なぜ南シナ海は「世界大戦の発火点」になってしまったのか?

テロ・紛争・戦争・崩壊
(出典:産経新聞)




みなさん、こんにちわ。

つい先日、南シナ海で、米海軍のミサイル駆逐艦「ディケーター」と、中国海軍の「蘭州170号」が40メートルまで接近する出来事がありました。

中国艦艇が進路妨害したので「ニアミス」と呼ぶのは妥当ではない。

米海軍の艦艇は、「航行の自由作戦」において、中国側が領海と主張する12海里(約22.2km)以内にまで堂々と入り込んでいます。

今のところ、中国側は外国船に領海を侵犯(あくまで中国の視点だが・・)されても、指をくわえて眺めることを余儀なくされている。

おそらく、北京の中央軍事委員会は現場に対して「絶対に手を出すな」と厳命している。それで怒れる現場の中国軍人たちはなんとか自制している。

今回の接近事件は、どのレベルの判断なのか、まだ情報がない。しかし、米中の彼我の実力差を知るトップが、こんなハイリスクな真似を命じるとは思えない。

というのも、イージス艦は装甲がショボい。2017年6月に、米駆逐艦「フィッツジェラルド」とフィリピン船籍のコンテナ船が伊豆半島沖で衝突する事故がありましたが、ご覧のように右舷が破壊され、数メートル四方の穴が開いて浸水しました。

出典:読売新聞

砲撃戦をやる昔の軍艦とは戦い方がまるで違うんですね。イージス艦の性質上、装甲よりも機動性のほうが重要なわけです。迎撃対象もだいたいミサイルや魚雷。

だから、衝突したら大事故になりかねない。アメリカ側は「公海上で攻撃を受けた」というふうに主張する可能性もある。そうなれば中国の終わりだ。

だから、私は今回のケースは現場の勇み足ではないかと思っている。

歴史的に見て、満州にいた関東軍やアルジェリアにいた仏軍のように、中央からもっとも離れた場所にいる軍隊は、とかく勝手な行動を取りやすい。



米中は「空」での衝突もありえる

米軍はグアム基地のB52爆撃機もこの海域にバンバン飛ばしています。

8月ですが、民間のCNNが現場の緊迫した様子をレポートしていました。

米軍機に中国「直ちに退去を」 南シナ海で“緊迫”8/11()

アメリカのCNNの記者も乗っていたアメリカ軍の偵察機が、中国が領有権を主張する南シナ海の上空で速やかに撤退するよう何度も警告を受けました。

中国側「米軍機に告ぐ。こちらは中国軍である。中国は南沙諸島に主権を持っている。不測の事態を避けるため、直ちに退去しなさい」

米軍機側「この米海軍機は沿岸国の領空から国際法の下、合法的に軍事活動を行っている」

 アメリカ海軍の偵察機は10日、南シナ海上空で中国側から少なくとも6回、退去するよう警告を受けました。映像には、滑走路やレーダーを設置したタワーなどが映っています。中国は実効支配を強めるため、造成した人工島の軍事化を進めています。

(出典:All Nippon NewsNetwork(ANN))

以上を見ても分かるように、中国側とアメリカ側の主張は、永遠に平行線を辿ったままです。むろん、アメリカ側に国際法という「分」があります。

だから、国際法を侵した上、相手の艦艇にぶつけたとなると、中国は国際社会において二重に不利な立場へと追いやられるわけです。逆にアメリカは開戦の正当性を得る。たぶん、アメリカの狙いは、そうやって先に中国に手を出させることでしょう。

今では、海上だけでなく、空中での衝突の危険性も高まっています。

中国は人工島の基地に多数の戦闘機や地対空ミサイルを配備しました。

「ランチャー」がずらりと海岸に並んでいる。

どうもこれはロシアのSシリーズの模倣のようです。

現地の中国軍の視点で考えてください。ある日、突如、レーダーに米軍の爆撃機の機影が映り、それがぐんぐんと自分のほうへ迫ってくる。

領海の約22キロ程度の距離なら、亜音速の機体ならあっという間です。

現場の司令官が恐怖に駆られて、迎撃ミサイルの発射を命じるかもしれません。

あと、中国軍の戦闘機のスクランブル。

これが米軍機との空中衝突をやらかしかねない。

このように、南シナ海は、今や米中という世界の二大大国が直接、軍事衝突しかねない稀有なポイントと化しています。

なぜ南シナ海は「世界大戦の発火点」になってしまったのか?

