どうも奇妙なことが連続して起こっている。
まず、6月12日、サウジアラビア南西部のアブハ空港のロビーが、イエメンの「フーシ派」によるミサイル攻撃を受けて、市民26人が負傷した。
フーシ派は、イエメンの内戦において、イランが支援する組織。最近も無人機等でサウジの施設を繰り返し攻撃しているし、今回は自身でも犯行を誇示している。
サウジは「イランが支援している」として、イランを強く非難している。
次に、翌13日、ホルムズ海峡付近で日本のタンカーが2発の砲撃を受け、炎上漂流した。メディアによっては魚雷と表現しているところもあるが、いずれにせよ、砲撃・魚雷攻撃ならば、軍隊か又その水準にある軍事組織による犯行以外にない。
(Aerial footage shows one of the oil tankers targeted in the Sea of Oman)
先月にもサウジの石油タンカーが4隻も機雷などで攻撃されている。
このタンカーへの攻撃に対して、米ペンタゴンは直ちに「イランの責任である可能性が非常に高い」という声明を出している。むろん、イラン側は断固犯行を否定。
今回の出来事の前に、アメリカは「イランが攻撃を計画している」などとして、空母打撃群とB52爆撃機を急きょ、ペルシア湾に派遣していた。
そして、「気になる声明」を出していた。
その時、私は違和感を次のように記していた。
「2019年、やっぱり米・イスラエルはイランと戦争する!2019/5/16」
私が引っ掛かるのは、ボルトンとポンペオの次のような声明。
米、中東に空母打撃群派遣 イラン軍に攻撃準備の兆候 5月7日 産経新聞
(前略)「米国はイランとの戦争を望んでいない」としつつも、「代理勢力や(最高指導者直属の)革命防衛隊、通常のイラン軍によるいかなる攻撃にも対応する万全の準備をしている」と強調した。
欧州歴訪中のポンペオ米国務長官は6日、記者団に対し、イランが支援するレバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラなどによる攻撃について、「イラン指導部に直接責任があるとみなす」と述べた。
このように、ボルトン安保補佐官は「代理勢力」、ポンペオ国務長官は「ヒズボラ」の名を上げて、イラン軍の直接攻撃でなくとも、それらの組織からの攻撃があれば、イランの責任と見なすという、むちゃくちゃなことをしれっと主張している。
ヒズボラの中にはモサドの工作員が浸透していると言われている。
つまり、イスラエルがヒズボラに米軍を攻撃させて、トランプ政権がそれを開戦の口実とする可能性は十分ありえるわけだ。
今回のサウジ空港攻撃と、ホルムズ海峡でのタンカー攻撃によって、ボルトン補佐官言うところの「代理勢力」による攻撃が現実化したわけだ。
そして、イラン軍の直接攻撃でなくともイランの責任を見なすと明言した通り、今、米政府は「イランの責任だ」と主張している。
しかも、この事件を口実にして現場に米海軍が向かっている。
安倍総理はシオニストに嵌められたのだろう
これらの一連の出来事が、安倍総理のイラン訪問中に起きた点が注目に値する。
安倍氏はトランプの意を汲んで、緊張が高まるアメリカとイランの間を仲介するためにイランを訪問し、最高指導者のハメネイ師らと会談した。
安倍総理は会談後、ハメネイ師が「核兵器を製造も保有も使用もしない。その意図はない。するべきではない」と発言したことを記者団に説明している。
これは核開発問題に関して「ハメネイ師の言質をとった」格好だ。
安倍氏の今回の訪問に対して、何の成果もなしと主張する声があるが、これはこれで一つの成果である。しかし、これは反イラン勢力にとって、より大きな成果である。
なぜなら、イランがウラン濃縮装置を動かして兵器級核物質の製造に着手したら、「イランの最高指導者が国際社会に嘘をついた」という口実に転用できるからだ。
また、安倍総理は、ハメネイ師に核合意を守るように説得し、かつトランプからのメッセージを伝えようとしたが、ハメネイ師は次のように拒絶した。
「私はトランプがメッセージをやり取りするに値する人物とは考えない。私は彼にレスポンスしないし、答えることもない。」
これはイラン側の外交の失点だなと思った。
実は、今回の安倍総理によるイラン訪問は、欧米メディアでも大きく扱われている。
そして、案の定、このハメネイ師の言葉は、英語通訳を被せてニュースでどんどん報じられている。視聴者(特に米大衆)は「イランが安倍による仲介を拒絶した」と受け止め、悪印象を抱くに違いない。もし一連の出来事の「演出者」がいたら、イランが悪者との印象を与えることのできる頑な態度に、逆に大喜びしているだろう。
彼らの誤算だったのは、サウジ空港とタンカーへの攻撃で、それほど市民の犠牲がなかったことだ。前者が26負傷で、後者は44人の乗組員全員が無事救助。
不幸中の幸いだが、死者が多ければ、もっと大騒ぎになっていただろう。
いずれ欧米メディアは、今回の安倍訪問をチェンバレン外交と比較し始めると思う。
英外相チェンバレンはヒトラーに宥和政策をとり、一時的な戦争回避を成し遂げたことでノーベル平和賞を貰ったが、今日ではそれは誤りだったとされている。
つまり、「日本の安倍総理が戦争を回避しようとして仲介役を頑張ったが、今回は失敗に終わった。しかし、チェンバレンの轍を踏まなくて結果的に良かったのではないか」といった類いの論調である。暗に「イラン≒ナチスドイツ」という印象操作だ。
だから「悪のイランとの戦争もやむなし」と、とりわけ米大衆に思わせる。米大衆の大半はアラブ人とペルシア人の区別がつかず、同じムスリムとしか思ってない。
そう考えると、安倍総理のイラン訪問は、その「演出者」たちから、対イラン戦の開戦の口実として政治的に利用する意図で、米側から要請された可能性がある。
私は以前に次のような記事を書いた。
(前略)かくして、シオニストはイラン・レバノン・シリアを一挙に打倒するつもりです。その「中東大戦」に勝利することが大イスラエル実現の要になるわけです。
イランは準大国です。イスラエルにとっても戦勝は容易ではない。だから、先んず潜在同盟敵国のシリアを内戦に引きずりこみました。同じ理由で、自陣には最強の同盟国を得えたいはずです。それが「トランプのアメリカ」というわけです。
つまり、シリアが内戦状態になったこと、トランプ政権が誕生したこと、そして今回、安倍総理がイランを訪問して仲介役が失敗に終わったこと・・すべて繋がっている。
これは、ずっと以前から、シオニストによって入念に計画されていたことなのだ。
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