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戦争を招く石油の全面禁輸と海上封鎖という最後の対北制裁カード

出典:Pixabay CC0 Public Domain

北朝鮮が11月29日に発射した「火星15」は射程が1万3千キロ、米本土ほぼ全域に届くと言われています。ただし、大気圏再突入技術については不確かなようです。

いずれにしても、ICBMの発射ということで、すぐに国連安保理の緊急会合が召集されました。そこでヘイリー米国連大使は二つのことを明確にしました。

一つは、すべての国が北朝鮮との外交・貿易関係を断絶するよう求めたこと。

もう一つは、トランプ大統領が習近平主席に電話を入れて、北朝鮮への原油供給を中止するように要求したということ。

安保理の「9・11」制裁では、「北朝鮮の輸出収入9割断ち」までいきましたが、中国の抵抗もあって、石油に関しては「供給制限」に留まりました。

いよいよ、残しておいた「最後の制裁」をやろうというのです。

これまでの経済制裁では、北朝鮮社会は1、2年で破綻すると言われてきました。

対して、中国が原油供給を完全に止めると、数ヶ月で破綻するとも言われている。



北朝鮮の「生命線」を改めてトレースする

From Wikimedia Commons

12月11日、中国は延期していた「中朝友誼橋」の閉鎖に踏み切りました。10日間の予定ということです。遼寧省丹東と北朝鮮側の新義州を結ぶルートは、中朝貿易の7割を担っているといいます。この友誼橋(ゆうぎばし)のすぐそばを、実は地下パイプラインが通っています。輸送量は年間約54万トンで、北朝鮮の需要の大半を担うという。

北朝鮮が使用している原油は、もとは黒龍江省の大慶油田で掘削されます。それが貨物列車で輸送され、丹東にある中国石油のタンクに貯蔵されます。

そして、下の加圧装置を使って、一気に北朝鮮側に送られる。

鴨緑江地下のパイプラインは、30キロメートル先にある平安北道の「烽火化学工場」に連結しています。ここで原油が各種石油製品に精製される仕組みです。

見ての通り、単純にいえば原油を加熱すると、ガソリン・ナフサ(プラスチックやゴムなどの化学原料)・灯油・軽油・重油などに別れるわけです。

自動車燃料となるガソリンと軽油は、原油から4割とれます。

やっぱりアメリカは戦前の対日方式で北朝鮮を追い込んでいる

今、トランプ大統領は、上の生命線を「断ち切るべきだ」と、習近平主席に突きつけているわけです。また、国連安保理の会合でも、ヘイリー国連大使らが「原油の供給を完全に停止する」という新たな対北制裁を主張し、議論しています。

私が今年8月に書いた記事の一部を再掲します。

なぜ中国が送油管のバルブを閉めると第二次朝鮮戦争になるのか?
まず前回の記事で肝心なことを書き忘れていました。 仮に今の日本がアメリカの後方支援という形で北朝鮮と交戦状態に突入し、また憲法改正に踏み切ったら、これほど明確な「戦後日本の終わり」はないだろう。 さて本題。 さる8月5日、国連安保理は北朝鮮...

「石油を止めろ」という中国への要求に「何か」を思い出さないか

それにしても、なぜアメリカは、中国に対して、北朝鮮に対する石油の輸出禁止を執拗に要求しているのだろうか。

現代軍隊は石油で動く。それが無ければ、戦車も飛行機も自走砲も輸送車両も軍艦も潜水艦も何もかもが動かない。

普通に経済を回す――トラックやディーゼル機関車を稼動し、工場に動力や熱源を供給する等――だけでも石油はどんどん消費していくので、禁輸されれば軍事分野への供給は自然と細っていく形になる。

