2018年3月に第90回の米アカデミー受賞式が行われ、
ゲイリー・オールドマン主演の『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』(原題「DARKEST HOUR」)が2部門を受賞した。
この作品は、主演の役作りに一役買った特殊メイク担当の辻一弘氏が「メイクアップ&ヘアスタイリング賞」を受賞したことで、日本でも一躍知名度が高まった。
日本では、つい先日の3月30日、全国公開された。
以来、日本のメディアと無自覚的な手先(タレントや著名人、評論家など)が異常にこの映画を持ち上げつつあるが、その前に釘を刺しておかねばならない。
こういう洗脳に易々と引っ掛かるのは情けない限りだと。後出しジャンケンで言っているのではない。私は1月の終わりにこんな予告をしておいた。
そういえば近年、イギリス絡みで非常に興味深い映画が公開されました。
映画『ダンケルク』と『ウィンストン・チャーチル』です。
前者の監督は巨匠クリストファー・ノーラン。ナチスドイツに追い詰められた英仏軍がダンケルクで奇跡の脱出を遂げた史実を題材にしています。その際、大きな役割を果たしたのが英の民間船とそれを操舵する民間人だったんですね。映画は、その時の市民と、ナチスドイツと戦う将校や兵士を描いています。
Dunkirk – Trailer 1 [HD]
要は、当時の人々がいかに勇敢で、英雄的であったかを印象付ける内容です。(略)
『ウィンストン・チャーチル』については説明するまでもないでしょう。要はいかに彼が偉大な政治家だったか、ということを印象付けたいだけです。
この二つは2017年に公開されました。
アカデミー賞授賞式という茶番によって、この二つの映画は改めて持ち上げられ、宣伝されることでしょう。
私の予告した通りになった。
案の定、『ウィンストン・チャーチル』は2部門を受賞。
一方の、『ダンケルク』も録音賞・音響編集賞・編集賞の3部門を受賞した。
どちらの映画も“権威筋”から「本年度ナンバー1」との絶賛を貰っている。
上が『ウィンストン・チャーチル』に対する「ローリング・ストーン」誌などの評価。
下が『ダンケルク』に対するNYTなどの評価だ。
この二つの作品は、タダで凄まじい宣伝してもらい、興行的にも大成功である。
ところで、受賞内容は、二年前のあの作品と奇妙なほどダブっている。
私は以前、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』は、大衆に革命をけしかける映画だろうと喝破する記事を書いたことがある。
第88回アカデミー賞授賞式において、衣装デザイン賞、美術賞、メイク・ヘアスタイリング賞、編集賞、音響編集賞、録音賞の最多6部門を受賞しました。つまり、「デス・ロード」は事実上、2015年度において、世界一(評価の高かった)の映画作品だったわけです。
どうだろう、『ウィンストン・チャーチル』『ダンケルク』と妙に似ていないか?
断っておくが、私は、辻一弘氏が受賞したのは、彼の職人芸に対する評価だと思うし、そのこと自体は賞賛されて然るべきだと思う。しかし、一方で、日本市場に向けた宣伝の意図が込められていなかったと言えるだろうか。同じように、ゲイリー・オールドマンの演技は素晴らしいが、彼の主演男優賞受賞により、ウィンストン・チャーチルという歴史上の人物それ自体に、より注目が集まったと考えられないだろうか。
「ネバー・スレンダー!」という大衆へのメッセージ
この映画について、もう少し突っ込んだ分析をしよう。私は「ハリウッド映画に見る“世界大戦が近づいているサイン”」で次のように述べた。
問題は、上に列挙した映画が、どうしてこの時期に制作され、公開されるのか、ということです。果たして偶然でしょうか。それとも何らかの政治的意図があるのでしょうか。そのような考えは、陰謀論者の妄想でしょうか。たしかに、陰謀論者を装った者、又は本物の馬鹿によるディスクレジットには、私も頭を痛めている。
結局のところ推測でしかありませんが、これらは世界大戦に向けた心理操作の一環でしょう。(略)そう遠くない将来に大きな戦争が事前に想定されているということです。
おそらく、「ヒトラーから世界を救った男」というキャッチは、日本の配給会社が付けたものだろうが、それを言うなら、より大きな役割を果たしたのは、スターリンやFDRのほうである。むしろ、チャーチルは、ヒトラーに宣戦布告しておいて、結局は米ソ頼みなのだから、「最後まで自力でヒトラーに勝てなかった男」という評がふさわしい。
それはともかく、この『ウィンストン・チャーチル』と『ダンケルク』は、戦時中を描いたにしては奇妙な映画だ。なぜなら、通常、このような映画の場合、「敵」の姿を徹底的に描くはずだ。ところが、敵のドイツ人をほとんど登場させないのだ。
なぜか。世界大戦に向けた大衆心理の操作という観点から見れば、その理由が容易に分かる。なぜなら、次の戦争では、ドイツは味方の予定になっているからだ。
だから、英米の市民に対しては、ドイツ人そのものを悪者と見なさないよう、また、ドイツの市民に対しては、西側からの疎外を感じさせないよう、配慮してあるのだ。
だから「憎いドイツ兵」が極力、画面に出てこない奇妙な映画になっているのである。第二次大戦中を描きながらも、ドイツを敵視しないよう、意図が込められている。「彼ら」はそこまでやるのだ。それゆえ、これは戦争映画というより洗脳映画だ。
では、次の戦争における「敵」とは誰なのだろうか?
