安倍総理は東京オリンピック中止の決断を

オピニオン・提言系




連日の熊本の大地震で被害がどんどん拡大しています。阿蘇山の破局的噴火や、南海トラフ地震へと繋がってもおかしくはないと専門家までが言い始めています。

そうすると、2020年度の東京オリンピック開催は、いかにもタイミングが悪くないでしょうか。オリンピックの開催運営には競技施設の建設のほかに実に様々な経費が必要であり、現在の見積もりでも総額2兆円近いと言われています。しかも、過去の他国主催のケースを見ても、最終経費はどんどん膨らんでいく傾向にあります。「祭り」の終わった後でもえんえんと経費のための税が市民に課されているケースもあります。

私は関東の人間ですので、やはり関東大震災が一番心配です。国の有識者会議のレポートによると、火災による死者がもっとも多いと想定しています。しかも、東京都の場合、ハザードマップでは個人の木造住宅の密集する地域のリスクがもっと高いです。今の経済社会状況から考えて、耐火・耐震補強の促進には、行政の補助が不可欠です。

また、南海トラフ地震は、有識者会議によって、最悪220兆円の被害総額が想定されています。これは有史以来、最悪の被害です。ただし、一方で、今から防災対策に尽力すれば約100兆円分を減らして、多くの人命を救うことも可能であるとしています。

そこで、昨年の投稿ですが、一部再掲させていただきたいと思います。

2020年東京五輪からの戦略的撤退を(以下引用)

やはり、今は少しでも防災に力を入れ、できる限り想定される被害の最小化に努めるべき時期だと思う。そして、インフラ・人心ともに災害に備え、少しでも復興のための力を蓄えておく――これが戦略的に正しい道筋ではないだろうか。それにオリンピックは「今手放したら二度と開催のチャンスはない」というものでもない。仮に開催権をIOCに返上したとしても、この先、何度でも東京開催のチャンスはめぐってくる。あえて言えば、「開催を2030年代にズラすだけの話」ともいえる。むろん、返上することによって建設関係などで多くの契約解消と損失補償が生じるが、それでも震災勃発によって復興と五輪の二兎を追わされる事態に比べれば相対的に小さな問題にすぎない。

2020年五輪開催権の返上、今ならまだ間に合う(以下引用)

今なら、開催までまだ5年の猶予がある。よって、開催権をIOCに返上したとしても、仕切り直しが可能だ。イスタンブール(トルコ)とマドリード(スペイン)も立候補する気満々だろうし、決勝投票のやり直しが利く。ところが、開催の2~3年前になると、あまりに急なため他国も代替を引き受けることが困難となる。だから、今から数年後に関東大震災が発生した場合、事態は取り返しがつかなくなる。誰も代わりに開催してくれないから、復興と平行して開催するのか、それとも20年度の五輪自体を潰して世界中の選手とファンを失望させるのか――つまり開催するも地獄、しないも地獄という状況である。

このように、「今」が分岐点だと思われます。

今撤退を決断しないと、2020年には、日本は国内的にも国際的にも、非常にマズい状況へと追い込まれる可能性があるのではないでしょうか。

ただし、政権与党内では言い出し辛い「集団の空気」がある。土木をはじめとする様々な利権も絡んでいる。しかし、トップが「見直そう」といえば、みんな内心で薄々思っていることを言い出せると思います。総理個人が決断するならみんな従うでしょう。たしかに、始めたことを途中でやめるのは勇気がいりますし、しかもしばらくの間は損切りの「損」ばかりが目立って、個人的なメリットも少ない。しかし、そういう決断ができてこそ真の指導者でありステイツマンといえるでしょう。いや、むろん、野党の皆さんが声を上げてくれても構わないのですよ。どんどん国会等で取り上げ、話題にしてほしい。

日中戦争や太平洋戦争の直前また最中でも、もっと柔軟に路線変更していれば、あれほどまでに悲惨な結果にならなかったことはよく指摘されます。しかし、今度は、私たちが未来の世代から同じ批判を受けるかもしれない立場にたたされているのです。過去の世代がそうであったように「愚かな道」か「賢明な道」かの分岐点にいるわけです。

きっと2020年には、「あの時、撤退を決断しておいてよかった」と、誰もが胸を撫で下ろす状況になると思います。そして総理は「英断」を下したとして、国の内外から尊敬されることでしょう。逆だと、硬直した姿勢で国を誤導した凡庸な政の事例が歴史のページに新たに書き加えられるだけです。結局、ツケを被るのはわれわれ国民です。

安倍総理、今こそ撤退のご決断を!

2016年04月16日「アゴラ」掲載

(付記:今はリオ五輪の最中で、日本選手の活躍は本当に素晴らしいと思います。それだけに「次回」がどうなってしまうのかと想像すると、残念なものがあります)

2020年東京五輪からの戦略的撤退を

過去の地震の記録を調べてみると、慶長、延宝、明治、昭和などでは、三陸沖と関東の大地震は見事に連動している。どちらか片方が起きれば、しばらくしてもう片方も起きる、という関係にあり、そのズレの期間は、最短で約7か月、最長で約10年である。

 

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