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中東大戦を引き起こそうとしているイスラエルの謀略

出典:産経新聞。2016.9.1、首相官邸で安倍総理と握手するサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン副皇太子。サルマン氏は現国王の息子で、1985年生まれ。現在、第1副首相・国防大臣を兼務するサウジの若きリーダー。

北朝鮮問題の「次」も見据えておかなければなりません。

最近、サウジアラビアの権力闘争が話題になったことはご存知かと思います。

サルマン国王の息子ムハンマド皇太子が「汚職対策」として、11人の王子、数十人の現職また元閣僚など、200名近い重要人物を一挙に逮捕拘束しました。中でも逮捕されたアルワリード王子は資産一兆円以上の大富豪として知られている。

いったいこの動きの本質はなんなのか?



激化する一方のサウジアラビアとイランの対立

この皇太子率いる「汚職対策委員会」が国内の対抗勢力を大量粛清し始めた少し前に、首都リヤドの国際空港に対してミサイル攻撃がありました。これは撃墜されました。発射したのはイエメンの反政府武装勢力「フーシ」です。

しかも、それはフーシ派領内からヒズボラが撃ったもので、イラン製のミサイルだったと、サウジ政府は発表しています。

外相は「われわれはこれを戦争行為とみなしている」とイランを非難しました。

で、最近、またこのサウジへのミサイル攻撃が活発化している模様です。

サウジの視点でいえば、イランの勢力がすぐ南のイエメンまで及んでいる状態です。

前も触れましたが、イラン・アサド政権・ヒズボラは「シーア派連合」です。民兵兼政治団体のヒズボラはイランの支援を受け、レバノン内で次第に勢力を拡大し、つい先月、スンニ派のハリリ首相が命の危険を感じてサウジに亡命しました。

サウジアラビアとイランは、サウジがシーア派指導者を処刑した昨年の段階で、すでに断交しています。

対するイランのほうもやられています。

今年の6月にはイラン側が激怒する大事件がありました。それが首都テヘラン国会議事堂やホメイニ廟での同時テロ事件です。イラン側は死者17名と発表しています。犯人はIS関係者ですが、イランの革命防衛隊は背後にはサウジがいると非難しています。

これは日本に例えるなら、国会議事堂や天皇陛下関連の施設が外国のテログループに攻撃された事例ですから、たいへんな事件なんですね。日本の報道では小さい扱いでしたが、一昔前ならこれで戦争になってもおかしくない事件でした。

イランとの戦いも見据えているムハンマド皇太子の国内急進改革

ペルシア湾を挟んで互いににらみ合うサウジとイラン。イランが支援するシーア派勢力はイスラエルのすぐ北にあるレバノンと、サウジのすぐ南にあるイエメンにまで及んでいる。

このようにサウジとイランの緊張が非常に高まっている中での、先のムハンマド皇太子の国内粛清だったわけです。当然、両者は連動していると思います。

このムハンマド皇太子は反イランの急先鋒らしい。イランの大統領の上に立つハメネイ師を指して“ヒトラー”呼ばわりするほです。そして、はっきりとイランに対しては宥和政策はとらない、影響力拡大を阻止すると、断言しています。

また、イエメンへの軍事介入を主導しているのがこのムハンマド皇太子でもあります。

ところで、中国では「汚職撲滅」は政敵を粛清するための口実として使われています。今回のサウジの件も同様で、本当は国内の「邪魔者」の粛清でしょう。だいたい、一番、国を私物化し、腐敗しているのはサルマン国王自身ではないのだろうか。

とすると、今回の「汚職撲滅」は額面通り受け取るべきではありません。ましてや「ブッシュ一味などの世界権力に対する一斉逮捕の一環なのだ」というニセ情報など論外でしかない。

原油収入に依存しきったサウジの現状に危機感を持つ若き指導者の荒療治的な国内の近代化改革という面は見逃せない。ただ、それはイスラム世界におけるイランとの覇権争いと表裏一体でもある。だから、すでに中東各地で代理戦争を行い、今も一触即発の外敵イランに対峙するために、国内を引き締め、財源を確保したかった。

つまり、端的にいえば、「イランとの戦争に向けた国内改革であり準備」ではないか。

そしてサウジとイスラエルの急接近・・何か話が出来すぎていないか?