これは金正恩政権からすれば、「座したまま死ぬか、それとも戦って死ぬか」という選択を強いられる格好に等しい。まさに対米開戦前の日本と同じ。

すると、今の「流れ」は、私たちにとってデジャヴではないだろうか。

1941年7月、当時のルーズベルト政権は、米国内の日本資産を凍結し、石油を全面禁輸した。同年9月には鉄スクラップの輸出も禁止した。

ただし、表ではあくまで、日本側が「平和的解決」に望みを抱くよう仕向けた。そうやって外交を演じながら、実際には日本の産業と軍事力の息の根を止めにかかった。

軍部はとっくにアメリカの本音を見抜いていたが、それでも昭和天皇は彼らを抑えて対米戦を回避するため、東條英機に一途の望みを託した。

しかし、振り回された挙句、結局はハルノートを突きつけられて、アメリカは外交なんかやる気はないと気づいた。

今の情勢は、その対日戦直前の外交交渉をなぞっているようにも思える。

アメリカは海上封鎖も実行しようとしている

しかも、石油供給の完全遮断に加えて、アメリカは北朝鮮の「海上封鎖」も目論んでいます。これはあらゆる(海路を使った)物資の遮断といえるでしょう。

ティラーソン国務長官は「国際社会は北朝鮮に出入りする船を遮断しなければいけない」と述べていましたが、先のICBM発射後は「公海上での任意検査権限」を主張しているようです。これは旗国(北朝鮮)の同意を得る必要はないということです。つまり、公海上でいきなり北朝鮮の船に踏み込んで臨検してもいいということ。

これはもともと9月の制裁で提案したものですが、中ロなどの反対で「同意が必要」に修正された経緯があります。これを正式に決議化しようと考えている。

朝鮮日報は12月1日の記事で次のように述べました。

米国は北朝鮮に出入りする船舶の『遮断』を強調しており、これが今後、北朝鮮に対する『海上封鎖』につながるのか、注目している。際法的に、船舶の拿捕・撃沈までを含む海上封鎖は事実上の戦争行為とみなされる。核・ミサイル開発を防げない場合、結局『海上封鎖』などの軍事オプションを考慮せざるを得ないだろう。

上にあるように、どうやら国際法上も戦争行為になるようです。

つい先日、北朝鮮も、アメリカによる海上封鎖は「宣戦布告」「国際法違反」「侵略行為」であると見なすと声明しました。

以上、「石油の全面禁輸」と「海上封鎖」の二つが実行されたら、北朝鮮はむしろできるだけ早く開戦しようとするかもしれない、というのが私の危惧するところです。

これが一番怖い。なにしろ自殺覚悟の開戦ともいえる。いきなり「先制の核ミサイル奇襲攻撃」もありえる。また、同じ核でも、初弾は日米へのEMP攻撃かもしれない。

アメリカ的には「ほら見ろ、北朝鮮が先制攻撃してきたじゃないか!」と、開戦の大義名分になるわけですが、日本としてはたまったものではない。

いずれにしても、できるだけ日米を道連れにするのが目的である以上、独裁者金正恩が切り札の核ミサイルを使わないということはありえない。

安倍総理的には、おそらく、「対話でもない、戦争でもない、圧力を維持して相手を降参させるか、クーデターなどの内部崩壊を誘う」というシナリオだったと思われる。

私が思うに、この第三の道は「賭け」に等しい。たしかに、金正恩政権がクーデターで自壊するシナリオもありえる。

その時、安倍総理は「戦わずして勝った」栄光を掴むだろう。

しかし、アメリカが「石油の全面禁輸」と「海上封鎖」という「最後の手段」をとれば、万事休すと考えた北朝鮮は、死中に活を求めようとする可能性が高い。

蛇足:依然として黒い液体の頚木につながれたままの日本

戦前の日本のように、北朝鮮が追い詰められて暴発するか、うまく自壊してくれるかはともかく、実は北朝鮮の現状を決して笑えないのが日本です。

実は、日本も依然として同様の問題を抱えている。

日本はスーパータンカーを使って中東から毎年2億キリロットルもの原油を輸入しています。私は何度も警告していますが、これは危うい。サウジアラビアは近いうちに戦争・内乱に巻き込まれるだろう。イエメンのフーシ派がサウジに向けてミサイルを撃ち始めているが、このように内戦の火がすぐサウジの足元まで迫っています。

最悪なのは、イランと、米・サウジ・イスラエル連合が戦争になることです。

中東大戦を引き起こそうとしているイスラエルの謀略
北朝鮮問題の「次」も見据えておかなければなりません。 最近、サウジアラビアの権力闘争が話題になったことはご存知かと思います。 サルマン国王の息子ムハンマド皇太子が「汚職対策」として、11人の王子、数十人の現職また元閣僚など、200名近い重要...

私は「神々のアジェンダ」(左サイドバーで紹介中の本)で、ものすごく嫌なシナリオを紹介しました。それは大震災と財政破綻と石油危機があまり間をおかずに連続して到来するというものです。

その時、日本経済は一挙に地獄に転落すると予想される。

最悪を予測すると、「危機を煽るな」と批判する人もいる。

しかし、第二次大戦で国が灰燼に帰したことも、福島で4基の原発が重大事故を起したことも、最悪のケースを予測して対策を立てなかったからではないだろうか。

日本には自動車とエネルギーシステムをセットで考えられる大局観の持ち主がいない。

Takaaki Yamada:

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