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ペンス副大統領演説で米中は「開戦前」に突入した

さる10月4日、ペンス副大統領が中国に対して極めて敵対的な演説をしたことで話題になりました。場所はワシントンにあるハドソン研究所。あの日高義樹氏が上級研究員をしているところでもあります。創設者は戦後日本の躍進をもっとも早くから予言したあの未来学者のハーマン・カーン(Herman Kahn)。

こういう個人や法人の献金で創設・維持されているシンクタンクは、資金源がどこかを見ることが一つのポイントだと思います。カーン以外の共同創設者を遡ると、どうやらロックフェラー系のようです。だから世界支配層の意志とは無関係ではあるまい。



ペンスの対中批判はすべて事実であり正しい

ペンス演説の全文はホワイトハウスのサイトでも公開されていますが、ジャーナリストの長谷川幸洋氏が次のようにうまくまとめているので引用させていただきます。

米副大統領の演説は、実は対中国への「本気の宣戦布告」だった 2018.10.12

・中国は政治、経済、軍事的手段、プロパガンダを通じて米国に影響力を行使している。

・米国は中国に自由なアクセスを与え、世界貿易機関(WTO)に招き入れた。経済だけでなく政治的にも、中国が自由を尊重するようになると期待したからだ。だが、期待は裏切られた。

・中国政府はあらゆる手段を使って米国の知的財産を手に入れるよう指示している。安全保障に関わる機関が「窃盗」の黒幕だ。

・習近平国家主席はホワイトハウスで「南シナ海を軍事化する意図はない」と言った。だが、実際には人工島に対艦、対空ミサイルなどを配備している。

・最近も中国海軍の艦艇が米海軍のイージス艦に異常接近した。

・中国は国民を監視し、反政府的人物は外を一歩、歩くのも難しい。

・中国最大の「闇(underground)教会」は閉鎖され、キリスト教徒や仏教徒、イスラム教徒が迫害されている。

・中国はアジア、アフリカ、欧州、南米で借金漬け外交を展開している。負債が払えなくなったスリランカには、港を引き渡すよう圧力をかけた。中国の軍港になるだろう。

・米国は台湾の民主主義を支持する。

・中国は米国の企業や映画会社、大学、シンクタンク、学者、ジャーナリスト、地方や連邦政府当局者に圧力をかけたり、見返りの報酬を与えている。

・最近も、ある大企業を「米国の通商政策を批判しなければ、事業の許可を与えない」と脅した。

・米地方紙の「デモイン・レジスター」に中国政府のPR記事を挿入し、米国の通商政策を批判した。だが、米国民は騙されない。

・米国のジョイントベンチャーには、社内に「共産党組織」を設置するよう要求した。

・ハリウッドには中国を好意的に描くよう、日常的に要求している。

・中国は英語放送を通じて米国民に影響を与え、学会や大学にも資金提供を通じて圧力をかけている。メリーランド大学で学んだ中国人学生は卒業式で「自由な言論の新鮮さ」と語っただけで、共産党機関紙が彼女を非難し、中国の家族も嫌がらせを受けた。

・ハドソン研究所も中国政府が好まない講演者を招いただけでサイバー攻撃された。

・我々のメッセージは「大統領は引き下がらない。米国民は惑わされない」だ。

・トランプ政権は米国の利益と雇用、安全保障を守るために断固として行動する。

とまあ、現役の副大統領たるものが、よくもこれだけ中国の欠点をズラズラと並べ立てたてたなと感心するくらい、余すところがない。

出典:産経新聞

要は、中国は国家ぐるみの泥棒、嘘吐き、アンフェア、自由の抑圧者、宗教迫害者というわけです。そういう中国式のやり方で米国内も汚染しているのだと。

当然、中国側は激怒プンプンです。外務省報道官は公式にペンス演説を非難し、王毅(ワンイー)国務委員兼外相に至っては「間違った言動を直ちに止めよ」などと、例の謎の上から目線でポンペオ国務長官を批判した。

この王毅は、昨年には日本に対してこんなお説教を垂れていましたね。

「われわれはむろん日本との関係を改善し、両国人民に幸せをもたらすことを願っている。しかし日本側はまず自らの「心の病」を治す必要があり、中国の絶えざる発展・振興という事実を理性的に取り扱い、受け入れなければならない。」(新華社日本語版

