さて、前回、来る「第五次中東戦争」では、これまでとは異なり、
サウジとイランが互いの石油施設とタンカーを攻撃しあう展開
になるだろうと、私は記しました。
私からするとこれは自明のことですが、識者とメディアの誰も、この種の警告を発しないことが不思議でなりません。
最終的に、日本はアラビア半島の石油施設を守るために自衛隊(もはやそう呼んでいいのか分からないが)を派遣することになり、本格的に戦争をすることになる。
現在、日本は中東地域から石油の87%を仕入れています。
ホルムズ海峡を通る分は、約8割とのことです。
日本はスーパータンカーで3週間かけて運んできた石油を、国内の運輸部門と産業部門に投入することで、国の経済を回しています。
見てのとおり、日本の最終エネルギー消費の半分弱が今なお石油です。石油消費は、熱量換算で電力消費のほぼ倍近くあります。
日本経済および国民生活は石油で成り立っていると評しても過言ではありません。
仮に戦争で中東からの原油の輸入が途絶えれば、日本の企業活動、運輸、国民生活などはどうなるのでしょうか。
脱石油の方法と、日本より先に動き始めた中国の戦略
日本は今現在、年間1億8千万klの原油を輸入し、それを精製して、うち4割をガソリン・軽油などの運輸燃料に加工して、国内の乗用車・トラックなどを動かしています。
石油はあらゆる精製品へと生まれ変わる連産品ですが、輸入量の基準になっているのは主力の自動車燃料です。端的にいえば、国内の自動車燃料需要のために、日本は原油を輸入しているようなものです。内燃自動車があるから輸入が不可欠なわけです。
したがって、脱石油をするには、自動車をEVへと転換する方法が、必ず筆頭に来ます。経済産業省が水素推しなのは、OBが化石燃料業界を支配しているからでしょう。
こんなふうに日本はずるずると「石油と内燃自動車」のシステムを続けていますが、中国のほうは「原子力・自然エネルギーと電気自動車」への転換を国策として進めています。深センあたりは電気自動車とプラグだらけになっている。
中国政府はとりあえず急速充電器の480万台設置にかかり始め、すべて電子決済でやって、ネットワークにするつもりです。で、電源は原子力や風力にしていく。
マイゴッド! これは私が7年ほど前に「アゴラ」で「日本はこうせよ」と訴えたことそのまんまです。中国はいち早く「EVへの転換」を国家として決めました。
中国は原子炉もオーダーメイドではなくモジュール量産型で建設しています。
電気自動車の部品点数は内燃車の3、4分の一。歯車屋さんなどの部品・機械屋さんなどは死滅です。しかし、風車はトランスミッションがあるので、太平洋沿岸及び近海洋上に風車を立てまくれば、国の自動車動脈に電気エネルギーを供給でき、かつ歯車屋さんも死滅を免れます。私は一石二鳥のアイデアまで考えて提案してきたわけです。
「現金のままの日本と、いち早く電子決済に移行した中国」の対比はよく語られますが、運輸部門の構造転換でも、両国の差が開き始めている気がします。
中国のエリートは人権意識は低くとも、昔から世界的視野と戦略眼があるんですね。
ま、これは余談。
石油は運輸用・産業用・発電用・化学原料用として使用されている
ちょっと古い資料ですが、運輸部門はもちろん自動車だけではない。
表のように、鉄道以外の運輸部門はすべて石油に頼っていることが分かります。LPGというのは液化石油ガスのことで、タクシーなんかがよく使っていますね。
下は2016年のもので、10年の間に、軽油消費は変わらないものの、ガソリン消費が約800万kl弱も減っていることに気づかされます。
これは軽自動車とハイブリッド車の普及による節約効果が大きい。
上の表は石油製品のあらゆる用途とその需要量が記されていて、大変参考になります。
船舶のほう重油でも動かせますので、大型のものは安い重油を使っています。
重油はまた、製造業における燃料・熱源としてもよく使われます。
見ての通り、日本の多くの産業が重油を生産活動に使用しています。
また、石油は70年代まで火力発電の主力燃料でもありました。そのため今でも「電気は石油を燃やして作っている」と信じて疑わない者が、とくに高齢者に多い。
で、その思い込みから、「電気自動車の電気も、元は石油を燃やして作られているから、EVの普及は脱石油に繋がらないし、従来どおり内燃車を走らせているのと変わりない」などと得意顔で主張する者を、私はうんざりするほど見てきました(笑)。
ま、私はいずれ中東で大戦争が起きて石油供給がショートする事態を「知っていた」から、なんとかしたかったわけですが、もう間に合わないですね・・・。
ところで、石油火力の廃止プロセス中に「3・11」災害が起きたため、廃炉予定の石油火力発電所を臨時で復活させ、今でもずるずるやってます。基本的に廃止は国際合意であり、OECD諸国の中で未だに石油火力を使っているのは日本くらいです。
現在、石油燃料は日本の電力の6%を担っているにすぎません。
また、自動車用燃料の次に、石油の需要が多いのが化学原料としてです。石油の精製品の一つであるナフサは、プラスチックやゴムの原料になります。
上の図が示すように、ナフサ単体で別途輸入しています。そこからありとあらゆる石油化学製品が生まれているんですね。発明した欧米の石油屋はやはり凄い。
このように、石油は依然として現代文明の基幹資源です。
そして、見てきたように、日本経済は、輸入した石油を、運輸や産業部門に投入することによって、巨大な生産を成し遂げているわけです。
次回は備蓄と本格的な供給遮断後を見てみます。
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