さる12月21日、良いニュースがあった。政府が日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉を正式に決定したのだ。周知の通り、同原子炉には約1兆円の予算が投じられてきたが、ナトリウム漏れ事故を起すなどトラブル続きで、低稼働・高維持費が問題になっていた。廃炉決定が遅すぎたくらいだ。ただし、官房長官は「今後も核燃料サイクル政策と高速炉開発を推進していくことが極めて重要」と釘を刺している。
菅氏はともかくとして、決定に関与した“原子力関係者”なら、本当は六ヶ所の再処理工場が「もんじゅ」以上のお荷物である事実は内心で承知しているはずだ。
再処理工場というのは、原発で使用された後の核燃料からまだ使えるウランやプルトニウムを取り出す施設である。しかし、凄まじい巨大設備と高コストな手法を使ってわざわざ使用済み核燃料を再処理する意味は、海中ウランが可採化した時点で失われた。
私は4年前に「アゴラ」で次のような記事を書かせてもらった。
原子力が持続可能エネルギーになる日 (以下引用)
核燃料サイクルは即刻中止すべきだ。これは相場でいえば「損切り」のようなものなので早ければ早いほどいい。(略)理由は「必要ないから」である。そもそも核燃料サイクルの目的は「原子力の持続可能化」と「万一の核武装のため」だ。ところが、近年、原子力に生じつつあるイノベーションにより、はるかにシンプルな手段でこの二つの目的が達成可能になる見通しが立ちつつある。よって、核燃料サイクルは完全に時代遅れのお荷物と化すと思われる。あとは「いかに終わらせるか」ではないだろうか。
海中に溶存するウランがある種の化学捕集材を使うことによって、いわば自然捕集のような形で獲得することが可能になった。同じ組織である日本原子力研究開発機構の別部門からこのイノベーションが誕生したことは興味深い。
しかも、資源量的に事実上無尽蔵であるばかりでなく、すでに市価の数倍でイエローケーキ製造の目処も立っている。もともと原子力発電における燃料費の割合は小さいので、この程度なら経費的にほとんど問題ないどころか、大量のウラン残土と環境破壊の爪跡を残さない分、従来のウラン鉱石由来の核燃料よりもはるかにマシな選択と言える。
つまり、海中ウラン採取法は、経済性をクリアし、資源量と環境保護の観点からも、従来より優れた核燃料製造方法と認めることができる。
要するに、もはや巨費を投じてセコセコと核燃料を再利用する意味はない。政府の仕事は、イノベーションの後押しによる新産業の新興であって、それによって潰れる側を守ることではない。たしかに、その時点におけるベストのエネルギー政策を立案した経済官僚たちにとって、自分たちがシコシコと戦艦大和を作っていたという現実は受け入れ難いに違いない。しかし、私たち電力消費者である個人や企業からすれば、いらんモノは、いらんのだ。政府はいったい「誰」のために核燃料サイクルを続けるというのか。
一刻も早く、2兆円強かけて作ったばかりの巨大施設が無用の長物化した現実を受け入れ、政治主導で、この再処理施設の、そのまた再処理(利用)法を考えるべきだ。
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