2017年7月10日、渦中の前川元事務次官が国会での証言に及んだ。
告発内容に関しては従来の主張の繰り返しであり、とくに目新しい点はないようだ。
ただし、いわゆる「貧困調査」に関しては「新事実」――内心分かっていたことなので、そう評するほどのものではないが――が出てきたようだ。
元経産官僚で「日本維新の会」の丸山穂高衆議院議員の質問(上記アイキャッチ画像)に対して、前川氏は次のように答えた。
「えまあ、調査という言葉遣いは、たしかに、あまり適切ではなかったかもしれません。まあ、わたくしとしては、個人的な行動はですね、えー、どうしてこの全国紙で報道されるのか、この件につきましては、わたくしも記者会見などで明らかにしていますけども、昨年の秋に、すでに、杉田官房副長官からは、あーその、事実関係について聞かれ、またご注意も受けたという経緯がございます。そのことがなぜ5月22日の読売新聞に出たのかと、このことを、わたくしは問題にすべきだというふうに思っています」
このあと、前川氏は、官邸が読売新聞に情報を流したのではないかと、自分の主観的にはそう思っている、ということなどを述べた。
はっきり言って、私は、前川さんが、次のように断固として言い張っていたら、この件に対する見方を改めていたかもしれない。
「これは誰がなんと言おうが貧困調査でした! 私は教育行政の責任者として、自ら現場に赴いて、実態を調べていたんです! 買春行為であるかのように言われるのは、まったく心外だ! その証拠に、調査のレポートも近々出します!」
そう自信をもって怒りをあらわにしたら、私は自分の書いた文章に責任を感じただろう。
ところが、前川氏は、正々堂々と主張するどころか、「貧困調査ではなかった」というダイレクトな表現を避け、「調査という言葉遣いはあまり適切ではなかったかもしれない」などと、いかにも元官僚らしい、もってまわった答弁で逃れた。
だが、誰が聞いても、少なくとも貧困調査が主目的ではなかったことを事実上、認めた格好だ。あくまで、そういう側面も皆無ではなかった、というに過ぎない。
しかも、自分で「個人的な行動」と言いきったので、その調査――??? もはや何と呼んでいいのか分からない――は文科省高官としての職務ですらなかったということ。つまり、「自由研究」の類いだろう。何を研究していたのかはともかく。
前川元事務次官の「出会い系バー」通いは政権告発と切り離して批判すべき対象
さて、今まで「前川さんが歌舞伎町でやっていたのは貧困調査だ、立派な人だ」と言い張っていた人たちは、どうするのだろうか。
少なくとも、自分のこれまでの主張を訂正しなければならないのではないか。
この話が暴露された経緯に関しては、私も官邸による謀略面が強いと思う。擁護側はある意味、官邸側の意図した議論の土俵に乗っかってしまった。個人の自由だ何だと擁護してしまったことで、自分たちの価値観すら捨ててしまった格好になった。
こういう「出会い系バー」なるものは、それまで警察に散々、売春の摘発を受けてきた暴力団側が、それを逃れるために巧妙に考え出した形態といっていい。
だから、本来、彼の不祥事を政府が揉み消していたことが問題なのだ。暴露自体は無問題どころか、正しくすらある。なぜなら、管理売春が疑われる風俗店に出入りする人物が日本の教育システムの総責任者だったこと、またそれを許す文科省の組織性は、私たちの社会にとって著しく有害だからである。
常識で考えても狂っている。繰り返しで恐縮だが、私は本来なら大きなスキャンダルであり、諸外国ならきっと大問題に発展していたはずだと、訝っている。
むろん、政府高官時代の出会い系バー通い(とそこから提起されるモラルや職責上の問題)と、前川氏が現在告発している内容の事実性とは、切り離すべきだ。
つまり、「官邸ははじめに加計学園ありきだったのではないか」という告発、及びそれによる公益の毀損度合いのほうは、別個に論じる必要がある。
たしかに、彼が人格的に高潔か下劣かという判断は、告発内容の信憑性を左右する。しかし、それはどこまでいっても信憑性であって、事実性ではない。
どうも、政権擁護側と倒閣側の双方とも、この二つを混同していないか。
だから、倒閣派だろうが、安倍シネだろうが、コレはこれで批判しなければならないのである。だいたい、この件で前川氏を異様にかばっている人たちは、逆に彼が安倍政権側の人間だったら、人権を旗印に狂ったように叩いていたのではないか。
だとしたら、もはやフェイク左派やフェイク・リベラル派でしかない。
(付記)
というわけで、貧困調査なら探偵の出番だ! 前川さんも女探偵・小笠原裕美に頼め!!
(追記)
この記事を書いたあとで、↓これを見ました。たいへん参考になります。
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