『復活の日』と角川映画

アニメ・マンガ・映画他
映画「復活の日」の、あの名場面




先日は『渚にて』という異色のカタストロフィ映画を紹介しましたが、日本にも同じくらい素晴らしい映画があります。

それが1980年公開の『復活の日』です。まず制作陣からして錚々たる顔ぶれ。

  • 制作:角川春樹
  • 監督:深作欣二
  • 原作:小松左京

と、それぞれの分野の当代ビックスリーが顔を揃えている。

そして、主演は草刈正雄さん。草刈さんといえば、2016年度のNHK大河ドラマ『真田丸』でユニークな真田昌幸を演じ、話題になりましたね。

でもこの時の草刈さんはまだ28歳。日本の南極チームの科学者という役柄でした。

私的には、娯楽性や刺激性では『渚にて』よりも『復活の日』のほうがはるかに上だと思います。もしかするとストーリーや内容の濃さでも優っているかもしれない。

ウィキペディアによると、制作に関してこんな秘話もある。

アメリカ大陸縦断ロケや南極ロケを敢行し、総製作費は25億円とも32億円ともいわれたSF大作映画である。(略)

角川春樹は社長に就任するとすぐ小松に文庫化を依頼し、映画化の際には小松に「これを映画化するために会社を継いだ」と語ったという。角川春樹は自著でも「映画製作を行うようになったのは『復活の日』がきっかけ」[15][16][17]、「この作品を作ることができれば、映画作りを辞めてもいいと。それくらいの想いがありました」[18]と述べている。

まだ角川春樹氏に毘沙門天が降りてくる前の話ですね。いや、もしかすると、コカインなんかやらなくとも、最初から神が降りていたのかもしれない。

英題は“Virus”。残念ながら海外セールスは不調だったようです。現在、なぜかユーチューブで全尺公開中。ただ英語のセリフは字幕なしであり、逆に日本語のセリフは英語の字幕なしですから、海外の視聴者には困っている人も多い。

コメント欄を見ると、外国人たちからものすごく評価が高いです。

当然でしょう。なにしろ、大作で、時代を先取りしている。



日本映画史上、屈指のスケール、そして角川映画伝説の始まり

物語では、「MM-88」という新型ウイルス兵器が盗み出され、あっという間に人類社会に拡散していく地獄絵図が描かれています。だから英題も「Virus」なんですね。これは世界的に見ても「パンデミックもの」の先駆けではないかと想像します。

スクリーンでは、その世界的なパニックの中で社会が内部崩壊していく様や、ホワイトハウスを中心とした国際政治、生き残った南極隊の葛藤と人類再建の試行錯誤などが描かれています。潜水艦同士の戦闘などのアクション場面もある。

日本映画としては珍しく、非常にスケールが大きい。その上、ストーリー性やドラマ性の高さは、ハリウッドの一流映画と比較しても遜色がありません。

もともとSF作家の小松左京氏が1964年に書き下ろした作品ですが、やはり原作自体が傑作なのだと思います。ベースがしっかりしたところに、制作費に糸目をつけない角川春樹氏の事業家としての賭けと、深作欣二監督の異分野へのチャレンジがコラボし、冒険・パニックもの・国際ドラマを兼ね備えた一級の娯楽作品へと仕上がっている。

あえて難を言えば、BGMや効果音の安っぽさでしょうか(*この部分だけスカイウォーカー・サウンドにやり直してもらうだけでも、ガラッと作品が良くなりますが)。

70年代の後半という時代にあって、国際俳優陣によるドラマ撮影や南米・南極ロケは悪戦苦闘の連続だったようですが、今の日本の映画会社でそこまでのリスクを背負って一本の映画を撮ろうという情熱やチャレンジ精神を持つ所があるでしょうか。

たしかに興行的には失敗でしたが、このような大作にチャレンジしたからこそ、映画人・角川春樹氏と「角川映画」ブランドの定着へと繋がったのでしょう。

角川映画というカリスマブランドとドラマチックな宣伝

さて、80年代を生きた日本人にとって、独特のカリスマティックな魅力に溢れた角川映画のCM群は、今もノスタルジーと共に脳裏に焼き付いていると思います。

まあ、あまりに宣伝の出来が良すぎて、「騙された」ということが何度かありました。とくにアイドル系で、最低の映画としか言いようのないものもある(アニメ映画では「少年ケニア」以外は良作)。だが、それでも昭和から平成にかけての日本の文化シーンを語る上で、角川映画はなくてはならない重要な要素であるといえるでしょう。

最後に蛇足です(と言っても、私的にはこっちがいつものテーマですが)。

近未来におけるサバイバルということを考えると、核戦争よりも、むしろ空気感染する致死性のウイルスのほうが怖い。「影の政府」はこういう生物兵器をとっくに所持していて、場合によっては容赦なく使うつもりだと疑っておくべきでしょう。

「人里離れた地域にある地下のシェルター」は、この種の危機にも対処できます。やはり、核戦争、ウイルス爆発、太陽フレア、その他諸々の危機が襲来しても生存していけるだけの大規模シェルターを作りたい。賛同者がいてくれとありがたいですね。

スポンサーリンク




タイトルとURLをコピーしました