むろん、ロシアである。そして“新たなヒトラー”がプーチン。
英米と日独などが、ロシアを相手に戦う、というスケジュールになっている。
この映画が西側の観客に込めたメッセージは単純明快だ。
それが「ネバー・スレンダー!」(絶対に降伏しない)である。
『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』30秒予告編
チャーチルが地下鉄の中で市民に問いかけるシーンがある。
この“勇敢な人々の声”を受けて、チャーチルも立ち上がる。
彼は大英帝国議会で大演説をぶつ。
“We shall never surrender!!!”と。
ま、こんな男を偉人だと信じているとしたら、洗脳されている証拠である。
翻訳すれば、「おまえら奴隷は死を恐れずに最後までロシアと戦え!」だ。
世界大戦が近い! アメリカの属国でいる限り日本も破滅する!
さて、まことに不思議なことに、このタイミングで、欧米とロシアとの関係が最悪と言われるレベルにまで悪化している。
2018年の3月といえば、ロシア大統領選挙が行われ、プーチンが再選したわけだが、まさにこの時期に、イギリスに亡命中のロシア情報機関の元大佐とその娘が神経毒物で暗殺されかかるという事件が起こった。英ロは互いに相手の謀略と言い、私にもどちらが真実か分からない。個人的には、プーチンが大統領選挙を戦っている最中に、わざわざこのような政治的リスクを犯す理由が見当たらないのだが。
いずれにせよ、この事件を機に、欧米とロシアの凄まじい外交官追放合戦へと発展している。イギリスの措置には米仏独など30カ国近くが同調しているという。
なんでロシアのスパイは、アメリカではなく、イギリスに亡命して保護を求めるのか。なんで英ロは異常なほど仲が悪いのか。本当の理由を知る人は少ない。
しかも、またまた同じ頃、暗殺などを担当するロシアの美女スパイを主人公とした『レッド・スパロー』なる映画が公開され、大ヒット中だ。未視聴だが、なんでも美女スパイは結局、ロシアを裏切り、CIAマンと一緒に抵抗するストーリーだとか。ロシアを、そういう暗殺マシンを育てる、恐ろしい、不気味な国として描いているらしい。
いやはや、なんとも、タイミングがよろしいことで。
世の中には、こういうのをすべて「偶然」とか「陰謀論だ」と片付ける者がいる。
対して、私は「影の政府」による大衆操作であると訴えている。
まあ、私を信じようと信じまいと、読者の勝手だ。
奇しくも(?)、今まさに、「日英同盟復活か!」と評されるほど、日本とイギリスの関係強化が進められている。「EUを離脱したイギリスが日本に接近している」という観測が主だが、むしろ安全保障分野での協力が進展していることに留意すべきだ。
これをもって「英米から認められた」などと内心で喜びを噛み締める辺境者根性の日本人が存外多いが、そういう人間は中国に朝貢合戦する南北朝鮮人を笑えない。
英米から頼りになる同盟国として扱われるということは、何ら喜ぶべきことではない。あっちの連中は日本も道連れにしてやろうと考えているのだ。
英米とロシアが殺り合うなら、勝手にやらしときゃいい、と考えるのが真の独立国家の人間だ。いや、英米と中ロか。ま、われわれは高みの見物を決め込むべき。
どうも、こんな戦意高揚映画が公開されるようだと、世界大戦は近いと見なさざるをえない。数年後と想定しても、そう間違いではないかもしれない。
その時、ロシアはNATO軍の戦略基地と化した日本を迷わず核攻撃するだろう。
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