ところで、イスラエルとイランが戦争一歩手前の対立にあるのはご承知の通り。

ネタニヤフ政権はイラン核合意に猛反発しています。そこへ親イスラエルのトランプ大統領も賛同して、イラン核合意はけしからんと言い始めた。

トランプの親イスラエル姿勢については、彼が大統領に就任した直後に指摘しました。

【関連記事 トランプ大統領の誕生で中東大戦が勃発か!?】

イスラエルがずっとイランとの戦争を準備しているのは間違いありません。

そこへトランプ政権という強い味方が現れた。

そして今、サウジアラビアとイランの対立が激化し、ムハンマド皇太子という急進的反イラン主義者の若き指導者が台頭している。

当然、イランという共通の敵を持ったイスラエルとサウジは今、急接近している。

「アラブとイスラエルは永遠に対立するのだ」といった従来の常識からは考えられないような状況が生じてきているわけです。

果たして、一連の動きは“偶然”だろうか?

イスラエルにしてみれば、対イラン戦争において、アメリカとサウジアラビアの味方を得ることができれば、一挙に有利になります。

地図を見ての通り、サウジとイランはペルシア湾を挟んでがっちりと対峙している。一方、米軍はアラビア海からペルシア湾に展開して、イランを南西部から突くことができる。イスラエルはレバノン、シリアへと侵攻し、空からテヘランなどを最短距離で突くことができる。陸の橋頭堡を通して、イラン北部を突くことも不可能ではない。

イスラエル単独ではイランに戦勝することは難しいが、この二カ国が参戦すると、一転して戦いが有利になる。

中東の「新宗教戦争」の背後にいるユダヤ、そして石油危機の到来!

トランプ政権の背後にシオニストがいることはご承知の通り。

すると、ムハンマド皇太子政権の台頭の背後にも彼らがいても不思議ではない。

ここが謀略の天才モサドの恐ろしさです。彼らは様々な国に潜り込んでいる。「イスラム国」指導者のバグダーディーもモサドのエージェントという噂が根強い。

16世紀にキリスト教はカトリックとプロテスタントの二派に分裂し、以来、ヨーロッパは宗教戦争の泥沼に引きずり込まれました。

ユグノー戦争における1572年8月の「サン・バルテルミの虐殺」

興味深いことに、当時、新旧教の両方の領主のバックにユダヤ商人がいました。キリスト教徒同士の殺し合いによって一番利益を得たのが、迫害されていたユダヤ人でした。

今、中東地域で過去の欧州とそっくりの現象が起きている。

彼らはずっと中東地域における宗派対立を煽ってきた。イスラム教徒同士が二派に分かれて争うことによってもっとも利益を得るのはイスラエルです。

どうやら、シリア内でのシーア派とスンニ派の対立を、全中東にまで拡大しようとしているらしい。つまり「新宗教戦争」を引き起こすつもりだ。

大方、デスマッチで共倒れさせた後、イスラエルが中東の覇者になるシナリオだろう。

最初にこういう「大きな絵」があって、そのために中東での実戦経験のあるマティスやマクマスターが閣僚として引き抜かれたのかもしれない。

しかし、ペルシア湾を挟んで、両岸の大国が戦争を始めたらどうなるのか。

これまでの中東戦争では、サウジが関係したのは、1948年の第一次中東戦争だけ。だから日本にはほとんど影響がなかった。第二次中東戦争以降も石油供給は続いた。

しかし、今度はサウジが中心になる。ペルシア湾が舞台になる。

アメリカとしてはさして問題ない。なにしろブッシュ政権の頃から石油の「脱中東依存」を進めてきて、今ではほとんど自給可能になっている。

今、中東各地で起きているイランとサウジの宗派対立は、サウジを使嗾して対イラン戦に突っ込ませるイスラエルの謀略に違いない。イランのバックにはロシアもいる。

「中東大戦」は近い。その時、イランは必ずサウジの原油施設を攻撃する。私はかなり前から想定していて、できるだけ早く内燃自動車からEVへと転換すべきだと訴えてきたが、残念ながら日本の運輸部門は新石油危機から免れることはできないだろう。

Takaaki Yamada: