わずか一週間で朝鮮・済州島の若い女性200人を狩り出した吉田清治氏の懺悔だ。吉田氏は女工から海女まで手当たり次第に拉致し、慰安婦に仕上げたという。

(後略)(カッコ内引用終わり)

これ以後、吉田氏は朝日紙面に何度も登場し、従軍慰安婦の悲惨さを語り尽くします。

 しかしこの吉田証言は完全な作り話でした。証言が本になってすぐに現地の『済州新報』が取材していますが、一つも事実が見つかりませんでした。また韓国の郷土史家は何年も調査し、拉致の事実はなかったと断定、吉田の本を『日本人の悪徳ぶりを示す軽薄な商魂の産物』とこき下ろします。

つまり、吉田氏は本を売って儲けるため、嘘八百を並べ立てたということです、最後には吉田氏自身が「証言は捏造だった」と認め、朝日新聞も《氏の著述を裏付ける証拠は出ておらず、真偽は確認できない》(97年3月31日付)と、「証拠は出ておらず、真偽は確認できない」ことは認めます。

このように、吉田の大ウソを朝日新聞が事実として取り上げたことが、これが国際問題にまで発展していく大きなきっかけになったわけですね。

 朝日の大スクープ第二段は、91年8月11日付の《元朝鮮人従軍慰安婦 戦後半世紀 重い口開く》という記事で、元従軍慰安婦が初めて名乗りを上げたことを報じたものです。

この記事は『女子挺身隊の名で連行され』と書いてありますが、実はこれは大捏造であり、名乗りを上げた金学順さんは女子挺身隊で連行されたのではなく、母親に40円でキーセンに売られたと明言していることが今ではわかっています。

問題は、記事を書いた朝日記者の韓国人妻の母が、太平洋戦争遺族会の常任理事だったことです。

この団体が金学順さんに日本政府相手に裁判を起こすよう勧めるんです。キーセン出身を隠し、しかも身内を利する記事を書いたわけで、悪意に満ちた意図的な捏造報道であります。

この第二段捏造記事は朝日の狙い通り、国の内外で大反響を起こします、この記事が一つのきっかけになって1991年12月の政府による従軍慰安婦問題調査開始に繋がっているのです。

分かりますよね。最初に吉田清治によるウソの「加害証言」があった。昨年、吉田の長男が真相を暴露しました。「父は本当は済州島に行ってもいない」と。

その後、その「加害証言」を証明する“証拠”探しが行われた。それが第二の記事に関係する。しかも、名乗り出た慰安婦は「親に売られた」と証言したにも関わらず、朝日新聞の植村隆記者は、わざわざ「女子挺身隊の名で連行」と捻じ曲げた。

ちなみに、最初の吉田関係記事は80年でした。それを含めて2014年、朝日新聞は16本の記事をとりけし、おわびを発表しました。

木走氏は「本件の張本人である朝日新聞が、いったいどの面下げて政府批判を展開しているのか」と問うています。朝日新聞の幹部は正座してこの記事を“写経”したらどうなのか。というわけで、木走氏の記事はまだ続きます。ぜひ元をご覧あれ。

神谷匠蔵氏の記事

さて、もう一つは、アゴラの神谷匠蔵氏による「なぜ韓国だけが他のどの国よりも「反日」なのか」という記事です。

神谷氏が注目したのは、釜山大学で准教授をしていた米国人政治学者ロバート・ケリー氏による「なぜ南韓は日本のことで頭がいっぱいなのか」という論文です。

ケリー氏の元論文はこちら→ Why South Korea is so obsessed with Japan

神谷氏は、「どちらのサイドにも感情移入をすることもなく韓国人の日本に対する嫌悪感情の異常性を指摘」して、その原因まで探っていると、評価しています。

たしかに、ケリー氏は実に客観的にモノを見ています。

(邦訳)ある程度韓国で時間を過ごしたことのある人には即座に明白であるように、韓国の民衆及びエリート層はともに日本に対して常軌を逸した、そして否定的な執着を持っている。

(邦訳)韓国メディアは日本についてばかりひっきりなしに話題にするが、大抵は報道としての客観性はほとんどなく、またそこでは否定的な言辞が多用される。

と、ケリー氏は単純に驚き、この異常な社会現象の理由について探ります。とくに韓国人の日本に対する「異常な執着」について次のように分析します。

(邦訳)韓国のナショナリズムは常に「何かの否定」として現れるが、特に「日本」の否定によって特徴づけられ、かつこれが重要なのだが、「北朝鮮」の否定としては現れないのだ。この理由は、私の仮説では、北朝鮮が実に見事に韓国のナショナリストの言説を操作しているために韓国側が北朝鮮に敵対する形で自己を規定できないからである。

これはどういうことなのかというと、元論文のほうですが、ケリー氏は

“North Korea’s real ideology is not socialism but a race-based Korean nationalism”(北朝鮮の真のイデオロギーは社会主義ではなく人種に基づいたコリアン・ナショナリズムだ)と喝破しています。

そして、南北コリアはこの「人種に基づいたコリアン・ナショナリズム」という価値観で、己の正当性を競う関係にあるというわけです。

神谷氏自身は次のようにケリー氏の見解をまとめます。

だが、哀れなことに韓国人は北朝鮮人に比べて「朝鮮民族」としての純粋性において劣っているという自覚を持っており、従って「朝鮮民族」としての責任を韓国人でありながら果たすためには仇敵日本を叩き続けるしかない、かつそうすることに対してはアメリカも、中国も、ロシアも、北朝鮮も、また国連や国際社会も別に文句を言わない。文句を言うのは日本だけ、否、日本の「右翼」だけであり、同じ日本人でさえも「リベラル」派は文句を言わないどころか韓国人の反日感情を真に受けて「謝罪」にとどまらず「賠償」までしてしまう。そうであるなら、急速に進む西欧化、グローバル化の中でアイデンティティを失いつつある韓国人にとって「反日イデオロギー」ほど便利なものはない、というのがKelly氏の見解である。

ケリー氏は、彼らは南とか北とかの「国家」よりも「民族」を基準にして考えるのだといいます。そして、韓国の政治的アイデンティティが十分に民主的でポスト人種主義的でないから、「人種ナショナリズム」的なイデオロギー競争を仕掛けられて劣勢に立ってしまうのだと言っています。たとえば、韓国側には、自分たちはヤンキーのコロニーであるというような自己卑下などがあるわけです。ちなみに、ケリー氏は「Korean race (the minjok)」と記していますから、日本語でいえば通常の「民族主義」や「民族ナショナリズム」、「自民族優越思想」などの用語でも問題ないと思われます。

どうでしょう、ケリー氏の指摘は極めて問題の本質をえぐっていないでしょうか。というわけで、神谷氏の記事とケリー氏の元記事をぜひご覧あれ。

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