ただ、「なぜこんなことになってしまったのか?」という本質は、報道からだけではなかなか分かりません。自分で言うのも何ですが、その本質に迫っているという意味で、私が数年前に書いた以下の二つの記事は、必読文献だと思っています。

まず一つ目。

チェンバレン外交の轍を踏んだ民主党政権と野中広務氏ら
今、南シナ海で米中が一触即発の状態にある。 7月12日、国連海洋法条約に基づくオランダ・ハーグの仲裁裁判所は、南シナ海に関する中国の領有権主張を退ける判決を下した。 アメリカは昨年10月、原子力空母ロナルド・レーガンを横須賀基地に派遣し、南...

少し説明すると、2012年9月に中国人活動家による尖閣諸島上陸事件があり、その後に中国政府によって「官製反日暴動事件」が扇動されました。

あの、中国在中の日本企業や商店が「市民デモ」によって焼き討ちされた事件です。

これこそ「ヘイトクライム」や「ヘイトデモ」の見本ですが、日本の“リベラル派”特有の色眼鏡をかけると、なぜかそうは見えないらしい。

実は、当時の民主党政権の外交のまずさが、南シナ海に連鎖したんですね。

私はこの時点で、おそらく日本で唯一だと思いますが、中国が南沙諸島において積極攻勢に転じると予言しました。同じ頃にメガソーラーの件でも将来大損害を出すとはっきり予測していたので、当時は冴えていました。今にして思えば、もっとはっきり書けばよかったのですが、中国軍が何らかの軍事拠点を作ると直感したんですね。

ただ、あんな巨大基地を南沙諸島に七つも作るとは、さすがに意外だった。

一方、その人工島の造成がほとんど終わって中国軍が軍事基地化に着手してから、米政府は大々的にペンタゴンでプレスリリースして国際問題化しました。

中国が埋め立てを始めた頃に抗議するのではなくて。

それで私はまた「おかしい」と直感した。それで書いたのが、下の記事です。

アメリカの狙いは「リメンバー・ロナルド・レーガン」か
わずかここ2年の間に第三次世界大戦の火種が出揃った現実は「今度の戦争はヒロシマ・ナガサキから始まる」紹介したが、果たしてそれらはすべて偶然だろうか。その中の多くは、実は大戦の勃発を意図して計画的に作られたものと推測することはできないだろうか...

中国軍が南沙諸島の浅瀬を埋め立て始めると、すぐにフィリピンあたりの国際ニュースになったので、これは本格的に軍事基地を作り始めたと、私でも知っていた。

アメリカはわざわざ中国が人工島を作り終えるのを「待っていた」わけです。

中国がワルなら、アメリカもまたワル。

これはオバマ政権時代であることに注意する必要があります。

すでにオバマ時代に、今日の米中対立の火種が仕込まれていたんですね。だから、オバマの次に大統領になると、中国と本格的に対立するだろうことは想像できました。

記事ではっきり書いていますが、アメリカの狙いは「先に中国軍に手を出させること」です。「航行の自由作戦」の真の目的はそれです。

しかも、中国の主張が非合法であるとの国際司法の判決も出た。

そうやって大義名分を得てから、トランプ政権はどんどん作戦を加速している。

非常にうまいやり方です。まったく、狡猾な手口に舌をまく。

しかも、イギリス海軍が南シナ海に介入してきたことが大きな「サイン」になっている。英海軍の上層部の多くは世界支配層に関係する貴族のポストなんですね。

また、前述しましたが、今や北朝鮮問題は対中国戦略における従属変数になった。

つい先日、中国は「もう北朝鮮問題でアメリカに協力しない」とサジを投げた。

どうやら朝鮮有事は南シナ海問題や台湾問題と連動して動きそうだ、それがアメリカの狙いであり、金正恩を甘やかしている理由だという予感が、薄々しています。

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