自分たちが相手を陥れ、嫌がらせを実行してきたのに、「おれたちは友好を願っているが、相手のせいで関係がうまく行かないのだ」と、公然と責任転嫁する。

ウンザリするような、いつもの政治的虚言癖です。

こういう「すべて相手が悪い、相手のせいだ」という思考・言動は「中韓論法」と呼んでもいいくらい彼らに特徴的なものです。少なくとも対日ではすべてコレ

こういう自己欺瞞を恥とも思わない自己正当化の思考・言動が儒教の負の側面から来ているのか、私にもよく分からない。要するに、相手が何でも自分の言いなりになる奴隷でないことが気に食わないという「身勝手な思考」だけはよく分かる。

これが「目下」の人格を認めない儒教メンタリティなのだろうか。だから、私に言わせれば日中友好や日韓友好ほど簡単なものはない。日本人が奴隷になればいいのです。

おっと、話がそれた。

私はペンス氏の対中批判は、いちいちもっともだと思う。対して、中国のほうは、自分に都合の悪い事実は、たとえ事実であっても何が何でも認めないという姿勢。

当然、事実を盾に取っているほうが強いわけで、米中対立は、少なくとも政治的にはアメリカのほうに大義名分があると言えます。

このペンス演説を読めば、もはやトランプ政権というか、アメリカ政治が、中国を「道徳的に許せない」というふうに感じ、憤っていることは明らかだと思います。

米中は「新冷戦」というより「開戦前」に突入した

さて、以上に対して、米中の(経済的な)「新冷戦」が始まった、という見方が欧米で強まっているようです。長谷川幸洋氏も、題名こそ「演説は本気の宣戦布告だった」ですが、内容を読む限り、この見方に立っています。

ただし、長谷川氏はトランプ政権が誕生する少し前の「2015年」に着目する。

この年、元CIAで現ハドソン研究所の中国戦略センター所長でもあるマイケル・ピルズベリー博士が、対中宥和派から強硬派に転じた。中国と仲良くして発展を促せば民主化していく、という以前の自分の考えが誤りだったと率直に認めた上で。

彼は『中国100年マラソン』と題するレポートを出しており、中国はアメリカの覇権に取って代わるための長期の戦略を実行しているのだと説いた。

また、トランプ政権発足当初に話題になりましたが、貿易政策を担当する「国家通商会議」が新設され、トップとして対中強硬派ピーター・ナヴァロ・カリフォルニア大教授が招聘されました。彼が『米中もし戦わば』を出版したのが2015年。

このことから、長谷川氏は次のように考える。

2015年は、どういう年だったか。

中国が南シナ海で岩礁を埋め立て、人工島に滑走路を建設していることが、初めて米国の偵察衛星によって確認されたのは14年11月だった。軍事基地建設の意図に気付いて、当時のオバマ政権が駆逐艦を派遣し「航行の自由作戦」を展開し始めたのが15年である。

(略)ピルズベリー氏やナバロ氏が主導した中国脅威論は、2015年ごろから米国で本格的に議論され始めた。それが3年経って今回、ペンス演説によって正式にトランプ政権の政策に採用された形だ。今回の演説は、その証拠である。

米中新冷戦は、内実を見れば「トランプ氏という一風変わった大統領によって始められた」と理解するのは正確ではない。それはピルズベリー氏やナバロ氏のような専門家によって、米国の中国に対する認識が根本的に改められた結果なのだ。

これはたしかにそうだろうと私も思います。

しかし、やや異なるのは、これ以前にCFRとしての方針転換があり、さらにその前に世界支配層トップとしての世界戦略の転換があるということです。

私は何度も書いていますが、中ロが非公式に対米同盟を確認したのが2005年の後半であり、実際はこれをもって新冷戦に突入しています。

プーチン・ロシアの反撃と「影の政府」の第三次世界大戦路線
前回、「9・11同時多発テロ」の隠された6つの大目的について述べた。 むろん、細かく言えば、ビジネス上の動機から手っ取り早くツインタワーを取り壊したかったとか、そこのフロアにある「何か」の機密を消去したかったとか、いろいろあるに違いない。い

