史上初、習近平と金正恩が反米で結束する!【新中朝反米同盟・後半】

テロ・紛争・戦争・崩壊
中国人民解放軍建軍90周年記念軍事パレードにて




さて後半。(前半はこちら)

2018年3月の“電撃”中朝首脳会談は、やはり北朝鮮が望んだから実現したという単純な話ではない。それ以上に、習近平が彼を招待したということだろう。

しかも、3月20日に習政権二期目が発足したばかり。

金正恩の「電撃訪中」「中朝の180度関係改善」・・・これをどう読むか。

おそらく、習近平の「対米メッセージ」が多分に含まれている。

「これまでは唯々諾々と米国に要請されるがまま対北制裁にも協力してきたが、そっちがわが国に貿易制裁するならば、こちらとしても好きにやらせてもらうぞ」

つまり、「政権二期目からのオレは今までとは違うぞ」アピールである。

しかも、任期制を排したので、二期目からは事実上の終身独裁者である。

かくして中国は再び北朝鮮を厚遇し、逆に韓国には、文大統領に「独りメシ」を食わせるなどの格下げ待遇を実施。

対して、金正恩は常に歓待され、今現在まで4回も訪中するほどの忠臣ぶりだ。



第1回米朝首脳会談と米中貿易摩擦の激化

そして2018年6月、米朝首脳会談が行われた。

おそらく、金正恩にしてみれば、世界一の超大国の指導者と対等に渡り合った「世紀の晴れ舞台」だったに違いない。しかも、トランプは彼を持ち上げてみせた。

北朝鮮はミサイル実験を止めただけでなく、対米批判もピタリと止めた。米国は依然として北朝鮮の完全非核化に固執していたが、どうも金正恩は「これだけ首脳同士の仲が良いなら交渉次第でなんとかなりそうだし、経済支援も貰えそうだ」というふうに、「情」のレベルで錯覚したのではないか。朝鮮人の間ではそれが「友達」である。

いずれにせよ、2018年の後半、米朝関係はそれまでと打って変わって好転した。

他方、トランプ政権は中国に対して容赦ない姿勢をとり始める。史上最大規模の対中貿易制裁を実施し、ペンス副大統領などは「宣戦布告」ともいえる反中演説を行った

中国もすぐさま対米報復を実施。しかし、輸出依存度からして中国の分が悪い。

習近平は顔には出さないが、おそらく「これまでアメリカに協力してやったのに騙された」とか「まんまと利用された」などと考え、内心で非常に憤っているはずだ。

そして、12月、あの事件が起きた。ファーウェイ副会長の孟晩舟が、米司法省の要請を受けたカナダ政府によって逮捕拘束されたのだ。

米中関係はさらに悪化した。この事件により、中国は公式に「反米」へと舵を切ったと思う。これは国内の不満の矛先を外敵へと反らしたい“独裁者”習近平にとって、むしろ得点となったようだ。今後、中国は反米で一枚岩に近づくかもしれない。

対して、中国が突然、日本への擦り寄りを始めたのはご承知の通りである(笑)。

日本の経済協力にまで“感謝”し始めた。

「アベが近隣諸国との関係を悪化させたのダー」でお馴染みの反安倍界隈は、二階に上がって梯子を外された格好であり、少なくとも彼のいう“近隣諸国”から中国を外さざるをえなくなったわけで、その困惑ぶりを思うと、心中察するに余りある(笑)。

今の中国にとって、日米が対中制裁で一枚岩化することほど怖いものはない。

だから、日米の分断は、現・習近平政権の最優先課題である。

そして、第2回米朝首脳会談以後の世界

さて、かくのごとき流れで、2019年に入った。

そして、2月の終わり、第2回の米朝首脳会談が行われ、合意文書を残すことなく、両者は物別れに終わった。これに関しては以下に、記事にした。

日米が1年半前に作った「必勝の構造」の中でもがく北朝鮮
ベトナムの首都ハノイで行われた第2回米朝首脳会談は物別れに終わりました。 まず事実関係だけ整理したいと思います。 2月28日、昼食会と合意文書署名の予定が突然、キャンセルされました。 トランプ大統領は記者会見において、「北朝鮮が制裁の完全な...
北の非核化リミットと南の米軍駐留期限がなぜ近似しているのか?
さて、2度目の米朝首脳会談からやや日が経ち、後日談的エピソードが漏れてきています。また、北朝鮮の反動的動きなども始まっています。 韓国政府筋によると、「(朝鮮戦争の)終戦宣言は事実上合意に達していた」そうな。 つまり、韓国が仲介して米朝間で...

