iPhoneが登場してから6年が過ぎた。最近では売上も伸び悩み、かつての熱狂の度合いも冷めつつある。時代はそろそろ次へと行きたがっているようだ。
2010年05月、ソニーは「ペンほどの太さに巻き取れる有機ELディスプレイを開発した」と発表した。以来、スマホやケータイの画面を超えるサイズで、フィルム状のディスプレイを収納したモバイル機器の登場が待たれているが、未だ日の目を見ない。
仮にスクロールホン(Scroll Phone)と呼ぶとしよう。もしiPhone以来のブームを巻き起こす革新的な製品があるとすれば、この“スクホ”以外にないように思われる。
私もそうだが、iPhoneと違って、ポケットに入れて持ち歩けないという理由からiPadや電子ブック機器を敬遠する人も多い(やろうと思えば可能だろうが、あくまで一般的な意味において)。そもそも、自宅(自室)と職場にはパソコンがあるので、これらの機器が主に真価を発揮するのはそれ以外の場所、とりわけ室外になる。だが、仕事であれば、鞄に入れて持ち運んだり、片手で抱えたりも躊躇しないが、プライベートではそれが結構な負担になる。
だから、私は個人的にも、比較的大きな画面を収納可能なポケットサイズの機器の登場を待ち望んでいる。というわけで、前掲が“スクホ”のイメージ図だ。
ついでに、わがままも言わせていただきたい。できれば画面として縦15・横20センチは欲しい(*ほぼ10インチサイズに相当)。この寸法にこだわる理由は、ちょうど文庫本を開いたサイズだからだ。しかも、北米のペーパーバックを開いた際の印字面(余白を除いた分)にもほぼ等しい(ただ上下の詰まり感があるので、縦16センチが望ましいが)。
また、画面がペラペラだと扱いに困るので、たとえば伸縮式のX字の固定具で背面を支持できるようにする。
文庫本といえば、手軽に持ち歩けるのが強みだ。何よりもコンテンツが無尽蔵だ。それをそのまま再現できるとなれば、スクホは日本において一挙に電子ブックのディファクト・スタンダードになれる可能性があるのではないだろうか。しかも、海外のペーパーバックにも対応することで国際標準への道も開けてくる。モバイル機器で“コマサイズ”ならぬ“発刊サイズ”のマンガを楽しめることも画期的だ(私の目的の一つだ)。それに単純に画面が大きいほうが、ゲームやインターネットをする上で便利だし、テレビや映画もより楽しめる。モバゲーなどは質量ともに一段と躍進するかもしれない。
(*画=山田高明)
また、変形の工夫や追加オプション次第では“ノートパソコン”として使うことも夢ではない。個人的にはこれもありがたい。そうすると、このスクロールホンは、スマホ・電子ブック・ノートパソコン(場合によってはタブレット)を兼ね備えたトリプルデバイスということになる。これほどの万能性を持つ電子情報端末がかつて存在しただろうか。
iPhoneの登場以来、日本メーカーは押され気味だ。だが、この“スクホ”を生み出すことさえできれば、勝利の女神は再び日本の家電業界に微笑むのではないだろうか。
2013年03月12日「アゴラ」掲載
(再掲時付記:ソニーでもサムソンでもいいから、早く製品化してくれないですかねえ・笑。あと、このスクホの絵ですが、勝手に使ってもらって結構ですので。許可不要です)
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