いわば魏に対して、呉と蜀が同盟を結んだようなものでしょう。

すると、翌06年3月、ペンタゴンは中国を仮想敵国に定めました。

毎年二桁の軍拡を行い、ロシアやイランやベネズエラなどの反米国家と連携しているからです。そして、当時のブッシュ大統領は米中首脳会談で胡錦濤の面子を潰して、世界にむかって「米中二強時代」など許さないという意志表示をしました。

だから、第一次の安倍政権のとき、「これからは日中互恵関係だ」といって、温家宝あたりをよこして擦り寄ってきたわけです。

ただし、冷戦は始まっていたけども、他方で、中国がもっとも経済発展していた時期でもありました。ゴールドマンサックスやソロモンブラザーズなどの欧米金融資本の中国事業が莫大な収益を挙げていた頃です。だから、仮想敵国認定したといっても、その後の9年間は経済面での実利を優先していたわけです。そうやって獲れるだけ取って、株価が飽和してきた頃を見計らって投資を引き上げていく・・うまいやり方です。

それにアメリカとしても、中ロが反逆してきてすぐに対抗姿勢が整うわけではない。世論誘導一つにしても大変です。やはり、何年もの準備期間が必要なわけです。

はっきりと対立が表面化したのが、2013年のウクライナでの反政府クーデターからでしょうか。あれでまずロシアからウクライナを切り離し、対立を煽った。仮にアメリカの隣国でロシアがこういう真似をすれば、どんな反応をするだろうか。

そして同じ頃、中国が南沙諸島の浅瀬を埋め立て始めた。

長谷川氏は、中国が人工島に滑走路を建設していることを偵察衛星によって14年11月に確認できたことにより、アメリカは軍事基地建設の意図に気付いたという意見ですが、私の考えは異なります。アメリカはもっと前から気づいていました。

アメリカの狙いは「リメンバー・ロナルド・レーガン」か
わずかここ2年の間に第三次世界大戦の火種が出揃った現実は「今度の戦争はヒロシマ・ナガサキから始まる」紹介したが、果たしてそれらはすべて偶然だろうか。その中の多くは、実は大戦の勃発を意図して計画的に作られたものと推測することはできないだろうか...

はっきり言えば、通信傍受によって、建設当初から中国が南沙諸島で何を始めるつもりなのか知っていたのです。それをあえて放置したのが真実です。

アメリカは、あくまで中国が脚を抜けれなくなってから、国際問題にしたわけです。私は何度も言っています。中国が悪いからといって、アメリカが正しいとは限らないと。

中国の軽挙妄動を見て、世界支配層はさぞかし影で笑っていたことでしょう。「わざわざこちらから世界大戦の火種を作らなくとも、中国のほうから作ってくれた」と。

ですから、今回のペンス演説で、新冷戦に突入したというよりは、冷戦が「開戦前」に突入したというのが私の見方です。ドイツの『シュピーゲル』誌は、演説は「北京への宣戦布告」と表現しているそうですが、私はこれが本質に近いと思う。

元にあるのは、2005年から6年にかけての、世界支配層の戦略転換です。

それは中ロを打倒して、その戦後秩序でもって新世界秩序へと移行するというものです。十数年の準備期間を経て、その戦略がいよいよ実行段階に近づいたということです。

【イベント告知】

11月11日(日)、福井駅前にある地域交流プラザ「AOSSA」(アオッサ)で講演!

【昼の部 13:00〜17:00】

【夜の部 18:00〜21:00】

それぞれ2500円! 予約は以下からお願い致します。

玉蔵&山田高明 歴史スペシャル【昼の部】in 福井 2018年11月11日(日) [TICKET20181111_FUKUI_1]

玉蔵&山田高明 歴史スペシャル【夜の部】in 福井 2018年11月11日(日) [TICKET20181111_FUKUI_2]

私は1部で「世界史に出てこない裏の歴史」の話をして、2部で近未来のことや予言の話をしようと思います。

玉蔵さんも大変面白いネタを用意している。

コワい話、危ない話を聞きたい人は来たれ!

Takaaki Yamada: