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青山繁晴・前川喜平・加戸守行の参考人招致の核心部分

さて、7月11日の記事の最後に、「↓これを見ました。たいへん参考になります。」と記して、下の動画を紹介しました。

もっとも、動画は40分以上ある。それで見るのが面倒に思う人も多いはず。

なかなか忙しい方には、ハードルが高いかもしれない。そこで、遅きに失したが、私の主観で「核心」と思った、うち9分間の質疑を、文字起こししてみた。

この部分は、本当に、獣医療と獣医教育の現状と課題を浮き彫りにしている。需給問題についても核心をついた格好だ。また、前回の記事(下)では、日本獣医師会の当時山根会長自身が獣医の地域遍在問題を認めている事実を紹介したが、その問題に苦労してきたのが他ならぬ四国であることも、元愛媛県知事の話からよく分かる。

なぜ前川氏は「行政が歪められた」と感じたのか、その本当の意味が分かった
さて、前回の記事で日本獣医師会のサイトを紹介したが、総会や理事会の資料を幾つか当たっていくうち、門外漢の私にも何となく問題の構造が見えてきた。 下の文書は、平成20年(2008年)度の第65回総会の資料である。当時の山根会長の発言だ(...

国会中継において、青山繁晴議員が農水省の資料を引用するところによれば、獣医師39000人のうち、ペット関連が39%と最も多く、逆に公務員獣医師は9%ともっとも少ない。また、農水省は産業獣医師の足りない地域を対象に、地元就職を条件に学資貸与の優遇策をしている。不足に悩まされている愛媛県でも行われている。いま16地域で実施され、愛媛県の対象者は9人と、全国で3番目に多いという。

以上に関して、青山氏の問いを受けた農水省の担当者もその場で事実関係を認めている。しかし、しょせん対症療法に過ぎず、四国はまだ苦労しているのだ。

さる7月10日の午後3時半過ぎ、青山繁晴氏は閉会中審査の質問に立った。

(*赤字は筆者。なお、読みやすさに配慮して、段落は適当に入れた)



青山繁晴議員の質疑(動画9分30秒頃から)

(獣医師養成についての質問)実は現在930名の定員でありますけれども、1200名まで水増し入学が行われています。これで需要が均衡してると、もしも文科省が判断してるんであれば、この点からもおかしいのではないでしょうか。

えー、これは23%もの水増し入学が横行してるという事でありますから。

実は現場の方々にずいぶん尋ねていきました。

そうしますと例えば、教室に入りきれない学生が廊下にあふれて、まあ授業を一種見学してる、覗き込んでるって実態もある。一番大切な実習も、実は背後から覗くだけという状態が、これ、大学によって変わりますけれども、起きてる所がかなりあると。

文科省は現在・大学の定員超過の是正に取り組んでいるとも聞きました。

ただ、もしも獣医学部の水増しが正されれば、年間270名――なんとほぼ4分の1もの新しい世代の獣医師が減る事になります。これは獣医師の教育が現状の学校では十分でないという証拠でもあり、獣医師養成の学校が足りないという証左ではないでしょうか。えー、前川参考人、この点については、ご見解いかがでしょうか

前川喜平参考人の応答(動画10分50秒頃から)

えまあ私立大学の定員超過の是正をどうするか、ということは一般的な問題としてあると思います。

これは私学助成をどのように活用するかというようなことも含めまして、えー、検討する必要がある問題であろうと思いますが、ただこのー、獣医師の需要がどの位あるのか、それに対してどの位の、おー、獣医学部の入学定員が望ましいのか、これはやはり政策的に考え、また、あのう、定員管理を、政策的に行っていくと、いうことが当面、えー、正しい方法だろうと思っておりまして、えーまあ、いっぺんにこれを撤廃するという事は、望ましくないだろうと私は個人的に思っております。

ただ、その獣医師に関しましてもですね、もし、そのう、今後養成を増やす必要があるというのであればですね、それはまだ確認されたことではございませんが、もし、今後、獣医師の養成を増やす必要があると、言うのであればですね、それは、既存の大学の定員を増やすという方法もあるわけでありますし、既存の大学には、十分なスタッフが揃っている場合もありますし、さらに十分なその、定員、その、教官組織をですね、さらに充実させるということもあると思います。

まっさらに新しく、獣医学部をつくる方が、よほど困難でありまして、その教員をどこから連れてくるかという問題は非常に、難しい問題のはずであります。既存の大学から、その新しい学部に、教員を連れてくるのであれば、既存の大学の教員組織が弱体化いたします。そこをどうするのかという問題ございますから、単に、養成数を増やすということであれば、あー、通常はですね、既存の大学の定員を増やす方が、よりコストのかからない方法であります。

で、実際、医師についてはそういう方法をとって、供給数を減らして、いるわけであります。そういった選択も含めて、政策的に考えるべき問題であるというふうに考えます

青山繁晴議員の質疑

(前川参考人が言ったことは、要は既存の体制の強化ということ。それができないから、いまの水増しのような事態がある。獣医師養成機関はみんな志を持ってやっているから、起きるはずがない。今の件について、加戸参考人はいかがか?)

前愛媛県知事・加戸守行参考人の応答(動画13分20秒頃から)

特区の申請をしてから、何回も門前払いを食らいました。いろいろな方策で模索しましたが、一番強い反対は、日本獣医師会でありました。

ま、当時、直接の接触はございませんでしたけど、ホームページでは、専務理事が、まあ、今治の獣医学部新設に関して、ええー、ケチョンケチョンの論陣を張ってられました。で、ま、その、中でも、要するに、養成はちゃんとするから、余分なことをするなっていうのが基本であります。

で、当時から私が大変疑問に思いましたのは、まず、獣医師の養成が、私は、こういう言葉を使いましたけれども、箱根の関所から東を関東と言ってました。箱根の関所から東で8割の入学定員があり、箱根の関所から西の方には2割の入学定員しかなくて、しかも、私学は水増し入学はしますから、実質的には養成される獣医師の数は、箱根の関所から東は80数パーセント、場合によっては90%近くが、そちらで徴集。

で、空白区は、四国であります。獣医師が確保できない。県知事としていろんな対応をしても、とにかく、たとえば、地方公務員は競争試験が原則ですけれども、獣医師はもう無試験でもいいから、どうぞどうぞと言っても、来ていただけない。

で、獣医師会の反対は何かと言ったら、処遇しないからだと。じゃあ、愛媛県だけは、あるいは四国は、獣医師の給与体系を、国家公務員の獣医師よりも、上回る体系を作ることができるのか。それはじゃあ、獣医師が充足された時は給料を下げるのかと、給料の問題は、愛媛は給料が安いから行かないんだよとか、奨学金を出さないから行かないんだよ、全部東京へ来たら養成して帰すからと、そういうことでいいのかなってことが一つ。

それから、新しい学部はできないという、それも反対されながら見てました。でも、自分たちはどうであったのかと申し上げると大変恐縮ですけれども、大学教授の定員は十年前と今日と、変わらないままで、アメリカは必死にやってるのに、据え置いたままで、新しいのは作るな作るなと。

で、今回のケースにしましても、はるかに多い獣医学の教官をつくって、感染症対策なり、あるいは、ライフサイエンスなり、あるいは動物実験による創薬の研究なりと、幅広い学問をやるスタッフを揃えようと思っても、それにブレーキをかけるっていうのは、私には理解できない。

それならば自分たちで、なぜこの十年の間に、アメリカに遅れないように、スタッフを揃えないんですかと。いまのままで置いておいて、今治にはつくるなつくるなって言う。これはあまりにもひどいではないかっていうのが、私の思いでありました。

少し時間をちょうだいしてよろしければ、私の知事の任期の終わりのほうに、民主党政権が誕生して、自民党じゃできないわ、私たちがやると言って、頑張ってくれました。対応不可の門前払いから、実現に向けての検討とレベルアップしました。

ああよかったねで、私は次の知事にバトンタッチしました。

ところが自民党政権に返り咲いても、何も動いていない。何もしないでいて、ただ今治だけにブレーキをかける、それが既得権益の擁護団体なのかって、悔しい思いを抱えながら、参ってまいりました。

そして国家戦略特区で取り上げられ、私も昔取った杵柄で、いま今治市の商工会議所の特別顧問という形で、この応援団の一員として、参加しております。

それを眺めながら、大切なことは、欧米に伍した、先端サイエンスと、感染症対策と、封じ込めと、私たち日本人の生命がかかる、この問題を、欧米に遅れないような、獣医師を養成しなけりゃならないことに、手を加えないでおいて、今治は駄目、今治は駄目、加計ありきと言うのは、何でかなと思います。

私は加計ありきではありません。加計学園がたまたま、愛媛県会議員の、今治選出の議員と、加計学園の事務局長がお友達であったから、この話がつながってきて、飛びつきました。これも駄目なんでしょうか。お友達であれば全て駄目なのか。そんな思いで眺めながら、今日やっと、思いの一端はこの場を借りて、申し上げさせていただきました」

私の感想と獣医療業界の構造問題、そして今後

どうだろうか、ほんの9分間であるが、見事に核心を突いている。

しかも、前川氏は、青山議員が述べた内容の「事実関係」については一切否定しなかった。彼は客観的に見ても、具体性に乏しい、回りくどい官僚的答弁に終始した。これまでもそうだが、彼は獣医師の需要や養成について触れながら一切「数字」を出さない。

ちなみに、日本獣医師会の山根会長自身が、獣医師の地域遍在と分野別の遍在を問題提起している(前回記事)だけでなく、平成24(2012)年度の日本獣医師会の第69総会で挨拶した郡司彰・当時農林水産大臣自身も、次のように述べている。

「もう10年ほど前になるでしょうか、我が国でBSEが発生しました。急遽、全頭検査を行うこととなり、獣医師のマンパワーが足りないというお話をいただき、私も何カ所か現場を視察させていただきました」

かなり以前から足りないことを知りながら、対症療法に終始してきたようだ。

彼ら的には、ペット医師業が儲かるので、その構造は死守したい。しかし、それは公務員獣医師の慢性不足と裏腹となっている。だから、公務員だけど獣医師だけは特別に待遇を改善しろ、などと日本獣医師会は盛んに政官に働きかけているのだ。

そうやって公務員獣医師業が「おいしく」なれば、今後のペットの自然減に伴い、獣医師たちがそちらの分野に移動していくので、将来的には不足は解消されていくだろう、という認識でいるようだ(それでも1千人以下の不足は続くとの認識らしいが)。

日本獣医師会のサイトが掲載している農林水産省による見通しの資料

私はこれまで獣医療分野にはあまり関心がなかったが、BSE問題や鶏インフルエンザ、口蹄疫などの「食安保」と、人畜共通感染症対策、さらに軍事分野では仮想敵国からの生物兵器攻撃対策と、思いのほか重要な領域であることも認識できた。とりわけ、感染症対策は先端サイエンスの分野とも関わってくる。

とすれば、加計学園かどうかはともかく、一定の投資は必要ではないだろうか。

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