アメリカ側は「すべての核兵器・核物質・核施設の廃棄」を要求したという。そうでない限り制裁解除はしないと。つまり、完全非核化を求める点では譲歩しない。

かくして米朝は決裂。言ったように、金正恩は「情」のレベルで米国が軟化してくれるのではないかと期待していたと思う。だから決裂後、恨み言をクドクド言っている。

「唯一、日本の反動層だけはまるで待ち焦がれていた朗報に接したかのように拍手をしながら小憎らしく振る舞っている」と、労働新聞は書いている。

この労働新聞の論調・語調は、最高指導者の意志が反映されたものだ。

これが一国家の公式声明だそうだ。これに共感できるのは同じ下品な人間だけだろうが、例によって自称リベラル派からは賛同の声が相次いでいる(笑)。

北朝鮮は「日本のせいダー、日本は蚊帳の外ダー」と年中吼えているが、これと同じ思考・同じ言葉遣いをするのが日本の自称リベラル派である。

まあ、こんな連中は狭いサークルで固まっているだけで、いずれ真実の前に淘汰されていくだろうが、それはともかく、9日の労働新聞は「北朝鮮国民はもはやアメリカを信用できない。アメリカに希望を持てない」などと主張したそうな。これは看過できない。

やはり、米中の間には原則的な隔たりがあり、北朝鮮が“ハルノート”を飲まない限り、それは埋めようがない。そして、私はずっと言っているが、金正恩は国内的にも核の放棄はできない。独裁者といえども、できることとできないことがあるのだ。

だから、遅かれ早かれ、北朝鮮は再び反米へと舵を切るほかない。

しかも「今度」は同じ「反米仲間」がアジアにいる。いや、「心強い先輩」というべきか。北朝鮮にとって、それほどまでに「反米中国」の存在は頼もしい。

中国人は上から下まで「敵の敵は友」という単純な原則で動く。

金正恩が反米に傾けば向くほど、習近平政権は北朝鮮を厚遇するだろう。

反米で中朝が蜜月・・・1950年の朝鮮戦争前に酷似

つまり、2019年2月末の米朝決裂以降、状況はまた根底から変化したのである。

以後、中朝はアメリカという「共通の敵」で結びつきを強めていくだろう。

これは「金正恩・習近平体制」の発足以来、初めての事態である。これで、南シナ海問題、台湾問題、北朝鮮問題の三つが繋がった、とも考えられる。

しかも、中朝にとって、今や韓国は「決して逆らって来ない下僕」のような存在だ。つまり、かつての「日米韓同盟」を事実上、切り崩すことに成功している。

極東における戦略的状況は、以前よりも中朝サイドが巻き返した格好なのである。

今後、この地域における「米軍出て行け運動」がさらに活発化するだろう。

というか、中朝両国は全力を挙げて工作を活発化させるだろう。

ふと気づいた。1950年の朝鮮戦争前に似ている、と。

しかも、気になるのは、事実上の終身主席となった習近平が、個人に権力を集中させるだけでなく、妙に将軍の真似事みたいなパフォーマンスをすることだ。

彼が本当に欲しているのは毛沢東のような「軍事的業績」なのかもしれない。

狡猾な習近平は今後、イラン問題、中東情勢、米国内の情勢、中国内の情勢などを同時に見据えつつ、何らかの軍事的なゲームを仕掛けてくるかもしれない。

あるいは、南シナ海・台湾問題が抜き差しならない状況になれば、米軍を朝鮮半島に引きずり込もうとするだろう。金正恩をゲームの駒や鉄砲玉として使うだろう。

つまり、中国が再び北朝鮮の指導者をけしかけ、朝鮮戦争を使嗾する日が来るということだ。米軍といえども、中東と北朝鮮に釘付けにされれば、台湾問題で兵力を割くことは難しくなる。同時多発的に紛争が起きれば起きるほど、中国有利になる。

上で見てきたように、極東情勢は極めて流動的で、数年でくるくると変わる

まことに「生きもの」のよう。従来の常識の枠にとらわれず、「何が起きても不思議ではない」という柔軟な姿勢と戦略をもって臨むことが求められている。

当然、再び朝鮮半島を舞台とする中朝同盟と米軍との戦争の可能性も視野に入れておかねばならないと思う。

スポンサーリンク




タイトルとURLをコピーしました